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【ゼロ】

「前回のあらすじですね」


【勇者】

「KAZAKOSHIれんじゃーのリーダーに会ったぞ」


【ゼロ】

「僕も買い物途中かな、会いましたよ。何の話をしたんです?」


【勇者】

「ポーション屋のおすすめ」


【ゼロ】

「……先輩プレイヤーの鑑ですね」




◆◇◇◆◇◇◆




 朝、眼が覚めてみんなの気配がないことに気がついてぞっとした。まさかの初日から寝坊!? リーダーとしてそんなこと合ってはならない。よくやるけど! 

 慌ててカレンダーを見てほっとする。

 今日は二日目。なんだ、まだ寝てていいのか。そんなわけないけど。


「なら起きようか」

「ぐがが、ふ、布団さん助けて」


 こんなことになった理由は、もちろん露草にあった。つまり自分のせいだ。

 露草が対勇者さん戦に備えて打ち出した秘策が、一人で頑張ることだったから。こうして気楽に……じゃない、孤独に一人違う修行をしているのだ。


「あんたが頑張るのは、布団から離れるっていう苦行じゃないだろ」

「そうね……二度寝はせめてご飯を食べてから!」

「このグータラ!」

「すごい古い手法で怒られた!?」


 露草に課せられた修行は一つ。サブアカウントの魔法使いジョブを育てること。

 決して、冬の朝にありがちな布団との戦いではない。




 魔法使いというジョブは、魔法攻撃に長けたエキスパートと語られることが多い。

 一方で、耐久力はどこの作品も低く設定されていて、一人旅には向かなかったり、初心者お断りだったりする。

 一般的な魔法使いの認識でさえそうなのに、ここの仮想空間と来たら、魔法使いというジョブに更なる弱体化を加えた。

 それが、初期レベルで魔法攻撃を覚えていないことだ。

 となると魔法使いを育てようとする人はどうなるか。杖や短剣片手にモンスターと接近戦を挑まなくちゃならないのだ。

 苦手に苦手が重なり、魔法使いになろうという人は減った。魔法使いの絶対数が減って、改善を求める声も減った。

 そうして改善されないまま実装当時の、いわばバグだらけのジョブを彼女は育てようとしている。

 すなわち、モンスターに向かって杖を降り下ろすだけの仕事を。ただし、一人でモンスターと向き合うのは危ないので……カエルスライムという、抵抗しない店売りしている敵に向かって。

 それはもう延々と。




 ところかわってスタジアムでは、ゼロさんとKAZAKOSHIれんじゃー90%が向き合っていた。

 今日の対戦相手は、ゼロさん……しかいないので、常葉さんが用意しておいたコピーを使うことになった。

 黒いトカゲに対して当たらない!と苦戦するKAZAKOSHIれんじゃー80%。いや70%の彼女らがそうで、残る一人が順番でゼロと戦っていた。今はちょうど桔梗みたい。


「ふむ……さすが、露草さんが誉めていた人ですね。何かこういうゲームしてました?」

「ここまでリアルなのは初めてだよ。狩りゲーとかはしたことあるけど」

「狩りゲーですか?てっきりFPS?とかいうのやってたかと思ったんですが。まあ、センスがあるってやつですかね」

「よくわからんけど、三連射!」

「うおっ、会話の途中で攻撃とかどうかと思いますよ、僕も真似っこです!」


 まあ、仲良くやっているようだ。高い素早さで翻弄して攻撃を加えるという点では、二人の戦い方は非常によく似ている。だからだろうか、戦いも長引いているようだ。


「ぐっ、負けることはないでしょうけど……」

「せめて勝たせない!」

「熱い戦いが今始まってる気がする!」


 ゼロのレベルは非常に高い。体力は、いくらセンスが優れているとはいえ、レベルが二桁のKAZAKOSHIれんじゃーに倒せるようなものではなく、ステータスも、勇者さんのそれを上回っている。

 それなのに、勝てない。

 いや、勝てないのは、ゼロがお遊び感覚で挑んでるからだとか、ゼロが口に出したことが原因だからだとか、ゼロに罪悪感があるからだとか、色々ある。だが、事実としては一度も勝てていない。

 これが何を示すのかというと、ステータスが上回っているだけで倒せるボスではなく、ステータスが等しくても下でも、工夫次第で倒せるかもしれないボスということだ。

 必要な工夫をすべて対人戦に割り振ったKAZAKOSHIれんじゃーの運命やいかに!?




 次の日。露草が布団との戦いに身を投げていた頃の話である。

 今日はゼロが幾人かのプレイヤーを連れてきていた。彼らは、最近魔王城にたむろっている最前線プレイヤー。今のKAZAKOSHIれんじゃーにとってはライバルであり、戦友でもある存在だ。


「やはり一発クリアは無理だったか……」

「待て、二回目でクリアもまた例がない」

「まだオレたちの希望なんだ……」

「ちょっと気持ち悪かったぞ、今の言い方」


 さらに希望でもあるらしい。

 そんな彼らと今日は対戦だ。卵はゼロと戦うので抜けて、その他の七人が正規手続きでの対戦申請を行う。

 対戦お願いします。引き受けます。ありがとうございます。これらの言葉が引き金となり、特殊なエリアバリアが展開される。この中で戦う分には誰も死なないし、誰もキルしない。ので、PKとか心配しなくていいらしい。


 一方、卵と対戦しているゼロは既に戦い始めていて、絶賛苦戦中であった。


「いたたっ!割合ダメージは不味いですよ!」

「結界を展開するよ」

「守りが硬いとか、ホントに神官職みたいです、ね!」

「短剣で、えいっ」

「当たりませんよ?当たったらやばそうですし」

「セイントフォース!」

「聖属性攻撃ですか!いたい、割りと痛い!」

「当たって!」

「当たりました!みるみる減る!あぶねっ」


 苦戦中なのか楽しんでるところなのか不明だが、とにかく激戦に巻き込まれているようだ。


「さすがのゼロさんも怒りましたよ!」

「一人で盛り上がっておいて、何が怒りましたなんですか?」

「いえ、すみませんでした」

「とにかく、新技試させてください」

「あ、どうぞ、ごゆっくり」

「デスウォール!」

「……?もしかして……」

「ポイズンウォール!」

「状態異常耐性をあげるつもりですか!でも、このゼロさんは状態異常のエキスパートなんですよねっ」


 ゼロの即死たっぷり爪攻撃!卵は即死で死亡。エリアバリアが解除され、困惑したまま立ち尽くす卵に、ゼロは言った。


「大丈夫ですか?すみません、まさか一発で通るとは」

「露草の説明と違う……」

「新しい技ですから、まだ分からないところが多いんでしょう。もしよかったら、検証に付き合っていただけませんか」

「検証って……なんですか?」

「あなたのデスウォールがどれくらい即死耐性をあげるのか、という実験です」

「はぁ。でも、時間がかかるんじゃ……」

「勇者さんを倒したら役に立つ魔法ですよ、それは。今のうちに詳しく知っておく必要はあると思いますよ」

「じゃあ午後の自由時間でゆっくりやるのはどうですか?」

「いいですね! 掲示板の前で待ち合わせでもいいですかね」

「場所を知らないけど、なんとかします」

「場所知らないんですか! じゃあ、皆さんも誘って是非来てください。割りと大きな建物なので、すぐ分かるかと思います」


 トントン拍子で午後の予定が決まる。

 未だに布団と格闘している某リーダーとは大違いだ。


「じゃあ次の方、どうぞ」


 あんだけ刺されたり叩かれたりしたのにゼロさんは元気だ。すぐへこむ某露草氏とは違う。

 物理と精神じゃ意味が違うだろ、ってそりゃそうだけど。露草さんは物理でも精神でもへこむじゃない。


「よーし、次はウチだね。行ってくるねダーリン」

「ハニー行ってらっしゃーい」


 露草氏がへこんでいる間に、空がゼロと戦うことに。

 一方で、半年前から最前線を貫くプレイヤーたちがどうだったかというと、強い。

 流石に勇者さんと戦い続ける意思を持つだけはある。

 桔梗と黒鉄は勝ってたけど。こないだ踏まれたいだの変なこと言うから。

 あと余った常葉さんが昨日の自分(のコピー)と戦って、見せられない感じに勝利を上げていた。


「やったぜ」


 描写がイージーでもお見せできないので、可愛らしくガッツポーズする常葉さんの映像でも流しておきますかね。




 その日の午後、常葉さんは露草さんの様子を見に行った。

 朝っぱらから明後日の方向で頑張っていたリーダーであるが、予定通りなら今ごろ杖を振り回すだけの苦行を強いられているはすである。からかいがてら労ってやろうと思ったのである。

 それがどうしたことか。


「ちょっと待って、待って、死ぬ死ぬ死ぬ!」


 ゲームの真っ最中であった。しかもボス戦。なに普通に進めてるの、と常葉は言いたくなった。とっさに尻尾ではたき着けたのも何も悪くないだろう。


「あんたは何をやってるんだ!」

「ワイエース!」

「そういう意味じゃねーよ、特訓はどうした、特訓は!」

「ひ、一区切り着いたんです、一区切り!」

「ほう、ということは……」

「一個目の魔法攻撃を覚えましたー☆」

「おー、お疲れー。じゃ、次の特訓に移ろうか」

「いやじゃー!いやでござるー!」

「いやじゃじゃねーだろ!これをしないと、勇者に勝ち目がないかもしれないんだろ?」

「むー。ところで、常葉さん、それなに?」

「これ?露草さんが頑張ってたらあげようと思ってたお土産」

「頑張ります」


 茶番みたいな掛け合いのあと、露草は立ち上がる。

 向かうは城下町中央広場。案山子がいるど真ん中だ。

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