side:紅蓮葉-1
#1
私は”あの人”の言いつけで名古屋に来ていた。
そして、駅から出て数歩歩いた時、ある人を見つけた。
-天馬和也先輩-
イケメンでかっこよくて、頭もよくて、運動も出来て、さらに性格もいい学校のアイドルのような人。
私が見た光景。それは、そんな人が、世間でいわゆるオタクと呼ばれている人達が利用しているアニメイトと言う店からニヤニヤしながら出てきた所だった。
私は思わず、
「え?先輩?」
と言ってしまった。先輩はこちらに気づく。
「ふぇ?」
先輩が間抜けな声を出す。
私は恥ずかしさや緊張や驚愕などの様々な感情に負けて、手に持っていた携帯で、写真を撮りながら、声を出しながらその場から走り去ってしまった。
-夜-
私は同じクラスの、黒野 碧に電話をしていた。
もちろん、昼間の先輩の事だ。
「なるほどな、つまり暗黒天馬がアニメイトに居るところを見たからどうしようと言う事か」
暗黒天馬。これは天馬先輩の事だ。
碧は若干 (というかかなり)邪気眼で廚二病なのだ。
そして、波長が合うのか何なのかは分からないが、何故か学校全体の憧れである天馬先輩と仲がいいのだ。
ようするに、暗黒天馬とは碧が天馬先輩を呼ぶときのあだ名のような物だ。
ちなみに天馬先輩は碧の事を碧眼の魔人とよんでいるらしい。
「ククク、それは面白い事になっているな。我もこれからの事が楽しみだ」
「ど、どうすればいいんだろう?」
「あいつは隠してはいるが、本来はそういう奴だ。……写真が撮ってあると言っていたな。
折角だ。パシリにでもしてやれ。ククク」
そう言って電話が切れた。
……廚ニ病に助言を求めちゃ駄目と言う事が分かった。
#2
-朝-
碧が言ったようにパシリにする気は無いけど、一応話しかけてみようと思って、天馬先輩を探してみる。
-昇降口-
靴箱を空け、大量のラブレターを袋に入れている先輩に遭遇。
話しかけづらい状況なので、昼休みにもう一度探す事にした。
-昼-
私が弁当を食べようとしている時、教室の入り口から碧が話しかけてきた。
「おーい、客人だぞ」
私に用がある人なんて珍しいな、と思いながら私はその人のところまで行く。
その人は男の上級生だった。
話があるから裏庭に来てと言う。仕方が無いからついていった。
-裏庭-
裏庭についたら告白されました。断りました。茂みから他の上級生が3人出てきました。 ( ゜д゜)ポカーン
「良いだろ!付き合ってくれたって!こんなところにまで来て、〈あなたとは付き合えません〉って言われて、〈はい、そうですか〉って引き下がれるわけ無いだろうが!」
「な、いいだろ?少しでも付き合ってくれれば、こっちも満足するしさ」
「私にそんな義理はありません!」
……言ってから気づいた。これって挑発じゃねって。
「いいから、こっち来いよ!少しでいいから!」
手をつかまれました。
「きゃあっ!」
思わず悲鳴を上げました。
そんな時、どこからか
「待て」
と言う声が聞こえてきました。
声のした方を見てみると、なんとそこには天馬先輩が居ました。
すると、天馬先輩はいつも碧が使ってるような言葉を言いながら、上級生を殴り倒していきました。
そして、先輩は私に話しかけてきました。
「あ、あのさ」
ですが、恥ずかしかったので
「あ、ありがとうございました!」
と、言って私はまた逃げ出してしまいました。
でも、何故かその時私はこんな事を言ってしまったんです。
「また明日、この場所で」
と。
……先輩かっこよかったなぁ。
#3
-朝-
私は思わず言ってしまったあの一言が恨めしい。
……先輩と会って、なんて言えばいいんだろう?
碧は頼りにならないことがもう分かったので相談は出来ない。
……はぁ、考えても仕方ない。学校に行くか。
-昇降口-
3人の女の子が臨海学校のビラを配っていた。
彼女達は生徒会だ。
この学校の生徒会は、四季……いや欠けた四季とは、「木下春」、「井上 秋菜」、「冬月 菘」の3人の事を言う。
3人はこの学校のアイドルとも言える3大美少女である。
全ての人物の名前に季節が入っているので四季、または夏だけ居ないために欠けた四季と呼ばれている。
名前に夏が入っていて、可愛い娘はそこそこ居るが、この三人のレベルには及ばない。
それほど、この三人は美しいのだ。
そして、会長の春が、四季以外のメンバーを入れなかったために人数不足が起きてるとも言われている。
……そういえば、私も苗字に夏が入っていたなー。
でも、私は可愛くないから関係ないね。
-昼休み・裏庭-
「やぁ」
先輩が来て声をかけられる。
「あっ、せっ、先輩。来てくれたんですか?」
……正直言って、話す内容をまだ考えていんだけど……どうしよう。
そうやって、私が何を話すか考えていると、先輩がド直球の事を言ってくる。
「まぁな。で、早速だが、一昨日の事は忘れて欲しいんだが」
「あの写真のこと?」
……写真と言う保険があるからか、何故か急にタメ口になってしまった。
「ああ、俺は完璧超人を演じてるだけのオタクだ。そのオタクの部分を忘れて欲しい。
そして、誰にも言わないで欲しい」
……今思うとあの時の私は頭がどうかしていたとしか思えない。
おそらくは、気が動転していて、パッと頭の中に浮かんだのが先日の碧との電話なのだろう。
そのせいで私はこんな事を言ってしまった。
「私のパシリになりなさい!」
と。
何故か私が言ってしまったその一言で、これからの私の環境は大きく変わっていくのだった。
……どうなっちゃうの?私!
〈とある場所、とある情報屋の様子〉
「フフフ。君はいつも面白いネタを運んでくれるね。和也。
……夏風紅蓮葉ねぇ。
面白い子を連れてきたじゃないか。
……これからが楽しくなってきそうだハハハ!」
……こうして、物語は始まっていった。