鏡
鏡越しに見る私の姿が私は好き。
体型を維持する為の運動も、自分の美しさの為に頑張れたし、頑張る自分が好きだった。
「A子さん、スタイル良くていつも綺麗ね」
「ありがとう」
言葉を返しながら、顎が前にでて、体が震える。褒められてアガる。そんな自分も好きだった。
家に帰ると、真っ先に鏡をみる。
少しクマが見える…少し顎を上げて。
光の当たり具合を変えると、クマは目立たなくなった。
あらためて、見つめる。
顎を突き出したときの頬のライン、唇に少し力をいれたときの形、瞼を緩めたときのマツ毛が上を向く形。
鏡に映る自分に見惚れた。
A子、これ…覚えて。
もっと、もっと…。
A子は鏡アプリをダウロードした。
以前はそうでもなかったが、最近のアプリは優秀だ。
メイクや髪型の提案や、疑似的にそれらを再現してくれる。
これでもっと、もっと。
A子は興奮した。そんな自分も大好きだった。
「A子さん、スタイル良くていつも綺麗ね」
「ありがとう」
言葉を返しながら、顎を斜めに上げる。
A子は思う。最近周りの反応がお世辞ぽくなっている。
人目につかない場所に行き、すぐにアプリを開いてチェックする。
今の私の最適な表情は…?
自分で見ても良い感じにキマっている。
大丈夫大丈夫。
その後、A子を褒め讃える声は聞こえなくなった。




