ふたりめの侍女
カリナさんは丁寧に、根気よく先生をしてくれた。おかげで大変ためになる授業になった。本当に、感謝してもしきれないぐらいだ。
「あら、もうこんな時間になってしまいました。申し訳ございません。私、これからシェード様にお届けする物を渡しに行かなくてはならなくて……。」
カリナさんは申し訳なさそうに頭を下げた。とはいえ、私には全然意味がわからなかった。リスニングはまだまだだ……。
そんな私を見て、カリナさんは、はっと気付いたように辞書のページをめくっていった。ちなみにこの辞書、使う場面のジャンル分けがされている。今の言葉の場合は、「謝罪の言葉」、「忘れ物をした時」みたいな感じのページに載っている。なかなか変わってるから、私も単語を探すのに苦労する。
カリナさんは単語をひとつひとつ見せて、もう一度謝った。なるほど、今度は意味がわかる。
「そんな……。私こそこんな付き合わせちゃって、ごめんなさい。」
私も辞書片手に謝った。かれこれ1時間半経っている。道理でお腹が空いてきたわけだ。
カリナさんは慌てる様子もなく、私の部屋を出て行った。でもその後、遠くで廊下をぱたぱた走る音が聞こえたので、相当時間がヤバいのかもしれない。ますます私は申し訳なく思った。
「やっぱり、大人しくしてよう。」
そう決意し、私は机に向かった。もう時間は1時近い。私は空腹感を紛らわすため、気を引き締めて勉強に集中した。どうせそれ以外にすることもないし。
――コンコン。
1時間経たないうちに、扉がノックされた。誰かな?
私は覚えたてのアルフェンの言葉で「どうぞ」と言ってみた。ドアが開く。
「失礼します。」
そう言ってから入ってきたのは、これまた美人だった。ショートボブの黒髪が綺麗な、なんとなくクールな雰囲気の女の人。ロングの赤みがかった茶髪を後ろでまとめた、柔和な感じのカリナさんとは違った美しさっていうか……。
「カリナから話は聞きました。この国の言葉を学ばれているとか。」
女性にしては低めの声。宝塚系っぽいな。
「私はルルと申します。ご用の際は、なんなりと。」
そう言って、彼女はかしこまって礼をした。
「私はルルといいます」のところらへんは、なんとなくだけど聞き取れた。ふむふむ、ルルさんか……。
とりあえず私は、何か言わなきゃと思った。
「えーと、私はリサコです……。よ、よろしく。」
発音自体は間違ってないはず。ただ、ものすごーくゆっくり言ったから、相当なカタコトに聞こえていることだろう。そんな私の拙い挨拶を聞いても、ルルさんは眉一つ動かさなかった。いつもにこにこなカリナさんと違って、かなり真面目そう。親しくなれるか少し心配だ。
「――リサコ様。昼食の準備が整いました。どうぞ。」
昼食、という単語が聞こえたので(というか、それしか聞いてない)、私は心の中で万歳した。お腹激ヘリだったんだよ! ご飯に関する言葉は、真っ先に辞書引いたからね。(食い意地張ってるんです。)
私は辞書を抱えて、彼女の後をついていった。