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勇者の驚愕「誰か私にも状況が分かるように説明して。一分で収まるくらいシンプルに纏めて」

日差しが、部屋にはいってくる。

私はそれで目が覚めた。

ぼんやりと、見たこともない部屋の中を目だけで見渡して、柔らかいシルクの温もりに甘える。


ここどこ?答えは知らない。

じゃあ今どうしてこんな事に?


ぼやけた頭では答えまでの道のりがいやに長い。

ふと、温かい何かが髪をすいているのに気づいた。

それはとても優しくて、こんな風にされた事は初めて、とどこかで違う私がささやいた。


知らない、なんだか眠い。

ここはいつもと違って驚くほどに静かで、二度寝という甘い誘惑に引きずられてしまいそう。


いつもはこう、早番の兵士達の喧騒で二度寝なんてできやしない。

勇者ったって、普段は城を守る兵士とあんまし変わんないんだし、夜勤明けとかマジ寝れなくて辛い。

休みの日とか、休憩の合間を縫って鍛錬やらなんやらしなきゃいけないし、勇者であったとして、禄な事なんて無いよ。


そう考えたところで、私は大変なことに気づいた。


「姫様ァァアアア!!!!!」


思わずガバッと起き上がり、私は魔王に襲われ、魔術をかけられたことを思い出した。

今までのグダグダやなんかはその魔術と温かい手のせいだと決めつけて、そこで初めて私は誰かが側にいることに気がついた。


その人はエメラルドの目をまん丸くしながらその綺麗な手を引いたポーズのまま固まっていた。

なんだか気まずい空気が流れる。


「え、あ、おどろかせてすいませ…」

私が謝ろうとすると、その人は弾かれるように立ち上がり、ウエーブが掛かった金色の髪を揺らして素早くドアの奥に消えてしまった。


そのあまりの速さに、私は呆気にとられ、数秒間抜けた顔をしていたことと思う。

だって、びっくりするよ、普通。


綺麗な顔をしていたけれど、男前な顔つきだった。

所謂イケメンだったのだが、ふと、彼のステータスを見るのを忘れたことを後悔した。


だってあいつ、魔王と似たような角が生えてた。

たぶん、魔王の側近とかそういう系で、魔王に力を与えられた奴なんだろう。

絶対対策立てる役に立ったはず。…惜しいことをしたなぁ。


と、考えたところで私は自分の魔力の流れがおかしい事に気づいた。

まさかと思って魔術を使おうとすると、魔力を収束しようにもこう…表現しにくいが、掴もうとしてもするりと抜けていってしまう様に纏まらないし、身体が鉛のように重い。


…やられた。魔術封印か、これは厄介だなぁ。

普通の人ならきっと、なんとかしようもあるのだろうと思う。

だけど私じゃこの魔術だけはどうにもならないのだ。


それというのも私は生まれつき魔力が体内で血液と共に循環している為だ。


これは特異体質らしく、普通の人で例えると、常に魔力で身体能力を上げているようなものなんだとか。

つまり、筋肉とかがそんなに無くても、周りの人間の何倍もの身体能力を発揮する、と言った恩恵が得られる体質なのだ。

古文書によれば、幻の種族、世界樹の番人(なんじゃないかって言われてるだけの)エルフの体質なんだとか。エルフって見たこと無いけど。

因みに逆に言うと、生まれつきこうなので魔力を封じられるとただの人以下になってしまうのだ。

私は鍛えているから筋肉もそこそこあるはずなんだけれど…身体が重くてしょうがない。

やっぱり、他の人より魔力に頼っている分、筋肉もつきにくいんだなぁ…。



私は落胆しながらも周りを見回して、驚いた。

「(え、)」

周りを冷静に見てみれば、なんだこれは。


私が寝ていたのは、天蓋付きの淡い桃色のベッド。

こんなお姫様みたいな少女趣味なベッドに、私は寝た事なんてない。

壁には綺麗な模様があり、家具なんかや、窓の縁まで趣味の良い装飾が施されている。

気づけば誰が着替えさせたのやら、自分は桃色のネグリジェを着ていた。

そのネグリジェも相当上質なもので、レースとかが沢山ついててこれ一枚でも外に出られそうな程のかわいいデザインをしている。

…これじゃあまるでお姫様だ。


私は考えが全く追いつかずにまた混乱していた。


が、ふと足下に私の足には厳つい枷がはめられているのが見えて、まじまじとそれを見やると魔力を感じる。


恐らく、これが魔術封印のアイテムにして、拘束具なんだろう。

私は、分からない状況下であれ、とりあえず魔王の手に落ちた事は把握できた。

おそらくは、姫様も奴の手に落ちているだろう。…自分が情けない……。


溜息がついでてしまう。

今を憂いても仕方ないのは分かっているのだけれど、どうも、こう…ショックを受けてしまう。

何のために毎日苦しい鍛錬を積んでいたのやら。


また溜息が口をついて出て、がっかりしてしまう。


…そう言えばここは何処なのだろう?

見た感じ、豪華な部屋にはみえるのだけれど、間違っても牢屋ではない。

姫様ならともかく、勇者をこんなVIP対応するなんておかしいでしょ魔王。

本来なら殺されるのが当たり前、捕まえたなら見せしめに拷問するのがお決まりの展開。じゃあこれは…?

…魔王は人間と何か違う感性を持っているんだろうか。てか、何してるんだ魔王。


本当は姫様を探したいのだけれど、足枷のせいでここを抜けられないし、さっきの人が私が起きたことを周りに知らせているだろうと思う。

この自分の待遇を見てみるときっと姫様もそこまでひどい状態ではないだろうし、かえって下手をうって姫様の首を締める事になる。

ここは、大人しく相手の出方をみて、どうにか逃げ出す方法を見つけよう。


よし、と、そう決めた私の前で、先程素早いイケメンが消えていったそのドアが開く。


そのドアの向こうには、右手にいい匂いのするパスタを持った魔王が立っていた。


……アンタは本当に、何がしたいんだ。


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