002
真っ白の空間。そこで、雄大は目を覚ました。
「ん?ここは?」
「ここは、私が臨時的に作った空間よ 」
雄大の目の前には、いつものナース服を着て、呆れ顔の春子がいた。
「あなた、なにしてるの?」
「なにって、ちょっと眷属を名乗っただけだが?」
「どうなるか分かってたでしょ...」
「いや、分からなかった。国王への不敬罪で捕まるのか、問答無用で殺されるのか、笑って流されるのか、俺が他の言葉を出すまでエンドレスで会話が続くのか、分からなかった」
「......ちなみに、あのあとどうなったか知りたい?一応続きがあるわよ。IFの世界での話しになるけど」
「ほぅ、聞かせてもらおうか」
「あのまま、私がこっちに連れてこなかったら、『王よ御前で何を!』とか言いながら若い兵士が剣を抜いて斬りかかったわ」
「なんだ、タイマンか。負けないだろ」
「えぇ、余裕で避けて首に回し蹴りを決めて気絶させてたわ。そこからは...ひどいわね」
「教えろ」
「あなたは倒した兵士の剣を拾って言ったわ『人間の力はこの程度か!』ってね。そしたら若い兵士が5人ほどあなたに向かって行ったわ」
雄大はうんうんと頷きながら春子の話を聞いている
春子が指をパチンと鳴らした。すると、椅子と机、お茶とお茶菓子が出てきた。
「まぁ、座りましょうか。......そしてあなたは向かってきた兵士に剣を構えたわ。『5対1でなにを!』とか大臣っぽい人が言ってたわ。あなたは丁寧にかつ確実に一人づつ倒してたわね」
「若いってことは新人とかだろ?負ける気がしないな。たかだか5人程度」
「そこからはまさに地獄だったわ。魔法部隊が魔法撃っても避けるわ破壊するわで、弓矢部隊に至っては射たれた矢をキャッチして倍の速度で投げるわ」
「矢のキャッチは前に弓道部相手にやったな。魔法の破壊か。恐らく、やってみたら出来たとかだろう」
「そして......広域睡眠魔法をつかったら何故か感知されてたみたいで効かないし幻覚魔法も効かない、騎士団長が一騎討ちを申し込むも、1分で撃沈。国王は降伏したわ」
「なるほど、俺はそんな弱小国家に召喚されていたのか」
お茶をすすりながら言う雄大に春子は呆れながら、
「......また、別の世界に召喚させます。......最初だけ、最初だけでいいからおとなしくしてて。城を出るまででいいから。お願い」
「まぁ、いいだろう。」
そして、雄大は光に包み込まれて消えた。
「...あ、あの?ゆ、勇者様ですよね?」
雄大が目を開けるとそこには金の長い髪をたなびかせた美少女が立っていた。
(なるほど、春子さんは王様相手、もとい男相手だからあんな風にしたと思ったんだな。しかし、すごいな。言語調整もされてるのか。ん?もし、ここで話が通じないフリをしたらどうなる?話せるように教育でもされるの?とりあえずやってみよう)
「%~^{&6/8<`@*,9|,#¥$/"%^55<$¥:.@_``$¥&!?」
「ま、まさか言葉が通じないのですか!?どうしましょう。じゃ、じゃあ筆談で!......って言葉が通じないのに文字がわかるはずないですよね。じゃあーーー」
そこで雄大は再び意識を失った。