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嗚呼、アア、ああ  作者: 沙羅双樹
本編【破壊】
10/11

破章


 さて、俺は人間の醜悪さをもってして世界のゆがみを示したな?


 では、他のゆがみの根拠となるものを示していこう。


 それは、『真実』が存在し得ないということだ。


 何を言っているのか分からないだろう?


 それでいい。


 哀れで愚昧で陳腐な君らはそれで良い。


 君らは耳を塞ぎ、目を塞ぎ、与えられる物だけに飛びつく。


 それが正しいものか、過ちかも認識しようとせずに。


 話を少し変えようか。 


 この世界は、君らの一人称で動いている。


 人の世界に誰も干渉しようとしないし、しようともしない。


 だからこそ、自分の世界しか判断材料がないのだ。


 人の世界は到底覗けるわけもないし、理解できるわけもない。


 人の世界には、その人の感情、思考、知識、その他諸々が詰め込まれているのだから。


 少し覗いただけで、その人の全てが理解できるわけもない。


 それほどに、人とは複雑なのだ。


 それと同時に、単純でもある。


 人のことを理解できないからこそ、目の前に吊るされた『事実』に飛びつく。


 そうして得た事実を、宝物の如く自分自身の深く深くへとしまいこむ。


 それが偽かも、真かも吟味せずに。


 これが一番顕著なのは、最近だ。


 周りで得た情報を高々と振り上げ、ふんぞり返って周りにさらにそれを伝播する。


 それのなんと醜悪なことか。


 さらにそれは公式の場でも増えつつある。


 ジャーナリストだ。


 さて、連日連夜で報道されている情報。


 あれらを真実だと言い切れる情報は何処にある。


 情報を真実だといい切れる情報だ。


 これに関しては、事件などはそりゃ真実な情報が鮮度を保って送り届けられる。


 だが、各国の情勢などはどうだ?


 政治家の動きは?


 世界の様子は?


 一般人がどうこう言える問題じゃないな。確かにそうだ。


 所詮人は自分の知りえる範囲の事柄しか知り得ない。


 それが、己の世界なのだから。


 人の世界と己の世界で、真実が異なっているのは多いことであろう。


 真実はいつも一つなのは、目に見える物理的な事件のみだ。


 だからこそ、真実とはかくも薄っぺらいものなのである。


 精神的なもの、体感できない物に関しては、真実を真実と言い切るには情報が足りず、偽と言い切るにも自分自身の猜疑が邪魔をする。


 故に、人は楽な方に流れる。


 情報の丸のみである。


 それは最早盲目的であり、自分という世界に殉ずる思考である。


 故に、真実は埋もれる。


 己自身で、得るべき物をせっせと埋めているのだ。


 滑稽なこと、この上ない。



              ――世界で一番の狂人「草薙 仁」著『堕落』より抜粋 

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