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第一章 占い師

「デティ!!!早く起きなさい!!!今日はパパの命日なんだから!!」


「ふぁ〜あ…わかってるょ。」



僕の名前はデティ・フリルガント。


12歳。


母のフォーチュンと父のダリアンが付けた名前だ。


父は5年前に死んだ。



死因は一応事故死になっているが、噂ではこの島に封印されているドラゴンに殺されたとかなんとか…。


この島はドラコアイランドと言って島全体が一頭のドラゴンの形をしているらしい。


らしいと言うのも空高くから島全体を見たことがない僕は本当にそんな形をしているのかも疑ってしまう。



僕の住んでいる村はライトウィングラムという名前だ。

名前の通りこの島のドラゴンの右翼にある村らしい。



この島には昔から伝説がある。


島にある4つの祠の秘宝を集め、ドラゴンヘッドと呼ばれる森の奥の洞窟の中にダイヤモンド湖という湖があり、そこの広場の窪みにそれらをはめ込むとドラゴラムアイという千年竜の瞳が手に入るというなんとも信じがたい伝説だ。


勿論、僕は全くもって信じていない。



けど冒険家の父はそれを求めて祠の秘宝を取りに行き、秘宝を守る守護龍に殺されたというのだから情けない。



おかげさまで村の悪ガキにはからかわれたり、いたずらされたりで、毎日散々な目にあわされているのだ。


今日はそんな迷惑極まりない父の命日だというのだから困ったものだ。



僕は、この日が一年で一番嫌いだ。




「デティ!!!まだ寝てるの??早く起きなさい!!」


母の大きな声と慌てふためきながらドタドタと階段を上がってくる音が家中に響き渡った。



「ガチャッ」


扉が開くなり母のフォーチュンの顔は一気に夢に現れたことのある鬼のような顔になった。



「まだ着替えてないじゃない!!いつまで寝てるの!!!早く起きてしたくしなさい!!」



「わかったよ。」


憤慨する母にデティは素っ気なく返す。


ドタドタ部屋から出て行く母を横目で追い、部屋から去ったのを確認すると、デティはベッドから降り、寝巻きのローブを脱ぎ捨てた。


散らかった部屋に落ちている少し汚れた七分丈のズボンに鹿の皮で作られた服を着て、その上から黒色マントをはおった。



この島の男性はだいたいこんな格好である。




少しベッタリした長めの髪を書き上げ、髪の襟足の部分を深緑色の布の切れ端でポニーテールに縛った。


支度のできたデティは階段を駆け下り、一階の居間のソファーに腰掛けた。



一息もつく間もなく居間に駆け込んで来た母にパンを押し付けられた。


ため息をつき、デティはパンを頬張り始めた。




パンを食べ終わるや否、家の呼び鈴が鳴った。



母ゎ裏庭で洗濯物を干している。


デティは、残り少ないパンを口の中に押し込みながら立ち上がり、玄関へ向かった。


デティがドアノブに触れる前に扉はパッと開いた。


そこに立っていたのは、火のように真っ赤な髪をショートカットにしている猫顔の小柄な女の子



名前はリール・アレクレイ。

デティの幼なじみだ。



リールは目が合うなり叫ぶように言った。


「ちょっと!!なんで昨日勝手に帰ったわけ??日が暮れるまで探してたんだからぁ!!」



(そうだ、僕は昨日リールとかくれんぼをしている途中で眠くなって勝手に帰ったんだった。)


デティは思い出した。


デティが言い訳をしようと口を開こうとする前にリールは言った。


「まあ、いいわ。」


そう吐き捨てるなりデティの家に勝手に上がり込んで行った。


少し唖然としたが、よく考えてみればいつものことだ。


デティは居間に戻り、先ほどのソファーに再び座った。


すると、リールが言った。

「今日のおじさんのお墓参り、私も行くのよ??」


と、なぜだか誇らしげに言った。



それもそうだ。

毎年、父の命日に集まるのは、ドラゴンの秘宝の伝説を信じ、冒険家の父を誇らしく思っている頭のいかれた連中ばかりなのだ。


デティは、そんな連中があまり好きでなかった。


なぜならみんなデティに、口を揃えて言うことがあった。


それは、


「ダリアンのような勇敢な冒険家になれよ。」


だった。




僕は、冒険家には絶対にならないし、ドラゴンの秘宝なんかにも全く興味がない。


これからだってそんな存在するかもわからないような伝説に興味を持つことなんてないだろう。


デティは、そう考えていた。


デティは、結構何事にも無関心だった。




デティは、大好きなダリアンおじさんの話で一人盛り上がるリールに素っ気なく相槌を返しながら時間を潰した。



裏庭で洗濯物を干していた母が帰ってきた。



「おばさん、そろそろ行かないといけない時間よ??」


リールが言った。


「そうね。出発しようかしら。」フォーチュンが返す。





デティとリールとフォーチュンは墓参りに参列する父の知人たちが集まるライトウィングラムの村の中心にある噴水のある公園に向かった。



この公園は、デティとリールが昨日かくれんぼをしていた公園だ。


公園に名は無く、デティたちは、公園の噴水に人の体より少し大きめのドラゴンの像があることから、ベビードラコパークと勝手に呼んでいる。



ベビードラコパークに到着すると、そこには既に数十人の人が集まっていた。



みんな父の知人だ。



少し顔つきの怖い中年のおじさんが、デティたちの到着を待ってましたと言わんばかりに近づいてきた。


この人の名前はランディ・アレクレイ。



そう、その名の通りリールの父である。


ランディがリールに言った。


「リール!!探したんだぞ!!??デティのとこに行くならママかパパに言ってから行けってあれほど言ってるだろ。」



リールはいつも勝手にいなくなるらしい。


勝手にいなくなるときはだいたいデティのところに来ているからさほど心配はしていないようだが、リールはいつもこの事と怒られていた。



「わかったわパパ。それよりフォーチュンおばさんも到着したこどだし早く出発しましょ。」


リールが話を変えるように慌てて言うと、ランディはため息をつきつつも集団に戻り、みなに出発を告げた。



父の墓はハートマウンテンの頂上にある。


ハートマウンテンとはここから約3マイル程離れた山のことだ。



名前の通り、島のドラゴンの心臓辺りにある山らしい。



二時間ほどかけて墓に到着したデティたちを含める参列者は、フォーチュンを先頭に一列に並び、順番に墓参りを始めた。



デティは集団の中でフォーチュンとはぐれてしまったので真ん中より少し後ろに並んでいた。



前に並んでいるデティの知らないおじさんが父について熱烈に語りかけてくるのを退屈そうに聞きながら時間を潰しているうちにデティの順番が回ってきた。



デティは父の墓の前で両手を合わせ、目を閉じた。


(こういうとき何を考えればいいんだろう。)


デティの中で答えは見つからず、頭の中は真っ白だった。



すると、


(デティ……デティ……旅立て………)


頭の中で誰かの声が聞こえた。


「え??」



デティは焦って目を開けた。




そこには見慣れている父の墓があるだけだった。



「デティ!!!早く退きなさい!!後ろがつまってるじゃない!!」



我に返ったデティは足早に墓の前から離れた。





墓の前での出来事をまずリールに話した。

勿論リールは信じなかった。

これ以上話してもからかわれるだけだと思い、デティはリールに話すのをやめた。



次は母のフォーチュンに話した。

母も同じように信じてはくれなかった。



すると、そこに背の低い(腰を曲げているからだが)お婆さんが寄ってきた。


お婆さんはの顔がデティの顔に近づく。


デティは後ずさりししてしまった。


お婆さんは、デティの目をジッと見つめながら言った。



「あんた、聞こえたのかい??聞こえたんだね??」


デティはそっと頷いた。


「わかったわ。今日の夜、家へおいでなさい。」


お婆さんは言った。



デティは、何も口にすることができず、お婆さんが立ち去るのをただただ見つめることしかできなかった。



ふと我に返ったデティは母のフォーチュンに訪ねた。


「今のお婆さん誰??」



母は耳打ちするように静かに言った。


「この島の有名な占い師さんよ。ちょっと陰気臭くては私はあまり好きぢゃないけどね。パパはなぜだかよくあのお婆さんの家を訪ねてたわ。名前は…確か…レアディ…だった気がするわ。」



「レアディ婆さんかぁ。」

デティは呟くように言った。



その日の夜はリールがデティの家へ泊まりにきた。



デティはリールの横で寝るのがあまり好きではなかった。



なぜならリールは尋常じゃないぐらい寝相が悪いからだ。



夕食を終えたデティたちはデティの部屋へ戻った。


リールが部屋に入るなり言った。


「ねぇ、デティ。」



デティがリールに振り返った。



リールが少し心配そうに言った。

「あの占い師の家に本当に行くの??」



デティは正直行くつもりでいた。


「うん。」


そっと答えた。



「そう…気をつけてね。」

リールは言うなりデティのベッドに潜り込んだ。


静かになった部屋を後にし、デティは家から少し離れたレアディの家に向かった。



ベビードラコパークに行くときにいつも通る道の片隅にある家だった。



公園に行く度に

陰気くさい家だと思っていたのを思い出した。



デティは玄関の前で少し躊躇ったが、恐る恐る呼び鈴を鳴らした。



「ガチャッ!ギー・・・」


ゆっくりと扉が開き、昼間のお婆さんの姿が現れた。



お婆さんは、デティの顔を少し見つめ、不気味にもニコッと微笑み


「入りな。」


とゆっくり促した。

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