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聖なる乙女の××  作者: 笠原久
第3章 聖なる乙女の英雄
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第6話 皇帝陛下直々の招待

「アルファ王国とか聖王国とかは十九世紀前半のヨーロッパふうで、最後のヒュスタトン大陸は幕末から明治時代初期の日本っぽいイメージなんですよね、十九世紀後半の。西部劇と同じくらいの年代です」


「そういや明治時代って十九世紀だから西部劇とかぶってんのか……」


「明治三十四年から二十世紀、それ以前は十九世紀ですね。確か有名なOK牧場の決闘が明治十四年です」


 リリーは道行く馬に目をやった。


「馬に補助魔法をかけて走力を強化するとか、奇妙なことをやってるんだっけ?」


「そうらしいですね。現実だと、人間の身体能力が高いから馬を使う意味がないんで、いろいろ品種改良したり魔法で強化したり、あれこれ工夫しているようです。リボルバーやライフルなんかも、より強い威力が出せるよう弾丸に魔力を込めて撃てるとか」


 デイジーはまわりに目を向ける。リリーが首をかしげた。


「下級魔術のほうが強力そうだし、誰でも練習すれば使えるんだから、あえて銃を使う意味はないような気がするんだけど」


「それがそうでもないんですよ」


 デイジーはすいと飛行してリリーのそばまで飛んだ。


「銃の特徴は、無属性魔術と自動追尾にあります。知っての通り、無属性魔術の使い手は稀少です。しかし、銃撃は無属性魔術と同じ効果を擬似的に出せるようなんです。しかも、通常の魔術と違って自動追尾機能つきです」


「テキトーに狙いつけても当たんのか」


 シスルの言葉に、デイジーはうなずいた。


「威力の点でも、意外と申し分ないですよ。リボルバーは下級魔術並みですが、ライフルは中級魔術、大砲は上級魔術と同じくらいの破壊力が出せるらしいですから」


「え? マジで? 思ったよりヤバくね?」


 シスルが驚きの表情を浮かべた。猫耳としっぽがピンと立っている。


「そのかわり、弾薬生成が難しいらしいので、特に大砲クラスはなかなか揃えられないそうですけどね」


「でも、時間をかければ量産は可能だろう?」


 リリーが真剣な顔でちらりと周囲を見回した。リボルバーはもちろん、ライフルを持っている人間もちらほら見受けられる。


「帝国が大陸全土を狙っているという話は本当らしいね」


「でも大魔術までは行かねぇんだろ? それに自動追尾するっつっても、皆伝や奥伝持ってるようなヤツなら、弾丸ごと叩き落とされて終わりじゃねぇか?」


「確かにそうだけれど、数の暴力で攻められたらさすがにまずいよ。王国騎士団でも奥伝以上の使い手は隊長格に限られるはずだし、上級魔術も……」


「いや、仮にアルファ王国相手にするなら、こいつらと戦うんだろ?」


 シスルが私とデイジーに目を向けた。


「数の暴力っつっても限界があるだろ? 下手したら国ごと消し飛ばされるじゃん……」


「あー……まぁ、それは、そうだね……」


 そのとき、馬蹄の音が響いた。


 土煙を舞い上がらせて、道の向こうから馬の一団がやってくる。全員、一直線に私たちに向かって駆けてきた。五メートルほどの距離を置いて、彼女たちは停まった。


 それから、リーダー格と思しい女が馬から降りた。手綱を握ったまま、馬を引いて近づいてくる。帝国保安官だと自己紹介をしてから、彼女は言った。


「プリムローズ・フリティラリアさま、デイジー・ロータスさまとお見受けします。皇帝陛下がお呼びです。どうかご同行ください」


 私たちは顔を見合わせた。が、すぐに了承してついて行った。


 皇帝に招待されて、これといった理由もなく断ることはできない。私たちは女王陛下の勅命で動いているのだ。他国で問題を起こすわけにはいかなかった。


「そういえば、交易都市ベータでは挨拶していなかったわね……」


 私はぼやいた。他国で活動する以上、その国に活動内容の説明と許可申請をしておくのが礼儀だった。だが、私はあの都市国家でやるべきことをやっていない。


「今さら後悔しても仕方ありませんよ。それに、私たちはベータではほとんどまともに活動していませんでしたから、言いわけはできます」


 デイジーが私のそばまで来て、なぐさめるように言った。


 私たちは保安官たちに先導されて、駅まで向かった。駅は簡素な建物だった。石段を登った先にベンチと、町の名が書かれた看板と屋根があった。日本の田舎の駅のようだった。

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