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第10話 覚悟の裏で

※まえがき

今回はホロン視点です。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「んふふ♡♡ ハクきゅんってば、どんどん私を好きになってる」


 ハクきゅんからの通話が終わり、私は全身を駆け巡る多幸感に濡れ濡れになっていた。

 二次元の推しと同じ世界に生きて、その覇道の手助けができている。

 これほどの幸福はない。あ〜、死んでよかった〜。


「あ〜あ、どうにかしてハクきゅんの復讐が終わる前にハクきゅんの子供を妊娠しないとな〜。でもハクきゅん、あれ以来抱いてくれないしな〜」


 おや?

 玄関扉の開く音。

 この相川の部屋じゃない。隣の、ハクきゅんの家。

 ということは、ミコちゃんか。


 こんな深夜に……。


 もちろん、尾行する。

 ミコちゃんに何かあったら、ハクきゅんが悲しむしね。


 コートを羽織ったミコちゃんの後ろをついていく。

 うつむいて、何度も白い息を吐いている。


 最寄りのコンビニに立ち寄ると、何か買うわけでもなく、駐車場の車止めのパイプに座った。

 スマホをいじっているけど……ふーん、たぶんコンビニの無料Wi-Fiを利用しているのかな。


 しばらくスマホに熱中していると、一台のパトカーがやってきた。

 二名の警察官が降りてきて、ミコちゃんに近寄る。


 おそらくは補導。

 偶然発見して声をかけたのか、コンビニの店員が通報したのかは不明だけど。


「君いくつ。なにしているのこんな時間に」


「あ、いや、あの……」


「誰かと一緒? ひとり?」


「えっと……」


 困った様子。

 きっとパニックだろう。

 警察に声をかけられるなんてはじめてだろうし、なによりハクきゅんや親に連絡されたらどうしようと不安に感じているに違いない。


 どうするか、助けてやろうか。

 なんて考えていると、


「すんません、その子俺の妹なんす」


 コンビニから出てきた優男が、間に割って入った。

 ミコちゃんが困惑している。

 あは〜、知らない男が助けてくれたって感じかな。


「夜食買うのに無理やりついてきて、んで俺、さっきまでウンコしてたもんで、ここで待ってて貰ったんです」


「そうなの? 危ないでしょこんな時間に」


「マジすんません、気をつけます」


 警察が去っていく。

 パトカーに乗り込んだところで、ミコちゃんが男に頭を下げた。


「あ、ありがとうございました」


「いいよ。俺も君くらいの歳のころは、よく家を抜け出して夜遊びしてた。……6年生?」


「え、一応中3です」


「あはは、ごめんごめん。じゃあ受験のストレスで外出したわけだ」


「というか、眠れなくて」


 ミコちゃんが視線を落とす。

 男はコンビニ袋から缶コーヒーを取り出して、飲んだ。


 えらく馴れ馴れしい。

 なのにミコちゃんがあまり警戒しないのは、助けてくれたからだろうし、単に彼がイケメンだからなのかもしれない。


 ハクきゅんの方がバリバリのガチメロ顔なんにゃけど♡♡


「最近、私の周りが変なんです。やけにリアリティのある悪夢を見て、お母さんの様子は変だし、兄さんも怖い雰囲気していますし、クラスメイトも、なんか、頭おかしくなっちゃったみたいで」


「頭おかしい?」


 ミコちゃんが男にスマホを見せた。


「うわ、なにこれ。猿みたい」


「こんな感じで学校に来て、すぐに先生が親を呼んで家に帰ったんですけど、動画がもう拡散されちゃってるみたいで。私、家にWi-Fiがなくて、だからここでSNSを見てたんです。どんなふうに広まってるのか、知りたくて」


「へー。この子は……どういう子だったの?」


「イジワルな人たちでした。でも、なんだか、ちょっとかわいそうで、元に戻っても、元の生活には戻れないんだろうなって」


「優しいね。友達?」


「いえ、別に……」


 あぁ、今朝ハクきゅんが人生を終わらせたガキ共の話しか。

 変なの。

 せっかくハクきゅんが懲らしめてやったんだから、喜べばいいのに。


「……つかぬことを尋ねるけどさ、君、鬼山第二中の子?」


「はい」


「まさか……真月ミコさん?」


「え、そうですけど。なんで……」


「ん? いや、君のお父さんと縁があってさ」


「そう、なんですか」


「うん。じゃあ、俺はこれで」


「あ、一応、お名前を伺ってもよろしいですか?」


「名前か……みんなからは、コンドウって呼ばれてる」


 ミコちゃんがコンドウと別れる。

 さてと、私も相川の家に戻ろうかな。

 んふふ、ハクきゅん。なーんか面白くなってきたよ。


 本来のゲームじゃ決して見れないルートにたどり着いた感じ。

 ちょっと、興奮してきた♡♡

 でも大丈夫。心配しなくて平気だからね。


 ハクきゅんは、私が必ず幸せにしてあげるから。

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