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居場所


「久しぶり〜、アンドレ君。待ってたよ。」


 学校に近くなった時、先輩の声が聞こえた。


 そこには少し痩せたようにみえるトリビスと少し背の伸びたリリィの姿があった。


「すみません、いきなり押しかけてしまって」


「いいんだよ、むしろ大歓迎!今人手が足りないんだ。リリィも喜んでたしね」


「言わなくていいんです!」


 彼女は頬を膨らませて怒る。


「ははは、じゃあ早速行こうか。ようこそ、魔法学校へ」


 アンドレは足を踏み出した。





 学校で魔法などについて学び、アンドレは確実に力をつけていた。


仲間も増え、それなりに楽しい日々を過ごしていた。


それでももしここにアスターが居たら、そう考えない日はない。


そんなある日、リリィはアンドレにとある話をもちかける。


「あの、トリビス先輩が今度誕生日じゃないですか。なので、もしよかったら、贈るプレゼントを一緒に選びに行きませんか……」


 (あの人にはお世話になりっぱなしだったから良い機会だ)


 アンドレは快く承諾した。


リリィは家に帰ると了承の言葉を何度も反芻しては足をばたつかせた。




 プレゼントというものは、いざ探そうとすると意外と難しいものだ。


トリビス先輩なら何をあげても喜んでくれるとはだろが、やはりより嬉しく感じるようなものを選びたいものだ。


複数の店をひたすらにうろうろと周回してしまう。


その時、衣類売り場で目に入ったのは、暗い茶色い布のマント。


 (そういえば雨の日服が濡れて大変だっていってたな)


 すると店主が話しかけてきた。


「お、そのマントを気になってるのかい」


「はい、学校の先輩に贈ろうかなと」


「いいじゃないの。マントの贈り物には相手の健康を願う意味もあるらしいぞ」


 (最近あんまり体調よくなさそうだったからな。ぴったりじゃないか)


 アンドレはそのマントを買うことにした。


「すみません、割引までしてもらって……」


「いいってことよ!まったくいい後輩をもったな。さ、浮いた金で外でお前を待ってるにも何か贈ったらどうだ」



 店を出るとやはりリリィが居た。


「アンドレはマントにしたのですね!きっと喜んでくれますよ。私は安全と健康を祈願してお守りにしようかと思います。さて、そろそろもう帰りますか。今日は楽しかったです」


 アンドレは少し寄りたいところがある、と言うと魔道具の商店に行った。


そこでアンドレが買ったのは小さな杖だった。


そして、不思議に思っているリリィに手渡す。


「これは、リリィに。初めて会ったときのこと覚えてる?」


 リリィは驚きながら応える。


「はい、森でのことは忘れられませんよ……」


「メインの杖が使えなくなった時に、使ってくれたら嬉しいんだけど――」


 彼女の顔が真っ赤に染まっているのに気がつくと、アンドレの顔まで赤くなった。


 多分、夕焼けのせいだ。

 



 トリビスは2人のプレゼントにとても喜んだ。アンドレとリリィはその姿をみて安心した。


「2人とも本当にありがとう、嬉しいよ。でも心配させてたみたいで申し訳ないね」


 珍しく真面目な顔をして語る。


「……アンドレ、君はどんどん強くなっていってる。魔法だけじゃなく、数学や物理といった学問の方面でも専門生たちに引けをとらない意欲と成長を感じる。

君は近い将来、間違いなく僕を超える。だから先に知っておいて欲しいことがあるんだ。それは『全員を救うことはできない』ということ。選択を迫られたら自分の好きな方を選びな。もちろん責任も伴うけどね。それが強くあるということだ」


 そう言うとトリビスは薄く微笑んだ。




 その日の夜、アンドレは彼の言葉の意味について考えていると中々眠りにつけなかったため、外にいって夜風に触れることにした。



 歩いていると遠くで親子が遊んでいるのがみえた。走り回る子に対しその母は危ないから遠くに行くなよ、と軽く注意をしていた。


 (そういえば昔、俺もあんなこと言われたっけな)


『そっちの通りは危ないから』


 肩に温かい手を置かれたような気がした。


 その時ふと思い出した声は、いつも夢で聞く声の主と同じであった。


 (ああ、そういうことか。なんで忘れてたかな……)


 自分を嘲るようにくすりと笑うと、夜空を見上げた。あいかわらず、あの時と変わらぬ星が輝いていた。


 

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