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【メアリー】

「前回までのあらすじ!私が出ない!」


【ハンマー】

「メアリーさんがあらぶっておられる。どったの?」


【メアリー】

「三話ぐらい前から、ケイト&メアリー戦って予告されてるのに、一向に私の出番がまわってこないの!」


【ゼロ】

「前回は言ってないです。それだけ言いに来ました」


【ハンマー】

「んー、なんか理由があるんじゃね?」


【桔梗】

「そんなこと言うと、私もしばらく出てないんだけどねー」


【メアリー】

「ネタバレの予感!私は去るわ!」


【ハンマー】

「……メアリーさんの技名が思い付かなくて延期してる、なんて本人に言えないよネー」


【桔梗】

「ひでぇ」




◇◆◇◆◇




 偽りの支配者との邂逅から約10分。状況は膠着に陥っていた。

 儀式陣1を破壊し高笑いを挙げた露草氏であったが、グロッフェルは儀式陣2を発動させてなお座ろうとした。しかし、運悪く儀式陣2は露草の近くにあったので、発動する時間もなく爆発四散。儀式陣2に近付こうとしていたグロッフェルと露草は爆風の煽りを受けて体力を削られてしまう。性懲りもなく儀式陣3の発動に入ったグロッフェルを、卵は遠慮なく蹴飛ばす。まだまだ諦めないグロッフェルは儀式陣4を完成させ、とうとう座ることが出来たのだが、卵が切れて儀式陣4を露草たちに有利な結界4に書き換えてしまった。


【儀式陣マニア】

「な、何故だ……。何故、私の固有魔法を、儀式陣を操ることが出来る!」


「この間強い人と戦ったときに緑の人が教えてくれました。気分はどうですか?」

「あー、とっきーさん人が絶望することとか大好きだもんね。そりゃ教えるわ。てか、この人コレに命かけすぎだろ」


 よほど座りたかったのか、グロッフェルの呼び出した第四の儀式陣は、強力なシートベルト付きだった。恐らくはこれの上で、悠々自適に魔法を撃ちまくり敵をはいそうする予定だったのだろう。しかし、いまや安心安全の儀式陣は徐々に命を削る地雷となり、快適な椅子は拘束具に早変わりしている。まさしく自業自得といった感じだった。


【儀式陣マニア】

「私が負けるなど!そんなことなど、あってたまるか!こんな形で死を迎えるのか、私は!恥を忍んで申し上げます!魔王さま!どうか私を――」


 格好よく啖呵を切り、惨めに体をばたつかせても、快適で安全で壊れない椅子は揺れもしない。流石、文面通りだ。露草と卵にとって戦闘が快適になり、安全になる椅子。グロッフェルが必死の形相で叩いてもびくともしない。これを作り出したのはきっといい人だ。

 さあ、終わりの時が来た。卵と露草は顔を見合わせて頷く。結界4は儀式陣を書き換えたもの。卵のスタミナが切れない限り効果が続くいつもの結界ではない。早期決戦を目指す必要があった。卵はナイフを、露草は借り物の剣を構える。そして、絶望のあまり涙を流し始めたグロッフェルを刃物の峰で打ち付ける。

 びたーん。びたーん。びたーん。びたーん。


「なんか新しい感覚……コレ、いいかも……」

「卵がSMに目覚めつつある!?」

「いや、違うって。このナイフいいなあって」

「ああ良かった。そっちか。そのナイフはね、私たちの中じゃ卵しか持てないから、卵にあげるよ」

「いいの?実は、結界張りっぱなしだと他のことが出来ないから、なにか武器が欲しかったんだよね」

「そうだったんだ。全然知らなかった。ごめんね」

「ううん。本来巫女さんは物理で殴ったりしないから。でも、これでみんなの役に立てそう」

「……結界張るのはすっごく難しいことなんだよ。卵は、そこにいるだけで雰囲気が変わるムードメイカーなんだから。今のままでも、いいんだよ?」

「わたしが変わりたいんだ。駄目かな?」

「不覚にもキュンとした。許そう。素敵☆」

「ありがとう。ところでいま文末に星が付いてなかった?」

「な、なんのことやら」


 かたや光属性、かたや聖属性を宿した武器である。本来とは異なる使い方をしていても、グロッフェルの体は聖なる力によって焼かれていく。弱点四倍と弱点二倍はやばい。朦朧とする意識のなか、それだけがやけにはっきり聞こえ……た。グロッフェルの体力はもう三分の一もない。二人は叩き続ける。お爺ちゃんは眠るように気を失い、そのまま命を散らした。


「いなくなった……」

「プレイヤーだからね。たぶんこの部屋か館か、どっかのセーブポイントに転送されたんだろう。大丈夫、生きてるよ」

「わたしたち、倒したの?」

「うん。予定とは違って本人の方だったけど、クエストは解放された。これで他の四天王二人も倒せば、最後の一人に挑めるね」

「そうなんだ……」

「卵……。とりあえず、この部屋出よっか。ほこり臭くて休めないでしょ?」

「うん……」


 何となく気だるそうにしている卵を背負って、露草はほこりだらけの館主の部屋を出た。外の廊下の方がよっぽど清潔感にあふれていて少し、少し切なさを感じる。プレイヤーアバターをAIで再現できるようになって随分立つらしい。今日露草と卵が来るまで、あの部屋の主はどこにいたのだろうか。露草はお爺ちゃんのことを彼に伝えるかちょっと迷うのだった。




◇◆◇◆◇




「ちゃんとアイテムの確認はしたかしら?」


ケイトは四人に尋ねる。


「「「「はぁい」」」」


 女の子四人分の声が返ってきた。よし、全員が肯定の声をあげている。ケイトは四人の顔を見ながら、それぞれへの仲間認定(フレンドリーファイヤ)設定を外していく。いよいよだ。

 ケイトの厳しい訓練と授業により、より深くシステムを理解した四割れんじゃー。連携も、以前のそれとはまるで別人だ。


「私の倒し方は覚えてるわね?」

「うちが皆を守って」

「ウチと」

「あたしがメインで攻撃」

「わたしは回復と補助をして、特に白銀の様子に気を付ける」

「で、隙があったら全員で叩く!でしょ?」


 前の作戦とあまり変わってないように見えるかもしれないが、それは誤解である。それぞれがそれぞれの役割を理解した……つまり、誰かから言われたままに動くのではなく、自分の判断で戦闘スタイルを選択できるようになったのだ。これは大きい。

 意思を持つリーダーが要らなくなった瞬間である。某露草さんがガチで壁以外に意義を見出だせなくなってしまった。なので、みなさんオートで行動するのは程々にしてね☆


「僕が隙を見せるのは、大技の後。王道だね。必殺技は、ディザスターともう1つあるから油断しないように。それから、ディザスターはもう使わないから安心してもいいよ」

「なんでアレ使わないのー?」

「もう対処法は分かったし、いくらでも受けて立つよ?」

「いや、一戦闘につき一回しか使わないって決めたんだ。必殺技だしね、ぽんぽん使っちゃまずいじゃない。……使うヤツもいるけど。もう1つの必殺技は、四天王汎用技なの。だから、バンバン使わせてもらうわね」

「必殺技なのに汎用なんだ?(笑)」

「ということは、他の四天王も使うかもしれないってことか」

「ねえ、こういうのネタバレって言うんじゃないの?大丈夫?上司とかに怒られない?」

「四天王の上司っているのー?」

「この程度、ネタバレでもなんでもないから大丈夫なのよ。上司的な存在も、たぶん怒んないと思うわ。魔王さまはそもそも優しいし。へーきへーき」

「案外適当……!?」


 実のところ、ケイトはその汎用必殺技を実戦で使ったことはなかったりする。というか、ついこの間の雑談で提案され、現在ようやく実践段階に移ったところであり、ネタバレどころではなかったり。

 ケイトの戦闘スタイルは弱体化と状態異常における体力削り。そんな彼にとって汎用必殺技は一定のダメージを叩き出せる物理攻撃だ。しかし、もう片方の部屋で戦闘しているだろうメアリーと最後の四天王は物理職。グロッフェルは魔法職なためダメージ源のSTRがあんまりない。どちらにせよ、他三人とって使いやすいスキルではないのだ。

 しかし、当然のことながらこうした裏事情や、グタグタついているバランス調整など、表側のプレイヤーが知る必要はない。ケイトだって、今更この汎用必殺技の欠点に気が付いて、ホントにネタバレにすらならないかもしれない、などと思っているのは内緒にしておきたい。今から修正に行きたいぐらい恥ずかしい。ヤバい。四天王汎用スキルじゃなくてケイト汎用スキルになってるじゃないか。


「……どっか調子が悪いの?」

「やっぱさっきのまずかったんじゃ……」

「大丈夫よ。たぶん行けるわ。なんとかなると思う。よし。……僕の準備は出来たよ。さあ、どこからでもかかっておいで!」

「だんだん心配になってるじゃん……」

「不安しか感じない」


 ケイトさんのせっかくのシリアス台詞がブレイクした。ケイトさんは内心で猛烈に泣いた。恥ずかしさを隠すかのように涙を流す。対四割れんじゃー戦。ケイトさんの戦いが始まった。




◇◆◇◆◇




 一方、その反対側の部屋ではまさに緊迫した戦闘が行われていた。

 四天王の物理担当、メアリー・スラッシャー=フォースこと、疾風の刃さんだ。相対するのはもちろん、分裂したKAZAKOSHIれんじゃーの片割れ、三割れんじゃーずの桔梗、赤銅、黒鉄。黒鉄と桔梗が攻撃の要となり、赤銅が補助と回復に回っている。


【疾風の刃】

「なかなか、やるわね。噂通りでいいことだわ。そっちの二人はまだ新人みたいだけど……、筋は良いのね。仲間に恵まれるなんて、羨ましいわ!」


「あの人の過去にいったい何があったんだろーな」

「さあ?ケンカでもしたのかもよ?」

「うちら、まだ新人、どころか今日から始めた初心者なんだけど……」


【疾風の刃】

「今日始めたですって?到底信じられないわね。もし事実なら、こちら側に来ない?魔王さまは可愛いし優しいから、心配する必要はないわ。一緒に魔王さまの部下として、プレイヤーを蹴散らしましょうよ」


「悪の組織からの勧誘を受けてしまった……」

「闇堕ちフラグですね、分かります」

「上の人が優しいのは良いよね~。でも可愛さって関係あるの、これ?」



 忍者の闇堕ちとか完全にR-18になっちゃうじゃないですか、やーだー!格好的には普段の黒鉄の方がエロいけど。黒包帯巻き巻きマミーっ娘だし。いいスタイルをしている……。

 この中の誰かが寝返ったりする展開は予定しておりませんのでご安心ください。


【疾風の刃】

「今なら家政婦と一日二回のおやつも付くわよ!」


「どこまでが本気なんだ、この人」

「まさかぁ。全部冗談でしょ」

「あっ(察し)。全部本気なフラグが立ったんじゃない?今の」


【疾風の刃】

「半分本気で半分冗談に決まってるじゃない。でも、魔物側のプレイヤーが増えてほしいのは本音よ。だけど、貴女たちじゃちょっと危険すぎる。……魔王さまの情操教育にも良くないし」


「ごめん、違ってた」

「よくある方便じゃん。気にすんなって」

「私たち、危険なんだ」

「銃士に格闘家に忍者だぞ。現実だったら勝ち目ないわ」

「忍者って言う時点でもうリアル感なくない?」

「現実的に言うと、空手は素人さん相手に使っちゃ行けないんだよね。破門になる」

「まず銃士に突っ込めよ」


 ガンナーとモンクとジャパニーズアサシンにかつあげされているのをイメージしてみよう。とてもじゃないが、勝ち目どころか逃げ道を見付けられない。仮に運よく逃げられたとしても、この三セットは足が速いジョブで組まれている。すぐに捕まってしまうだろう。雑魚相手なら最凶の組合せなのだ。

 問題は、現在敵対している彼女が雑魚みたいな存在であるかどうか。メアリーは不敵に笑う。与し易い相手かどうか確かめてみろ、そう言わんばかりに、周囲を威圧する。


【疾風の刃】

「私が倒せるかしら?倒せないようなら……魔王さまに会う前に、その気概をへし折ってあげるわ!」

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