せっかくだから、私はこの赤い勇者を選ぶぜ!
隊長さんとフォルたちはそれなりに距離が離れている設定。
謁見の間って広いイメージしかないですしね。
最初の場所から隊長さんは動いていないので、彼女は玉座の前に立ったままです。
『グルアアアアァァァァァァッ!!』
隊長さんは大きな雄叫びを上げると触手を上にあげ、そのまま勢いをつけて床に叩きつけ、叩きつけられた触手はそのまま床に突き刺さった。
何をするつもりなんだろう?
だけどそれを見た三人は顔を一瞬引きつらせて、全員隊長さんに向かって走り出した。
えっ、待って、また僕だけ分かってない感じなの!?
置いていかないで! とみんなを僕も追いかけるように走り出す。
すると直後、後ろからズドンッと大きな音がした。
思わず立ち止まって後ろを振り返って見ると、なんと僕らが居たところから触手が突き出てきた!
うえぇっ!? まさか床を突き抜けてきたの!?
どんだけ伸びるんだあの触手・・・! そう思ってると、その触手が僕を狙ってさらに伸びてきた! や、やばいっ!?
でも触手は何本もあって、僕にはよけることができない。攻撃は・・・いや斬れるのコレ!?
どうしようか迷っていると伸びてきた触手が僕に絡みついてきた!
しかも手から剣を落とされてしまった! ど、どうしよう!?
触手はとてもぬるぬるしていて、体に痺れるような感覚が走ってくる。
そのせいで体が上手く動かせない。声も上手く出せなくなって、本気でどうしようと考えたあたりでフォルがこっちを見て、驚いたように目を見開いた。
「ゆ、勇者君!? くっ、今助ける!」
フォルは立ち止まって魔道書を開くと、彼女の足元に緑の魔方陣が浮かび上がった。風魔法みたいだ。
そしてさっきのフォルの言葉で僕に気づいたのか、魔王もチラッと僕を見て何かを呟いた。
すると、フォルの体を囲うように赤い魔方陣のようなものが浮かび上がる。それにフォルは少し驚いたような顔をして、だけどすぐに何か分かったのか薄く笑ってくるっと一回転。
するとさっきより少し赤くなった風の刃が何本も僕に向かって飛んできた。
思わず目をギュッと強く閉じてこれから来るであろう痛みに耐えようとした。
だけど、刃は僕に傷を与えなかったようで全然痛くなかった。
僕に当てずに触手にだけ攻撃するなんて、魔法ってこんなことも出来るんだ。
僕がそう感心していると、隊長さんがとても痛そうに『グアアアアアッ!?』と大きな悲鳴をあげて僕は床に叩きつけられた。ぐぇっ!?
その直後に触手は引っ込んでいき、また最初のように彼女の腕に戻った。
あれ? でもさっきはこんな悲鳴あげなかったよね?
少し疑問に思うと、触手に解放された僕に向かってフォルが走ってきた。
「勇者君、大丈夫ッ!?」
「あ、う・・・だ、大丈夫・・・。ありがと、う・・・。」
「ん? あれ、もしかして上手く喋れないの? 体も震えてるし・・・」
「う、あぁ、その・・・なんか、痺れ、て・・・。」
「・・・あの触手、麻痺毒持ちだったか・・・。
直してあげたいところだけど、今は回復魔法使えないからなぁ・・・しばらくすれば治ると思うから、今は耐えてくれ・・・。」
フォルはとても申し訳なさそうに言った。
でもすぐに魔王たちに向かって大きな声で言った。
「魔王ー! コイツ炎に炎に弱いみたいだ! 遠慮なくやっちゃってーっ!」
それを聞いた魔王は・・・・・うん、やっぱりこの人魔王なんだよなぁ。
後姿しか見えなかったけど、それでも分かるくらい黒いオーラを放っていた。たぶん笑っていたんじゃないかな? 僕が正面から見たら震え上がってそうだ。
そして魔王は隊長さんの周りにとても大きな赤い魔方陣を展開し、魔法発動。隊長さんは真っ赤な炎に包まれた。
隊長さんはとても苦しそうに『グアアアアアアアアア!!!』と今まで以上に大きな悲鳴を上げて倒れ・・・そしてなんと彼女の体が溶けていって、黒い染みになった。
・・・・・・終わった、の?
フォルがいちいち魔道書を開くのは、まだどんな魔法があるのかよくわからないので開いて見ないと分からないんです。




