青い人たちの会話
フォル視点です。
姫様が出てきます。助けにはいかないけど。
あぁ、勇者君がまた倒れてしまった。
やっぱり病み上がりにコレはキツかったのか・・・。
仕方ないからとりあえず適当な家に入って、ベッドを借りる。
そこに勇者君を寝かせて、私は勇者君が呼び出した魔王と対峙することになった。
「・・・さて、勇者君について話をしようか?」
「あぁ、頼む。」
魔王は私たちに攻撃をするつもりはないみたいだけど、さっきのこともある。警戒しておくに越したことはないだろう。
・・・というか、あの惨状を見て警戒するなって方が無理だ。
「具体的に、勇者君についての何が聞きたいとかはあるかい?」
「・・・そうだな。特にはないな。」
「?・・・そっか。でも実は私も詳しくは知らないんだよねぇ・・・。
詳しくはそこにある本を読んでくれ。」
そう言って、私は机の上を指差した。
あの本血だらけになってるせいで、どうみても呪いの本じゃないですかー、やだー・・・。
魔王は机の上の本を手に取ると、適当にパラパラとページを捲って中を見ていく。
それを見終わると、魔王は再び私に聞いてきた。
「書いてある内容と、随分違うな?」
「あぁ、それは仕方ない。私が変えたんだからね。」
「・・・なに?」
「この勇者君は私が実験のために呼び出したんだよ。
その本は『勇者が魔王を倒して姫を助ける』という王道モノだ。
でも、そんな世界がもしも『勇者がいない世界』になったらどうなるのか?
それを知るために私は一番最初の勇者を呼び出した。」
「一番最初の勇者?」
「うん。私の魔法は本の魔法。
本からモノを呼び出したり、本に書かれている魔法を使ったり、本の中の世界に入ったり。そんなことができる魔法。
でもこの魔法はなかなか扱いづらくてね、今回みたいに『ナニカ』を呼び出そうと思うとちょっと苦労するんだ。
呼び出すものは、基本的に開かれたページから出てくる。・・・もちろん例外もあるけどね。
君たちみたいに最初から最後まで大体どこでも出てくるような人は開かれたページから出てきて・・・呼び出されると『そこから先には出てこない』、いなくなるんだよ。」
「なるほど、つまり『一番最初の勇者』というのは一番最初のページの勇者ということか?」
「イグザクトリー!大正解だよ!
だから勇者君は碌な装備もないし、体力もない。・・・あぁ、でも戦い方だけは知ってるみたいかな。イタクァ倒したらしいしね。」
「・・・そうか。」
私がそう告げると、魔王は少しつまらなそうな顔をした。
・・・よくわかんない人だなぁ。
「でも、鍛えれば君を倒せるくらいは強くなるんだろうね。
もっとも、勇者君にその意思があれば、だけど。」
「・・・・・・・。」
勇者君は『鍛えれば』お前なんかには負けない、と言うと魔王の口の端が少し上がった、気がする。なんでだろう?
・・・にしてもさっきから表情の変化が少ないな。無愛想な人なのか?
「あぁそうだ。勇者君がいない世界はどうなってる? 新しい勇者でもできたかい?」
それが私の知りたいことなんだ。教えてちょうだい!
・・・確か国王様は勇者を募集してたんだったっけ。
魔王は少し考えると、恐らくは、と前置きをして言った。
「俺の元まで来た勇者は現れていない。そいつ以外に新しい勇者はいないのだろうな。」
ふーん。勇者君のかわりはいないのか。
じゃあ姫様は魔王の思うがままだね。
「そっか。・・・じゃあ姫様は?
君は姫様を攫って何がしたかったんだ? 結婚かい?」
ニヤニヤしながらそう聞くと、魔王は不思議そうに首をかしげて答えた。
「いや? 別にアイツを特にどうこうするつもりはないぞ?」
「・・・はい?」
「アイツを攫ったのは、そうすれば勇者と戦えると聞いたからだ。攫ってからは部下の魔物どもに全て任せている。確か地下牢に繋いでいるとか言ってたな。
・・・・・・って、おいお前そのダイスはどこから出した?」
「これが今言った私の魔法の一つでね。
いやなに、ちょっと確認するだけさ。危害は加えない。」
そう言うと、私はダイスを高く放り投げた。
フォルセティ
心理学(75)・・・出目28 成功
成功したことにより、魔王は本当に姫には興味がないことが分かる。
なにそれ予想と違う! 勇者君といい魔王といい、この世界の人たちってどこかずれているような気がするぞ・・・ッ!?
・・・これ勇者君が助けに行ってても姫様無事じゃなかったんじゃ・・・?
あぁなんだか頭が痛くなってきた。私は頭を抱えてさらに問う。
「・・・それで、姫様は無事なの?」
「一応生きてはいると思うぞ? 『殺すな』とは言ってあるからな。」
あいつらからどんな扱いされているかは知らんが。と魔王は続けた。
あぁ、これ解決したら勇者君連れてアースガルド行こう・・・私は一人、そう決意したのだった。
姫様は『まだ』死んではいません。




