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【露草】
「前回のあらすじ」
【常葉】
「ホントに修行回でした?」
【露草】
「あの描写の裏で延々と修行するわたしの姿がありましてな」
【常葉】
「書かれてないものに言及されましても……」
【露草】
「今回で修行回なんか終了してやるー!」
◆◇◇◆◇◇◆
「修行なんてやってられるか、おれは帰って寝るぞ!」
とか露草さんが小芝居を打ったり。
「モンスターハウスだ!」
とか常葉さんがふざけまくったり。
「その短剣、見せてもらえませんか?」
「いいですけど」
「またレアいものを持ってますね!」
「え?そんなにすごいものなんですか?」
「これどこで手に入れたんですか?」
「グロッフェルという人と戦うときに露草が渡してくれました」
「ほう、これはですね、フォーリンブレイカーという光属性の短剣なんですよ」
とかゼロさんの説明ターンが始まったり。
≪すっごいたくさん書いてるんですね≫
≪昔からここに引きこもってるから≫
≪えっ≫
≪引きこもってるからって……≫
≪ここの人は勇者さん討伐とかやる気ないからね≫
≪へぇ……≫
とかエッシーさんの独り言に付き合うKAZAKOSHIれんじゃー40%だったり。
「経験値二倍のポーション、大盤振る舞い!」
「まだやるの〜?」
「もうよくない!?」
「ゴーゴー、ゼロを見返したくないのか?」
「ぐぬぬ、それはあるけど」
「あるの!?」
とか驚きあったり。
「うおー、ジョブレベルがガンガン上がるよ。脳汁ドバドバ、やばいテンション上がってきたよんよんよん!」
とか露草が痛い子に早変わりしてたり。
した。しました。
そうして修行の日々は終わり、ついに勇者さん突攻の日がやってきた。
「ちょっと待て、露草さんや」
「なんだい、常葉さん」
「二日目以降の描写がないんですが」
「常葉さん、あのね……私は疲れてしまったのだよ。同じような描写を続けるのが、もう疲れて」
「嘘つけ、同じような描写なんてどこにもねーじゃねーか!」
「うるさい!とにかく二日目以降もみんなこんな感じで進んだの!いいね!」
「えぇ……」
いくらタイトルで『ごり押しで参る』とか言っていても許されない感じでごり押しした。
タイトル回収だよ、やったね!
「幻滅したぞ、露草さん!」
「なんと。だが、こちらにも言いたいことがある。がねっちトリオに対してとんでもない訓練を施したらしいじゃないか!」
「なんだって?だって露草さんが任せるって言うから」
「やり過ぎなの!おかげでがねっち三人組だけレベル300で突出してるじゃん!ありがと!」
「どういたしまして」
いい話でしたね。
とうとうやってきた魔王城。緊張で息を飲むのは露草くらい。
それもそのはず、彼女、と常葉だけは初回での挑戦だ。
「えーと、えい、参るぞ」
「おー!」
はじめての時は通らせてもらえなかった、玉座までの廊下を通り、階段を上ると、玉座のそばに黒豹が佇み、その前に勇者さんが立っていた。
「来たか、KAZAKOSHIれんじゃー。このおれこそが魔王を守護する最後の砦。第四の四天王、対極に立つ者だ!」
「ごくり」
「さあ、かかってこい。光も闇も届かない深淵にうずめてやろう」
戦闘が始まった。
「ところで勇者さん、あの台詞何日ぐらいで考えたんですか?」
「えーと、三日ぐらい。今までの台詞をまとめたノートも引っ張り出したよ」
桔梗が三連射や精密射撃、卵が結界を張ってから短剣でペチペチしながら、この応酬である。
気力もぐっと削がれるが、これも立派な戦術なのだ。相手が台詞に集中することで生じる隙を叩く。
露草の戦法そのいちだ!
「ノートあるの!?」
「恥ずかしくないよ」
「いや聞いてないし」
桔梗の鋭い突っ込みが勇者さんの胸を打つ。
ショックは大きそうだ。
「爆ぜよ!エレメントフレア!」
「咲け、ブリザードローズ!」
「輝け!バードフラッシュ!」
さっきからチカチカと眩しいのは、銀朱の奥義だ。昨日覚えたばかりの最上級魔法を惜しげもなく振り撒いている。
「劇薬投与〜」
間延びした声で飛んでいくのは謎の茶色がかった液体。触った敵はもれなく猛毒になるおそろしい液体だ。決してう○こ色とか言ってはいけない。
全然違うよ! 色も形状も何もかも!
「流星☆爆炎!」
これは空の必殺技だ。
ケイトを見習って、属性攻撃や状態異常攻撃をふんだんに盛り込んだ剣撃。それを惜しみもせず振る舞っている。
理由はダーリンハニーと呼びあっている撫子と同じで、一つでも状態異常が通れば、戦いやすくなるという露草の言からだ。
散々裏切られてきた露草の言葉だ、信じるのには時間が必要だったが、最終的にはこうして攻撃を加えることにした。
ダメージもこれが一番大きかったし。
「神聖結界!」
卵がいつまでたっても当たらない勇者に業を煮やしたようだ。
短剣をしまって、足止めに努めることにしたらしい。
神聖結界は誰の攻撃も通さない強力な防御壁である。それは、人の往来までも防ぐほど。
卵はこの結界で、勇者を閉じ込めるわけではなく、あくまで行動を阻害してやろうとしているのだ。
露草が、気がついた。
常葉を使った囮作戦で自ら勇者を引き付けつつ、攻撃する。
「三十二双連舞!」
露草も必殺技を披露だ。
32×2=64。
合計六十四の斬撃が勇者を襲う。
そのほとんどがかわされるが、そのうち一撃が当たり、勇者は空を飛んだ。
いや、当たらなかった。
後ろから迫る卵の結界と、前から仕掛けた露草の攻撃を避けるために、ジャンプして空を飛んだのだ。
露草は大きく舌打ちをする。
「頭ゴンってすればいいのに……!」
もはやただの悪口だが、彼女としては戦法そのいちを続けているつもりである。
「したところでダメージは入らないぞ」
「そんなことは期待ねーよ!」
ため口になってることにも気付いている様子はない。
音もなく勇者が分身する。常葉と露草以外が来た、と身構える。しかし、それは悪策だ。露草はみんなに散らばるよう命じる。
「あっちこっち行くんだ!」
「散らばるように、って言ってるよ」
戦闘中だからちょっと言葉が乱れるのは仕方ないよね。
いつもこんなんだろって?
そんなこと言っちゃだめだ。
「無明剣」
忍者で侍な赤銅の攻撃だ。
散らばったKAZAKOSHIれんじゃーずに気をとられてた勇者さんにザクッと一撃!
入った。
KAZAKOSHIれんじゃー、最初の攻撃が入ったぞ。
喜んでいる暇はない。当たって不機嫌な勇者の一撃が迫っている。
そこで露草は、おもむろに取り出していた常葉さんの尻尾を掴み、何を思ったか、回しながら勇者に向かっていく。
「常葉さんトルネードを食らえ!」
常葉さんトルネードとは、やたら防御と魔法防御が硬いトカゲさんを振り回して、相手を物理的に退かせる攻撃である。
トカゲの鱗と金属の剣が本当に火花を散らす。
さしもの勇者も剣を引かざるを得ない。
「どうなってるんだ、このトカゲ!?」
「わたしも知りたい!」
露草が叫びながら退避していく。常葉さんはまだ回転している。
やがて勇者のHPが三割を切ったところで、状況が一変する。
「ジョブチェンジ、闇の勇者!」
勇者が見たこともない技を放ってきたのだ。
これ自体に攻撃判定はないが、見た目のインパクトがすごかったため、KAZAKOSHIれんじゃーは防御態勢をとってしまう。
瞬く粒子とは別に勇者の周りには闇が渦巻いてゆき、全体的に衣装が黒っぽい勇者さんが現れた。
「コスプレ?」
「違う、ジョブチェンジだ」
「二回目以降でしか見れないジョブチェンジだ!?」
「あ、ごめん。一回目の挑戦でもやるときはやる」
「新情報ありがとうございます! でも、なんで?」
「一回目だとジョブチェンジを発動する間もなく、みんな倒れてるから」
「二回目で見れるのは対策してあるからか! なんてひどい理由だ!」
高慢なセリフを一切感情を感じさせずに言う勇者さんはまさに傲慢!
「みんな気を付けて、闇討ちされるぞ!」
「闇討ちされる確率大アップだそうだ」
「なるほど!」
「なんでみんな常葉さんの台詞に頷くんじゃ?」
「そりゃあんたの台詞が分かりにくいからだろ」
常葉さんも言いにくいことズバリと言っちゃって! マジ傲慢!
「仲の良いとこ失礼」
「ぐわっ」
「露草さん!」
予想外にも、闇討ちで真っ先にやられたのは露草氏であった。
台詞に集中し過ぎたからかもしれない。
自分の罠に嵌まってますよ、露草さん。
「オートリバイブ!」
卵が蘇生技を飛ばしてくれるが、次に闇討ちされたのがその卵。誰かがユリウスの杖を取り出すよりも早く、勇者の剣はKAZAKOSHIれんじゃーをほふっていく。
「よくも撫子を!」
「空、前!」
「白銀!?」
「そんな、嘘じゃ……」
「……!」
「………………」
そうして残ったのが。
「誰もいないか」
勇者はそう呟くが、すぐに違和感に気付く。
倒れているKAZAKOSHIれんじゃーの姿が一向に消えないのだ。
全員倒れているなら5秒以内にホームへの転送が始まるはずだ。なのに、それがないということは……。
「誰か残ってる!?」
「おれだよ」
常葉さんだった。
「少し遊んでやるよ、彼女が目覚めるまではな」
「遊んで……ほう、やってみるがいい」
「そう無茶するなよ。勇者さまなんだろ? もう少し勇猛果敢で構わないんだぞ?」
そういうと、常葉は猛然と勇者へ突っ込んだ。
一方、死者の間では。
次々にぶち殺されたKAZAKOSHIれんじゃーの面々が、勇者VS常葉の戦いを見守っていた。
「うわ、これはうっとうしい」
「なんかハエ?みたい」
「ハエって言うか、蚊?」
「ねぇ、やっぱり露草だけいないよね」
「確かに」
「そういえば。卵のオートリバイブが当たってたとか?」
「えっ!」
「じゃあ露草だけ生きてるってこと?」
「生きてるって言うか、生き返れるって言うか」
オートリバイブは即時蘇生でないので、今倒れたままなのも何も不思議ではない。
それに、『不死身』の称号を得た露草さんは、彼女たちが推測した理由とは別で、違う空間にいる。
『不死身』の効果は、つけている時に限り、蘇生スキルの効果を上昇させる、である。
スキルの効果の中に蘇生速度も入っているため、特殊な計算を行う必要のある露草さんは隔離されているのだ。
「ここまでは筋書き通り。あとは如何に修行の成果が出せるか……」
「失敗したら怖いな」
「いや、失敗なんてしない。確実にこの一撃で決めなきゃ」
露草の独り言は誰にも聞かれず空へと消える。
しかし、その目には確かな意思が宿っていた。




