フォルと合流
「ば、化け物どもめ・・・!
みんな、隊長の敵をとるのだ! こいつらに・・・死の制裁を!」
「おぉーっ!」
騎士たちは雄叫び上げて突っ込んできた。
あ、僕も化け物にカウントされるんだ。まぁ今血だらけなんだけど・・・。
・・・くっ、どうしよう。もう一度あの剣が呼び出せたら・・・っ!
僕はギュッと本を握り締めた。
「・・・守りながら戦うのは面倒だな。」
「えっ?」
彼はポツリとそう呟いた。
まさか見捨てられる?見捨てられちゃう!?
後で何でもするから今は見捨てないでくださいお願いします!・・・とでも言おうかと思って口を開こうとした、瞬間。
ドガガガガガガガァッ!!
と、凄まじい轟音が鳴り響き雷の矢が降ってくる。
その矢は騎士たちに突き刺さり、ここ一帯を血の海に変えてしまった。
「・・・・・はっ?」
なにこれ。
えっ、さっきからこの人・・・えぇっ!?
もう、どういうことなの・・・!?
もしかして僕、とんでもない人呼んじゃったんじゃ・・・。
若干後悔しつつも助かったことに安堵する。
血の海を作った本人はなんてことない顔をしていたけれど。
「よし。これでこいつらは片付いたか。
・・・それで、話ってなんだったんだ?」
「えっ、あ。・・・はい、そ、その・・・」
困った。まさかこんな人が来るなんて思ってもいなかったんだ。
こんな人に助けてくれだなんて、一体どう言えば・・・。
どう頼むか考えていると、遠くから聞きなれた声が聞こえてきた。
「勇者君ーーーっ!」
「はっ、この声・・・フォル!?」
声がしたほうを向くと、フォルがこちらに走ってくるのが見えた。
た、助かった!!
「・・・・・・・勇者?」
彼はフォルが僕のことを『勇者君』と呼んだのを不思議に思ったようだ。
あ、や、やばいっ!何か言わないと・・・
「あっ、いや・・・その、それは、えっと・・・。
・・・・・ご、ごめん! ちょっと待ってて!!」
・・・いけないんだけど、いい言い訳が思いつかなかったから今はフォルに逃げよう。
ごめんね。それは知られたらちょっと困るんだ!
こっちに走ってきたフォルは服が赤く染まっていた。
僕を攻撃してきたときとは服が違う。でも赤く染まってる原因は多分僕と同じだろう。
さらに背中に銃を、腰に本を2冊さげている。・・・やっぱり戦っていたみたいだ。
フォルは僕の目の前まで走ってくると、僕の肩を掴んで慌てたようにまくしたててくる。
「勇者君、どうしてここに!? あとその血は!? この血溜まりは!? ここの大量の死体は一体!? まさか君がやったの!?」
「お、落ち着いてよ・・・!
えっと、僕は図書館から火が見えて・・・」
僕はフォルを落ち着かせながらここまでの事情を説明した。
説明が終わると、フォルは安心したような顔をした。
「・・・そっか。よかった・・・。
でも私を助けに来てくれたのは嬉しいけど、その体で無茶するなんて・・・。」
「・・・仕方ないじゃないか。気がついたら体が勝手に動いてたんだ。」
「優しいのはいいことだけど、それで君が傷ついたら意味がないのだよ?
・・・でも、ありがとね。あと本当にすまなかった・・・まさか発狂するとは思わなかったんだ・・・。」
「いや、それはもういいよ。この傷治してくれたの、フォルなんでしょ?」
「うぅ・・・勇者君・・・っ!」
フォルは涙を流しながら抱きついてきた。
久しぶりに生きている人の温かさを感じた気がした。
実はここで僕も安心している。よかった・・・まださっきみたいに発狂してたらどうしようかと・・・!
「あれ? 勇者君、そこの人は?」
あっさり涙を引っ込めたフォルが僕の後ろを見て不思議そうに聞いてきたた。
あっ。そうだった。
「生きてる男の人か・・・呼び出したのか?」
「あ、その・・・うん、そうなんだ。彼が騎士達を倒して、僕を助けてくれたんだ。」
「そうなの?
・・・にしても、すっごいガタイがいい人だな・・・ああいう人をゴリラっていうんだっけ?」
ゴリラってそんな。
僕は見えなかったけど、このときフォルは少し呆れたような、呆然としたような、よくわからない顔をしていたようだ。
「俺のことをゴリラ呼ばわりとは失礼だな。」
どうやらゴリラ呼ばわりされた彼も僕らの会話を聞いていたようで、少しむっとしたような顔をして近づいてきた。
それにフォルは申し訳なさそうな声をして答える。
「あぁごめんね。まぁ私もこの表現はあまり好きではないんだけど、そうだな・・・これは私たちが使ってる比喩みたいなもんだと思ってよ。」
「フォル、比喩ってどういうこと?」
「なんかガタイのいい人はそう呼ぶ、らしい。」
「そうなのか?・・・まぁ別にいいが。」
いいんだ。
「それと俺はゴリラじゃなくて竜だ。今は人間の姿だがな。」
「えっ」
竜!? ドラゴンってこと!?
これにはフォルも驚いたようで、本当にビックリしたような声をあげた。
「ファッ!? 竜って・・・あぁでもそうか、だからこの有様なのね・・・。
でも本には華奢な体つきって書いてあったと思うけどなぁ・・・変ったのか・・・?」
けど、すぐに納得したようだ。
えっ、どうして!?
「えっ、えっ? フォル、どういうこと?
まるでこの人が誰なのか分かったみたいな言い方だけど。」
「実際、分かったからねぇ。
・・・勇者君、君さっきの私以上にとんでもないもん呼び出したな・・・」
「えええええっ!?」
勇者だと知られたら困る理由は、彼が戻ったときに自分が本当の勇者だと言いふらされたらたまったもんじゃないからです。
この人は勇者が姫様を助ける気はないって知らないからね。
フォルが背負ってる銃はウィンチェスターM70です。ライフルですね。




