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聖なる乙女の××  作者: 笠原久
第4章 聖なる乙女の覇者
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第4話 ナレーションで死ぬ女王陛下

「待って! まだ敵対するとは限らないじゃない! というか一足飛びにここまで来たから、聖騎士たちはまだメソン大陸にいるはず! それにヒュスタトン大陸だって、ほとんど魔王軍の支配下でしょ!?」


「その状態で魔王軍を降伏させたとなると……」


 リリーが顎に手を置きながら言った。


「ヒュスタトン大陸を支配下に置かれた、と誤解されるんじゃないかな? 聖王国はわたしたちを敵視していたし、好意的な見方はしないと思うよ」


「だからって、いきなり攻撃されるのは……!」


「落ち着いてください、お嬢さま。まずは、話を聞きましょう」


 デイジーは女王に向き直った。


「先ほど、難易度をのぞけばオーソドックスだとおっしゃっていましたが、難しいゲームなんですか?」


「いいや。縛りプレイをしないかぎり、超がつくほど簡単な……というより、縛りプレイをして、ようやく難易度が普通になるな」


「……どういう意味です?」


「開発者が語っていたんだが、そもそも主人公勢は強大な力を持っているんだ。魔王を真っ向勝負で倒すほどのな。当然、普通の人間が対抗できるはずもない……。つまり、一方的に蹂躙されて当然というわけだ」


 私は首をかしげた。女王は言った。


「ゲーム本篇もそれにならって、難易度ノーマルだと無双ゲー、ハードモードでベリーイージー、ルナティックでようやくイージーだ。はっきり言って、縛りなしだと負けるのが難しい。というか難易度ノーマルだと、どうやったらゲームオーバーにできるのか、わからないレベルだと前世の『私』は評している」


「それ、ゲームとしてどうなんだ……?」


 シスルが呆れた様子で言った。女王は神妙にうなずいた。


「だから、難易度調整も初期メンバーなしでやったらしいな。初期メンバーはスキルも専用装備も超強力だ。初期ステータスもむちゃくちゃ高いし、レベルアップでパラメータもがんがん上がる! ヌルゲーを通り越して、完全に敵を蹂躙するゲームだ!」


 女王は、ぐっと右の拳を握りしめて力説した。


「しかし! さすがにそれはどうか? という声が開発側からも上がった!」


「そりゃそうだろ……」


 シスルが、ため息まじりに口をはさんだ。


「設定とゲームの辻褄を合わせる、っつっても限度があるぜ」


「うむ! そこで初期メンバーしかいない序章はともかく、第一章からは初期メンバーを外してプレイできるようになっている!」


「え? 全員外せるんですか?」


 私が驚いて訊いた。女王は自慢げにうなずいた。


「もちろんだ! 第一章開始前に四人加入するし、マップ攻略中にさらに味方が駆けつける仕様だ! 正直、普通にSRPGとして遊ぶ場合は、初期メンバーを外すのがセオリーと言われていたな」


 女王はうなずきながら語った。


「初期メンバーさえいなければ、難易度ノーマルはノーマルに、ハードもハードモードに、ルナティックもルナティックになると!」


「ゲームどおりなら、聖騎士や諸王国軍は普通にどうにかできそうですね」


 デイジーがそう言うと、シスルが呆れ声を上げた。


「そこは疑問に思うところじゃねぇだろ……」


「確かに。聖王国の戦いぶりを見るかぎり、今のわたしたちが苦戦する様子は思い浮かばないね」


 リリーは微苦笑した。


「いや、そもそも魔王軍を追い払えない程度の戦力だとわかっているわけだし」


「でも、世界征服するなら、ガンマ帝国とかも関わってくるんでしょ?」


 私が言った。


「大丈夫なの? っていうか、女王陛下が死ぬってことはそれなりに激戦なんじゃ――」


「そういえば、陛下はなんで死ぬんです?」


 女王は小さく息をつき、目を閉じた。


「ナレーション死だ」


「はい?」


 思わず、私たちは全員が聞き返していた。


「ナレーション死だ」


 女王は繰り返した。


「どういう意味ですか、それ……」


 私が半ば呆然として訊くと、女王は目を見開いて叫んだ。


「ナレーションで死ぬんだ、雑に! 立ち絵どころか顔グラすらない! ヒュスタトン大陸とメソン大陸を平定したあと、ガンマ帝国がプロートス大陸全土を支配したと知らされる! そして、故郷の危機に主人公たちが立ち上がる!」


 そこまで言ってから、女王は子供のように地団駄を踏んだ。


「で、ナレーションでしれっと『アルファ王国女王マーガレット・ハイアシンスも命を落とし』と語られるんだよ! もちろん、実は生きてたとか、隠しキャラとしての参入もない! 本当に雑に死ぬ!」


「それで、回避しようと頑張ってたんですか?」


「そうだ! 死ぬのも嫌だが、死因すら不明のままだぞ、ゲームの私は! さすがに許容範囲外だ!」


 女王は鼻息荒く叫んだ。

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