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魔王と世話係と相談事「相談がある。良い意見を聞かせろゴミ屑。」

魔王視点です。

目の前には作りたてのボンゴレビアンコ。

俺が手ずから作ったものだ。

そして、捕虜にした魔術師の青年アレク。

これは以前この城で役に立ちそうなので生かして牢にぶち込んでおいたのを引っ張り出してきたのだ。


何故この魔王たる俺が、こんな奴と話をしているのかと言えば、人間であればこのパスタを勇者に食べさせる方法を知っているのではないかと、そう思ったからだ。


本当はこんな無駄なことはせずに侵攻を進めた方が良いのだが…そんな事をしていて気を抜いたら勇者が逃げてしまうかもしれない。

そんなのは嫌だ、あ奴は俺が手に入れるんだ!身も心も全て!

……いや、まぁ、端的に言えば俺は勇者に一目惚れしてしまったのだ。

しかし、魔王が勇者に惚れたなどと言えば、色んなモノがひっくり返ってしまうだろう。

そんな事はとりあえず伏せて捕まえてきて食い物を食わせたいが食わない、と言う旨を伝えているのだが…。

…この男、思ったよりくせ者だ。


「で、魔王さんはそのこのことが好き、と。」

「いや、その、好きとかでなくてだな、役に立ちそうだから殺さぬように生かして此方側に引き込もうと思うのだ。そのために信頼を得ねばならん、と言う話だ。

…と言うか、今の話でどうしてそんな曲解が出来るのだ。」


俺はずっとそのように伝えているはずなのだが、この男、何故か意味を曲解してくる。しかも、自分の立場が分かっているのかいないのか、豪快に笑いながら答えてきよる。

イライラとしながら俺は窓の外をみる。

窓の外は、チラチラと雪が降り続いていてまだ午前だと言うのに、薄暗い。


「そうかい、そりゃあ無理だな。英雄ってのはいつの時代も心によって動く者が多い。勇者もきっとそうだろう。まぁ、その嬢ちゃんを俺ァみてねぇ。全ては憶測だ。俺に相談したきゃ、まずはその嬢ちゃんに会わせるこったな。」

「捕虜の癖にえらそうに…。しかし、まぁ、オマエは特別だ。この件で協力をするというなら捕虜から昇格してやらんこともない。

…オマエとて、妹のことは心配だろう?

オマエは殺すに一苦労するが、妹はそうではない。妹のことを思うならまじめに協力するのだな。」


視線を戻し、俺がそう脅すと、アレクは苦笑いをした。

城を襲撃したときもそうだったが、コイツがおびえたところを俺は見たことがない。

下手をすると、俺よりも強力な魔法を使うこの天才児は、敵に回すよりも見方に引き込んだ方が良かった。

幸い、コイツは王を故あって憎んでいたが逆らえない理由があったらしく、王を殺した俺に悪い印象はないらしかった。

妹を可愛がってやれば、誰の下でも文句はない、との事。


そんな奴だが態度は横暴そのものだ。人間の癖になんという態度。

こんど俺の方が目上だと言うことを教えてやらねばな…。

しかし、今は勇者だ。私はアレが欲しいのだ。…なるべく、そのまま。


「あぁ、分かっているとも。だからこうしてくだらねぇ惚れた腫れたにつきあってやってんだろうが。」

「くだらないだと!?…本当に分かっているのか?惚れた腫れたではないと…。」

「そうだ、おなごの気持ちはおのこにゃ理解できねぇ。やっぱおなごはおなごに相談させてやった方がいいだろう。」

「言葉を遮るな!!うざいぞおまえ!!…よくわからんが、分かった。妹の…なんと言ったか、サファ?」

「サフィだ。世界一可愛い、俺の可愛い、それはもう可愛いサフィだ。間違えるな、可愛いサフィだ。」

「そのサフィに世話をさせる、当面はそれでいい…か?」


俺がそう言うと、アレクは豪快な笑顔になる。

多少ウザったい顔だ。いや、既にウザい。物言いが。

そんなに可愛いを連呼するな。大体顔はオマエと大体一緒だろうが。


「そうだな、それが無難だが…おめぇも少しは考えて行動しなきゃなぁ。」

「…どういう事だ?」


それは相変わらずのソイツの事を殴ろうかどうかで悩んだときにかけられた言葉だった。


「大切な人を殺された人間が、そう簡単に殺した人間を愛せるかい?」


俺はちょっと、考えて溜息をついた。

確かに、そうといえばそうだ。


「考えておこう。おい!コボルト!!」

「はい、まおうさま!」

入り口に待機させていたそれに言うと、もふもふと白い毛玉が入ってきた。

…いや、確かにコボルト族にアレクを連れてきて、部屋の前で待機、とは指示したが、何でコイツにアレクを連れてこさせたんだアイツ等。

どう見ても二足歩行の子犬ではないか。

ま…まぁいい。


「おいちび、コイツを元居たところに連れて行き、サフィと言う女の方の人間を連れてこい。」

「はぁい!えと、ニンゲンのメスですね!」


実に元気のいい返事が返ってきて俺は不安になる。

しかし、ここにはアレクもいるし、コイツだって子供なんだ、ここでむやみに怯えさせても大人げないと言うものだ。


「お、おぉ、そうだぞ。間違えるなよ?」

「わかりましたー!よーし、アレクーいくよぉー!」

「おー一緒に居こうなー」


そう言って手を繋いだまま、毛むくじゃらとアレクはドアをくぐる。

それはもう楽しそうに…。

仲がいいんだな、オマエ等…。


溜息をついて、俺は窓の外をみる。

このスノーランドは一年の内、殆どが冬だ。

この時期は、晴れる日の方が珍しい。


その灰色の空が嫌に重く感じた。

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