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03

【常葉】

「前回までのあらすじー」


【露草】

「私は泣いた。前回は全然ストーリーに触れられなかったから、今度こそ触れてみせる」


【常葉】

「確定されない未来について言及するのは避けよう」


【露草】

「いいや、今度こそ絶対に触れる。触れてやる。私は負けたりしないのだ!」


【常葉】

「負け確率十割のフラグを建築するのはお止めください」


【露草】

「フラグじゃないやい!」




◇◆◇◆◇




 衝撃的事実にむせび泣く露草であったが、すべきことを思い出し急に立ち上がる。

『こんな往来でいつまで突っ立ってる気だ!』

 そんな風に言われたような気もしたからだ。


「そいじゃ、これから四天王を倒しに行く訳だけど、全員で一人づつ倒していくんじゃ時間がかかるから、3チームに分けさせてね」


 通路のど真ん中にたっている訳じゃないので、他のプレイヤーの邪魔にはなっていない。というか、もう通る人々すらいなくて邪魔にすらならないのだが。

 しかし、いつ何時どんな奴が来ても悪くないように対処しておくことは素晴らしいことだ。常葉さんはそう思った。


「四天王なのに、三つでいいの?」

「最後の四天王はちょっと仕様が違うから、みんなで行こうと思うんだ」

「そっかぁ。じゃあ楽しみにしてよっと」

「私、ハニーと一緒がいい~」

「ウチもウチも~!」

「わたしはどうしよっかな……」

「私は銀朱と一緒かな?」

「どうだろ、個人的には忍者な赤銅と一緒に行ってみたいんだけど」

「うちは、誰でもいいかな」

「桔梗と組むのもありか……。なんとなく強そうだしね」


 なんとも収拾が着かない展開を迎えたが、残念きわまりないことに、露草さんは言ったのだ。


「ごめん、もうチーム分けはしてあるんだ」

『ええーっ!』


 ピチピチのJKのはしゃぎどころを見事に潰してしまい、露草は面目なく思う。と、同時にこちらを恨めしく見る十六の瞳に気が付いて、なんとかしてこの場を収めなくては、という使命に駆られたのである。

 とはいえ、下手な言い訳は彼女たちを逆撫でするだけだろうし、嘘を言って場を誤魔化すのも気が進まない。そんなとき、露草さんの頼りになる人ナンバーワンの常葉さんはといえば、空中で軽やかなタップダンスを踊っていた。ランキングは降格である。


「えーとね、これから行くダンジョンに問題があって……簡単に言うとお化け屋敷なんだけど、『浄化』のスキルを持つ卵を安全に通らせたいんだ」


 つまるところ、幽霊だとかゾンビだとかそういうモンスターが出る、洋館風ダンジョンの最奥に四天王の一人がいるのだ。場所が場所だけに、彼の弱点も聖属性。巫女として浄化のチカラを持つ卵を、パーティーに入れたいというのは何も間違っていない。むしろゲームプレイヤーとして正しいあり方と言えるだろう。

 問題は、卵はホラー系が嫌いということ。今も彼女は、強張った顔で話を聞いている。その硬い表情には『行きたくない』とはっきり書かれていた。


「その敵は、他の人じゃ倒せないの?」

「うーん、倒せなくはないけど、卵が来てくれたら一発で終わるかな」

「……怖いんだよね?」

「怖くない工夫をするよ」

「でもお化け屋敷なんでしょ?」

「どっちかっていうと、キモいモンスターの類いを見ることになるかと」

「とりあえず、そのチーム分けを見てから考える」

「ありがと。はい、これです」


 露草のフォローに卵は妥協してくれた。露草はありがたく思いつつ、カンペにしていたルーズリーフの下半分をちぎって、卵に手渡す。卵は頷いて、紙を見た。卵を心配そうに囲んでいた他の面々も、その薄い紙を覗き込む。

 パーティー分けはこうだった。

 対『疾風の刃』戦、桔梗・白銀・赤銅 / 対『戦業主夫』戦、空・撫子・銀朱・黒鉄 / 対『偽りの支配者』戦、卵・露草


「露草も一緒に行くの?」

「行きますとも!」


 実は、露草氏だって怖がりなのだ。それは周知の事実なのだが、卵は何故か安心したようだった。露草氏も、一人で行くことにならなくて良かった、と安堵のため息を漏らしている。


「あ、一緒だったねー」

「やったねダーリン!」

「ね、黒鉄。戦い専門の主夫ってなんだろね」

「えっ?う、うーん。ご、Gバスターとか?」

「桔梗と赤銅がグループか……。強い(確信)うちも頑張んないと」

「それにしてもすごい中二臭さだな。これ、自分で考えてるのか?」

「たぶんそれがいいんだよ。よく分かんないけど」


 あとは再会(?)を分かち合ったり、ゴキブリハンターが作り出されたり、負けられない決心を築きあげたり、中二病な二つ名に突っ込みを入れられたり、と色々あった。赤銅さん、それフォローやない、トドメや。な事件もあったが、露草さんと銀朱さんは元気です。


「中二臭くて何が悪い!」

「そーだ、そーだ!」

「格好いいやろ、二つ名ってのは!私も二つ名欲しいぞー!」

「そうだぞ、もっと言ってやれー!」

「我々はいつまでも中二病を貫くぞー!」

「うおー!」

「痛いよ、そういうの」

「フンベロリィイイ!」

「ぐっはぁあああ……」


 即死攻撃であった。

 テレー。卵はデスを覚えた! 


「中二病なものを貶すのは、いい。許そう。だけど、中二病である人を否定するのは、止めて、くださ……い」


 それが、露草の最後の言葉となった。


「露草ぁー!」


 銀朱は思った。かの邪悪なるげに恐ろしげなる友人・卵を許すまじ、と。そして安らかな眠りへ辿り着くことを祈って、横たわる同胞・露草に手を合わせるのだった。




☆★☆★☆




「ただいま」

「おかえり」

「そして、また会おう!」

「おう、行ってくる」

「みんな、またねー」


 何事かと思うが、それは別れの儀式である。ショックのあまり死に至った露草が、ログ門からここまで戻ってくるのをみんな待っていたのだ。露草は珍しく感動のあまり涙した。そして、待っていた仲間たちをぐるりと見回して、卵の手をとった。他の面々も、さきほどのパーティーごと手を組み、準備は万端だ!


「人力テレポーター!」

「常葉キック!」


 露草と常葉がフォーメーションを組み、常葉のキックが風圧を喚ぶ!

 桔梗パーティーと空パーティーは吹っ飛ばされた。


「ぎゃああああ!」

「うわぁああー!」

「着いたら看板に沿って行けばいいからねー!」

「露草、たぶんもう聞こえてないって……」

「そか。じゃ、あとでもしもししよ」

「…………」


 常葉さんは清々しい顔をしていた。やりきった達成感がそのわずか数センチの身体に満ち溢れていた。


「って大丈夫なの!?あれ!」

「大丈夫、しばらく飛んだらあとはちゃんとテレポートするから。するよね?」

「するする。余裕でする」

「そうなんだ。じゃあなんであんなことしたの?ちゃんとしたテレポーターってあの先にあったんだよね?」

「……あのね。テレポーターってお金かかるんですよ」

「言ってくれたら良かったのに……」


 反動で秘伝マシンを体得中の露草と卵は、話し終えたその数秒後、確かにワープした。

 地面を離れてすっ飛んでいく二つの塊を見送る常葉。それが空中にて突如喪失し、行き先へ無事到着するのを確認すると、彼は道に背を向け都市へと歩みを進め始めた。


「言わないのは、露草さんなりの気遣いなのさ。まったく成功してないけど」


 露草の友人をこちらに喚んだり、その友達を追加召喚したり……といままで無茶難題を叶えてきた常葉だったが、次のワガママはなかなかにおもしろいものだった。

露草氏(わたし)の金策案として、KAZAKOSHIれんじゃー全員が寝泊まりできる施設を作ってほしい。それも、今回のボスを倒すまで、できれば一日以内に』

 露草の声がよみがえる。不思議と口角が上がるのが分かった。


「ほんじゃま、本気出しますか」


 常葉はそう呟くと、ちょうどよく目の前を通りかかったプレイヤーを取っ捕まえては計画に参入させるのだった。


「理不尽……!」

「いいじゃないですか、おもしろそうですよ」

「元はといえばゼロさんが――!」

「ゼロさんが呼ばなきゃ逃げられたのに!」

「モテモテだな、ゼロ」

「あ、勇者さんも手伝います?今話題のKAZAKOSHIれんじゃーのおうちを作るらしいんですけど」

「へえ。暇だったからちょうどいいな。手伝おう」

「もう逃げられないのか」

「ゼロさんが生け贄を召喚している!」

「ゼロさんを止めろ、止めるんだー!」

「俺達みたいな犠牲者をこれ以上増やさないために!」

「すごいそれっぽいセリフを吐かれたからには、やる気を出さざるを得ないですね!」

「しまった、逆効果だったか!」

「……せっかくだから手伝うか。――もしもし、セル?」

「勇者さんまでも!?」

「裏切ったのかぁー、ちくしょおお!」

「ゼロさんに呼ばれて来たんだけど、なにこの状態……。怖い」

「セリフがない」

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