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聖なる乙女の××  作者: 笠原久
第3章 聖なる乙女の英雄
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第5話 西部劇な世界

 私たちはアルファ街道に戻った。交易都市ベータに行くときに通った道だ。


 デイジーによれば、最初のボスはここにいるらしい。念のため、撃破しておこうという話になった。だが、すでに街道の魔獣は討伐されていた。


 ただ、誰が倒したのかは不明らしく、交易都市ベータや冒険者ギルドで話題になっていた。


 が、私たちはあっさり正体を知った。王国が派遣した諜報部隊が始末したらしい。マットソン商会の商人から聞いたことだ。


 彼女たちはつかず離れず、私たちの周囲で動きまわっているそうだ。かなりの手練らしく、ときどき誰かに見られている視線を感じるものの、どこにいるのかはまったくわからなかった。


 ともかく、街道のほうは問題なかったので、私たちはガンマ帝国の帝都ガンマへ向かった。交易都市ベータを西に進むと、ベータ山脈がある。大きく迂回するルートもあるのだが、私たちは山越えをした。


 デイジーいわく、山を越えるのがゲームのルートだそうだ。途中、適当に魔獣や魔物を退治しながら進んだ。


 もっとも、相手が逃げまわるので、襲ってくる敵を返り討ちにすることはできなかった。なにしろ私たちが近づくと、魔物も魔獣もすぐさま逃走するのだ。


 仕方なく、私たちは逃げる魔獣や魔物を追いかけて始末した。時間はさほどかからなかった。


 山の頂上からは、ガンマ帝国の領土が見渡せた。といっても、雲海が広がっていて、一望できたわけではない。雲の切れ間から、広大な平原や木立が見えただけだ。


 私たちは早々に山を降りると、ガンマ帝国名物の駅に向かった。


 ガンマ帝国は平野や荒野の多い土地だった。もちろん山も谷も森もあるが、それ以上に多いのが草原であり、荒れた土地だ。砂漠地帯すらある。プロートス大陸で一番大きな国だが、もっとも特徴的なのは独特の文化だ。


 西部劇の世界である。


「おおー……マジにカウボーイがいる。汽車まで」


 町に着いて早々、シスルはきょろきょろと辺りを見回した。うれしそうにしっぽが揺れ動いている。デイジーがたしなめた。


「完全に田舎者のリアクションじゃないですか。恥ずかしいからやめてください」


「んだよ。別にいいじゃねぇか。あたし、本物のカウボーイとか見たことねぇんだよ」


「私だって――というか、前世含めても見たことある人なんていないでしょう? それと、カウボーイじゃなくてカウガールじゃないですかね、性別的に」


「細かいこと気にすんなよ。ってか、あたしの反応もわかるだろ?」


「周りの目もあるんですから自重してください」


「ほら、シスル」


 とリリーが口をはさんだ。


「あんまりじろじろ見ると迷惑だろうから」


 シスルは不満そうだったが、得心したらしく物珍しげに周囲を見るのをやめた。といっても、まわりを歩く人々はそんな様子など気にしていないふうだった。


 私たちには目もくれず、足早に歩き去っていく。この国の人たちにとって、シスルのような反応は「いつものこと」なのかもしれない。


 私はあらためて、町の様子を見渡した。


 アルファ王国とはまったく違う風景だった。道は舗装されておらず、乾いた土がむき出しになっていて、そこを馬車や馬に乗った人々が駆けていく。もちろん徒歩の住人もいた。


 カウボーイハットをかぶり、拍車つきのブーツを履いて、ガンベルトを身につけている。ホルスターには拳銃が収まっていた。


 西部劇との違いは、男女を問わずカウボーイスタイルの者が多いことだろうか。人間族はもちろん、妖精族や獣人族、鬼人族など、みんな西部劇に出てきそうな恰好をしていた。


「この辺は『英雄』と同じですね」


 デイジーが飛んで移動しながら言った。


「十九世紀モチーフなので、ガンマ帝国は西部劇っぽいデザインになってました」


「西部劇スタイルなのってガンマ帝国だけなんだろ?」


 シスルの問いに、デイジーはうなずいた。

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