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 アンドレに驚くほど平和な日々が訪れた。魔物も事件もない。


これが束の間であることは分かっているが、もしかしたら決戦は起きず、アスターが戻ってくるかもしれないなどと思い込もうとし、その時はこないのではないかとどこか他人事のような気持ちにすらなっていた。


太陽は残酷にもそんな彼を置き去りにして登っては沈む。

 


 ある朝、外に出て掲示板をみると見覚えのある名前の中年を告発する旨のことが紙が張り出されていた。


その後の帰り道は覚えていない。



 人の声を避け、独りで剣を研ぎ続ける日々。


毎日、少しずつ、少しずつ。


その手は何度も内に秘めた気持ちに止められた。

 

 

 いつもと同じような朝。


何日も寝れなかったのに昨晩だけは快眠だった。


不思議と気持ちは落ち着いている。剣と杖を取り、約束の場所に向かい始めた。


 約束のとき、空には冬の訪れを知らせるに早すぎる雪が降り、アンドレを冷やし続けた。


 2人は遂に、あの時間、あの丘で再会を果たした。


しかしかつてのように交わす言葉はない。


アスターが杖をこちらに向けると、真っ直ぐに炎を放つが遅れてアンドレの出した炎に完璧に相殺された。


アスターは初めて口を開く。


「やっぱり強いな」


「……今からでも間に合う。もう止めろ」


「俺はもう犯罪者だ。もうあの頃には戻れない。もうわかるだろ」


「じゃあ、逃げればいい。もうこれ以上罪を重ねず、どこかでひっそりと――」


「アンドレ、構えろ」


 アスターは剣を取り出し一気に距離を詰める。


 向かってくるアスターはアンドレの目を見ていない。


その視線の先にはもう、この場所もこの時間もなかった。


もはや説得は不可能。


剣を握ろうとすると手とグリップの間に多くの記憶が挟まる。


それでも覚悟を決め握りしめる。


自らの正義のため、そう思いこみ他の思いは置き去りにした。


 何度も剣同士がぶつかり、弾ける。


アスターは押され、途中何度か隙をつくるも、アンドレの心の隙が覆い隠した。


 負けるわけにはいかない。それと同時に、この闘いに決着がつくのが恐ろしい。


 遂に目があった。その目はアンドレの背中を押した。


 次の瞬間、アンドレの剣はアスターの胸を貫いていた。


アスターは耳元でかすかに呟く。


「……それでいい」



 

 頭に雪が積もろうと、いつまでも手の生暖かさだけは消えてくれなかった。



 その日の夜空は雪の雲が星を隠していた。


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