突撃しましょう! ・・・明日から!
次回は最終決戦と言ったな。あれは嘘だ。
・・・いや本当にすいません。まだ部屋から出ません。
「うしっ、準備完了だね!」
パンッと手を叩いてフォルが言った。
今の間にキミタケさん以外のみんなが着替えて、フォルは白と水色を、魔王は黒と蒼、僕は赤と橙色を基調とした服に変わった。
そしてみんな軽傷だったけど傷も回復させてある。
フォルは風魔法の魔道書を闇魔法のものに変え、魔王も大きなデュランダルとかいう剣をアロンダイトに変えている。
僕も持ってた剣も、それじゃ不安だからとフォルが出したグラムという剣に変えた。
・・・あ。そういえば今気づいたけど、ここにくるまでに僕の本どこかに落としちゃったみたいだ。後で探さないといけないな。
・・・・・・・って! 僕らいくらなんでもゆっくりし過ぎじゃない!?
今更そんなことを思って、僕は一人焦りだした。だけど、
『・・・しかしこれだけ長い時間を過ごしても騎士達は攻めてこないものなのだろうか?』
どうやらそう思ったのは僕だけじゃないみたいで、キミタケさんも同じ事をフォルたちに言っていた。
フォルは腕を組んで少し考えてから答えた。
「うーん。普通ならありえないと思うけど・・・」
「まぁあの扉を氷で固めたからな。図書室はあそこからしか出入り出来ないような造りだった以上、効果があったんだろう。」
「それにアレ、すっごい匂いだったもんねー。連中も今ごろまいってるんじゃないかな?」
『なるほど。確かにあの匂いは強烈だったからな。我らは平気でも人間ならばたまったものではないだろう。
連中にはあの匂いが染み付いているだろうし、隠れることは出来ないだろうな。』
あー、確かに遠くにいても分かりそうだ。
なんでキミタケさんたちは平気なのかは聞かないでおこう。というか聞かなくても分かる。・・・きっとそれより酷いかもしれない腐乱臭になれているのだろう。
・・・それにしてもアレは偶然だったとはいえ、あの戦いを軽傷で済ますこの2人本当にすごいんだなぁと思う。僕も頑張らないと!
僕は手をギュッと強く握って気合を入れる。
「よしっ、大丈夫・・・頑張ろう!」
「おや? 珍しいね、勇者君が殺る気とは。」
「いや僕だって本当はやりたくないからね!? でも今はやらないといけないんでしょ!?」
それに2人が心配だし。
「ふむ・・・まだ弱いようだが、その思考回路は勇者そのものだな。」
『あぁ。普通の人間ならば街に出た途端卒倒しているだろう。
たとえ倒れずとも、我らに協力する気などさらさら起きないだろうな。』
「なるほどやっぱり君、勇者なんだね・・・苦労人か・・・。」
それにフォルたちがそれぞれ哀れみや感心の目を向ける。
「うぅ、苦労させてるのは誰だと・・・はぁ・・・。」
実際、僕がフォルに呼び出されなくても魔族やら村人やらに苦労掛けられてたんだろう。勇者ってつらい。
僕ががっくり肩を落とすと、フォルがニッと笑って手を叩いた。
「それじゃ勇者くんも殺る気十分みたいだし・・・いきましょうかっ!」
それに僕ら全員が頷いて、扉近くに居たキミタケさんがドアを開ける。
さぁ最終決戦だ、頑張るぞ! 油断したら死んじゃうからね!
そして通路に出た瞬間「あ、そうだ」、と思い出したようにフォルが言った。
「言い忘れてた。勇者君、これ終わったらアースガルド行くぞ! すぐに!」
「えっ、なんでまた!? ・・・あー、実はあの本街のどこかに落としちゃって今無いんだ・・・。」
「なんだってー!? まぁ幽霊達に頼めばすぐ持ってくるか。
・・・いやー、実はお姫様が大変かもしれないんだよね。」
「??? その原因の魔王はここにいるけど?」
「・・・いやその実はこの魔王、姫様を適当に部下に任せていたらしくってさー・・・私の予想だと姫様は今頃、多分・・・。」
そう言ったっきり彼女黙ってしまった。
フォルは終始必死そうというか、呆れたような・・・なんか妙な顔をしていた。
・・・うーん?? よくわからないけど・・・それはまた後でってことかな? そういうことにしよう。うん。
アロンダイト・・・円卓の騎士、ランスロットの剣。エクスカリバーに匹敵するともいわれている。多数の敵を斬っても刃こぼれ一つしなかったそうな。
グラム・・・通称、オーディンの贈り物。「剣を抜いた者に、贈り物として授けよう」と、一本の樫の木に剣を刺しオーディンは去った。誰一人として抜けるものはいなかったけれど、唯一シグムントだけが抜くことに成功する。
デュランダルとアロンダイトは『アーサー王伝説』に、グラムは『北欧神話』に出てきます。気になった人は調べてみよう! 面白いぞ!




