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魔法



『……人を助けなさい。そうすれば――』

 

 

 目を覚ますと視界に映ったのは昨日と同じ天井であった。夢をみていたようだ。


 (またあの夢か。思い出してみれば人を助けるのなんて久々だったな。これからはもう少し気をつけないと)


 アンドレは薄く微笑んだ。


 その時、トリビスがカーテンが開いた。


 今朝みた夢について話すと、トリビスは何度か頷いたあとに話し出した。


「なるほどね。少しは君の心情原理が理解できた気がするよ」


「俺はやっぱりヒーローなんかじゃありませんでした。多分魔法学校は向いてないと思います」


「ま、いんじゃない」


 その返答にアンドレは少し驚く。


「色々難しく考えなくていいよ。それに魔法を学んだからといって沢山の人を助け続ける義務があるわけじゃない。自分にとって大切な人を、たとえ数人でも守れれば充分じゃない?誰かもわからない言葉に縛られる必要はないよ」


「そう……かもしれません」


「じゃあ、早速魔法について学びに行こう!教室は借りてあるから、早速ベッドを出発しよう!」




「では、これより授業を始めます……って、敬語はいいか」


アンドレとトリビスしかいない教室に声が響いた。アンドレは学校が始まったみたいでわくわくしていた。


「まず、魔法というのは身体の内に流れる魔力から練って物体化させて使うんだ。直接身体から魔法を出すこともできるけどこれは難しい。大抵の初学者は杖という魔法道具を通して発動させるね。ちなみに『詠唱』を使うと威力が強まって直接身体からでも魔法をだしやすくなる。ただこれは魔法を使うたびに特定の言葉を唱える必要があるから隙が生まれる」


(リリィが言っていたのはこのことだったのか)


「あとは、魔法はいくつかの属性から成り立っている。属性は人によってどれが使いやすいか異なる。まあ、基本的なことは以上だ。質問はある?」


「魔法は……俺でも使えますか」


「そのための魔法学校だ」


トリビスは続ける。


「外に出よう。早速実践だ」



 これからもきっと使うことになるから、と杖を1本貰った。

教わった魔法の出し方は直感的で時間を要したが、何とか威力の弱い炎を出すことが出来た。才能に恵まれたのだろうか。


「既に技能面、精神面の両方をみても入学に何の問題もない。昨日した質問をもう一回しよう。魔法学校にこないか」


 アンドレは少し考えたあとに口を開く。


 「俺にとっては願ってもない誘いでとても嬉しかったです。でも、俺はやっとできた故郷から離れたくないんです。そこで慎ましく暮らしていきたいと思います。勿論独学で魔法についても勉強して、大切なものを守る力も身につけます」


 「そっか。その選択を尊重するよ」




 魔法学校を離れる時、トリビスとリリィが見送ってくれた。荷馬車の後ろに乗った小さくなっていくアンドレの影にいつまでも手を振り続けていた。




 長い道のりを経てやっと家に着いた。互いの姿がみえるなり、軽い抱擁を交わした。保護の連絡はきていたようだが、やはり心配なものは心配だ。


 家に戻って一息ついたあと、アンドレはアスターに学校での出来事を語った。するとどうやら、アスターも簡単な魔法だけなら使えるらしく、教えて貰うこととなった。



 魔法の練習は思いのほか楽しかった。アンドレはめきめきと成長していき、好奇心から様々な属性について勉強するため多くの書物を読み漁った。

いつしか魔法を学ぶ理由は強くなるためだけでなく、自らの知識欲からもくるようになったのだ。


 夜、2人はいつもの丘の上に寝転がっていた。

「アンドレ、お前は本当に要領がいいな。俺なんかすぐに追い越して。……やっぱり魔法学校、行った方が良かったんじゃないか。こっちのことは気にしなくていいからさ」


「いや、いいんだ。俺は今の生活で満足してるから」


「そうか、ならいいんだけど。まあ、気が変わったらいつでも言えよ。お前は才能があるんだから、活かせる場所に行った方がいいぜ」


 聞く話によると街は最近魔物が増えており、魔法使いの育成を急いでいるらしい。


 (向こうで人を助けるのだって善いこと、だよな)


 2人は星を眺めながらくだらない話をいつまでもしていた。


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