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聖なる乙女の××  作者: 笠原久
第4章 聖なる乙女の覇者
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第16話 最高の美少女になりたい異世界召喚ガール

「心にもないお世辞を言うべきではないですね。実際、顔の作りから体型、肌や髪のきめ細やかさとか、改善すべき点はたくさんあります。安心してください。私が責任を持って最高の美少女に仕上げます」


「さ、最高の美少女……!」


 凛ちゃんがごくりと生唾を飲み込んだ。


「あ、あの! おっぱいも大きくなりますか?」


「任せてください。めっちゃ大きくします。いっそ比率十五対七にしちゃいましょうか」


「それはでかすぎだろ!」


 シスルの指摘に、デイジーは胸を誇示するように見せつけた。


「私とお嬢さまも大きくしますよ。最近、もう少し大きくてもいいのでは? と思い始めてきたところなので」


「感覚マヒしてやがる! つーか人間じゃなくなるって言われて気にするとこそこぉ!?」


 凛ちゃんは恥ずかしそうに目を泳がせた。


「あの、違うんです……! だ、だってクラスの子たちが『凛ちゃんのお母さん、胸ぺったんこだから凛ちゃんも将来そうなりそうだよね』ってひそひそ話してるのが聞こえちゃって……! 正直ショックで!」


 凛ちゃんは目に涙を浮かべた。


「っていうか、『あんまりかわいくないから勉強がんばってるんじゃない?』とか言われたのが……!」


「心配しなくても私が大きくしますし、誰もが羨む超絶美少女に仕上げます」


「はい! お願いします!」


 いいのかこれ……とシスルが唖然とした顔でぼやいた。私は明るく言った。


「いやぁ、順調ね。まったくもって!」


「妙に上機嫌だな?」


 シスルが怪訝そうに言った。


「だって凛ちゃんは『乙女の学園』という単語に心当たりがなかったんだもの!」


 私は親指を立てた。


「考えてもみて? 魔王討伐に行かされて、それも無事に終わったと思ったら、『聖なる乙女の覇者』なんてのが湧いて出て、そのあと異世界召喚よ、異世界召喚! これだけ色々なことが起きたんだから、さすがにもうこれで打ち止めでしょ! 絶対!」


「そうかぁ?」


 シスルは疑わしげな顔で私を見た。


「なに言ってるのよ! 断言するわ! これ以上の波瀾はない! と!」


 あった。


 それはプロートス大陸に帰還したとき、発生した。


 私たちの……というか、マーガレット閣下の侵攻は順調だった。デイジーによる死者の蘇生によって、聖騎士たちは魔王軍を不死身の軍勢と見なしたようだ。


 さらにマーガレット閣下は、投降すれば聖騎士の蘇生も(むろん、凛ちゃんの例から一〇〇パーセントうまく行くとは限らない。そのことも伝えた上でだが)行なうと発表した。


 これで叛乱軍もノックアウトされたらしい。


 彼女たちも、多くの戦友を失っていたのだ。できれば生き返らせたいと、そう思っていたようで、意外なほどあっさりと引き下がった。


 仲間を失って、後戻りできなくなっていたのかもしれない。


 最初こそ疑われていた。だが、実際にデイジーが蘇生を行ない、亡くなった聖騎士たちを生き返らせると、彼女たちは涙を流して感謝の言葉を述べた。


 そして、堰を切ったように続々と聖騎士たちが投降してきた。


 叛乱が終われば、メソン大陸は掌握したも同然だった。なにせメソン大陸は、すべてが聖王国の支配下だ。いや、竜の巣や魔族の隠れ里をはじめとして、いくつか勢力圏にない地域も存在していた。


 だが、竜たちは驚くほど従順で、私たちが聖都を占拠したと知ると、頭を垂れて祝いの言葉と一緒にたくさんの貢物を運んできた。頼んでもいないのに。


 竜の長老は、私たちに全面的に協力する、と謁見の間で明言した。


 魔族の隠れ里のほうは、そもそも私たちが聖王国を下したと知らなかった。


 ただ、出入りの商人がなかなか来ないので、何かあったことは察していたらしい。ウェデリアが里帰りついでに近況報告をすると、たいそう喜んだそうだ。


 自分たちの里から、皇帝の側近が出たということで。


 すべては順風満帆に進んでいた。プロートス大陸だって、最初のほうはなにも問題なかったのだ。私たちはまず港町シータを押さえ、小王国のエータを手に入れ、抵抗するガンマ帝国軍を易々と打ち破って、大陸の半分を支配した。


 怒涛の快進撃だった。


 いや、実際はアルファ王国も我々のものなのだ。もはや世界のほとんどは、私たちが手に入れたも同然だった。

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