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聖なる乙女の××  作者: 笠原久
第3章 聖なる乙女の英雄
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第11話 ガンマ帝国新聞、一面記事

 ――――――――――

『プリムローズ一行に軍事行動を許可 安全に懸念』


 四月二十五日、帝国公報は「プリムローズ・フリティラリア公爵令嬢一行に、国内での限定的な軍事行動許可証を与えた」と発表した。


 帝国公報によると、昨年十月の時点でアルファ王国から魔王討伐にプリムローズ一行を派兵する打診があり、今月二十日に正式な通達があったという。


 帝国公報は「許可証はあくまでも限定的なものであり、自由に軍事活動ができるわけではない」としているが、帝国内では不安の声が上がっている。


 特に懸念されているのが天変地異だ。


 プリムローズ・フリティラリア公爵令嬢と、デイジー・ロータス子爵令嬢は、伝説の神竜ラオカミツハと交戦した際、天変地異を引き起こした過去があり、帝国臣民は不安を募らせている。


 記録によれば、この戦いで山が二つほど破壊され、大地震によって周辺家屋が全壊。影響は六〇〇キロ離れた王都にまで及び、気温が四十度を超えたという。


 また、交戦の際にガンマ帝国とアルファ王国の国境線であったバルテン山脈の一部が破壊され、周辺地域にも多大な被害を与えている。


 現在はバルテン街道として知られる道も、この戦いの影響でできたものだ。


 工事を担当した現場監督は、当時を振り返ってこう語る。「やったのは舗装と、道をならすくらいだね。山自体がほとんど削られちゃってたから」


 バルテン山脈は、もともと標高が三〇〇〇メートルを超える山々だった。しかし、ほとんど平らになるほどのすさまじい攻撃を受けていた。


 周辺住民のアンジーさん(仮名)によると、衝撃で家が吹っ飛び、揺れで立っていられなかったという。「怖かったですね。この世の終わりかと思いました」と彼女は語る。


 一方、専門家は連日の加熱する報道に警鐘を鳴らしている。


 元ガンマ帝国外交官で、アルファ王国への赴任経験もあるジョージ・リースマン氏は「彼女たちは獣ではない。過剰反応だ」と述べる。


 プリムローズ一行は、あくまでも魔王討伐のために結成されたチームであり、当面の目標は聖王国だと氏は語る。


 リースマン氏によれば、「聖地パイで聖剣を入手し、魔界に攻め込むのが彼女たちの使命」なのであって、「ガンマ帝国は、乗り換えのために訪れた接続駅のようなもの」だという。


 また、魔界研究の第一人者として知られるリチャード・スコット教授(ガンマ帝国大学)も、彼女たちはすぐに出国するだろうとの見解を示している。


 ただし、教授は聖剣の入手に関して懐疑的な目を向けている。


 教授によれば、プリムローズ一行はすでに魔王を滅ぼす力を持っており、わざわざ聖剣を手にする必要はないという。「彼女たちならば魔界に直行し、魔王を倒すこともできるはずです」と教授は述べる。


 しかしながら、彼女たちが早々にガンマ帝国を去るかどうかは不明だ。


 通過するだけなら西に向かうはずだが、彼女たちは昨晩遅く、帝都から一八〇〇キロ離れたリナードタウンに突如姿を現した。


 夕刻の時点で、彼女たちは皇帝と会談していたはずである。


 ところが、その日のうちに南に移動していた。方角から見ても、すぐに帝国から出るつもりとは思えず、彼女たちの思惑は不明である。


 いずれにせよ、今後の動向が注目される(関連記事3・4・5・11・12面)。

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