第12話 気づかれずに写真を撮り、記事を書く。これぞプロの技
どこで撮られたのか、写真まで載っていた。
関連記事を見ると、私たちの経歴を紹介するものやラオカに関する短い評伝、武闘会での出来事などが書かれていた。もちろん、すべて写真付きだ。
「なにこれ……」
私のつぶやきに、リリーが吐息まじりに言った。
「どうやら今日だけじゃなくて、何日も前から新聞に載っていた様子だよ。ずいぶん話題になっているみたいだ」
「微妙に情報間違ってますね。私が奥伝持ちとか、シスルさんが大魔術まで使えることになってますよ」
「訂正するやつ誰もいねぇのかよ……。つーか直接聞きに来りゃいいだろうが」
シスルが呆れた顔で言った。猫耳がぺたんと下がっている。
「なんか見張られてるみたいね。あまりいい気分じゃないわ」
私の言葉に、デイジーがからかうように口をはさんだ。
「みたい、じゃなくて実際に見張られてるんでしょう。たぶん私たちの行動、全部新聞に書かれると思いますよ。邪推も込みで」
彼女はいたずらを思いついた子供のように笑みを浮かべて、わざとらしく周囲に目を向けた。まわりの人間は、私たちのことなど意に介さず、足早に去っていく。
「町に寄るのは最小限にしたほうがいいのかしらね。どこに新聞記者がいるか、わかったものじゃないわ」
「一般人のタレコミも相当あると思うよ」
リリーが吐息混じりにぼやいた。
「昨日、通信魔法を使いに奥に行った人もそうだったんじゃないかな、きっと。もしくは慌てて出て行った人」
もしくは両方? と彼女は首をかしげる。
「さっさと用事を済ませて、出て行っちまえばいいんじゃねぇの?」
シスルはさほど気にしていないふうだ。
「あたしらの足なら、ちょっと寄り道してもすぐに出ていけるだろ? とっとと行っちまおうぜ、もう。とりあえずデルタとイプシロンだっけ?」
「仕方ないですね」
デイジーが先に進むことを促すように高く飛び上がった。
「疲れるから長距離移動とかしたくないんですが、やむを得ません。久々に四十八時間耐久マラソンと行きましょうか」
「そうね。飲まず食わずで移動し続ければ行けそうね」
デルタは南下した先にあるが、イプシロンは帝都の北にあるのだった。
一〇〇〇キロほどの道のりを一気に下り、その後、七〇〇〇キロも北上せねばならない。移動だけでも一苦労だ。
「いや、途中休憩くらいはしようぜ? つーかあたしは絶対にイヤだぞ?」
シスルが心底うんざりした様子で言った。