第11話 クレイジーバトルジャンキーとは組みたくない、と拒否される
「ああ、なるほど。それであらかじめ仲のいい人同士で組んで、自分たちのグループに男を迎え入れる方式をとるわけだ」
リリーが言った。デイジーがココアを飲みながらうなずく。
「単独で動くより、チームで動いたほうが安全です。それに殿方を見つける場合だって、一人でやるより仲間と協力して探したほうが、より優秀な個体を見つけやすいでしょう?」
「へー、そういうことだったんだ」
私が感心して言うと、シスルが胡散臭そうな視線を向けてきた。
「おめーはなんで知らねぇんだよ……」
「いや、だって、難しい理窟とか考えなかったし、それに」
と私はデイジーを抱き寄せた。
「私はデイジーとワンセットだったら、ほかのことは気にしないもの」
「プリムはもう少し考えたほうがいいと思うぜ……。もうなんなんだよこの世界……。なんか、なまじ地球の知識があるせいで違和感が――」
「どちらかというと、感性の問題な気がしますね。人格は引き継がれてなくても、地球時代の感覚が残ってるんですかね、シスルさんの場合」
「どっちにせよ解決につながらねぇ……!」
シスルは疲れたように言って、テーブルに突っ伏した。
「ところでさ」
と私は言った。
「シスルはもっと胸、大きくするつもりはないの? 個人的にバストはウエストの二倍の数値が至高だと私は思ってるのよね。シスルの場合、トップバスト以外は完璧で、その点はリリーと違うんだけど、ただね、さすがにバスト、ウエスト、ヒップの比率が十一対七対十二はちょっと胸が小さすぎるんじゃないかと――」
勢いよくシスルは顔を上げた。しっぽの毛が逆立っていた。
「あたしはこれくらいでいいんだよ! ってか地球基準ならEカップなんだから普通にあるだろ!? この世界が全体的にデカすぎるだけで! あたしも向こうの世界だったら巨乳枠だよ! つーか急に何を言ってんだお前!?」
「リリーもそうだけど、二人とも体型が私の好みから微妙に外れてるから。主に胸の大きさという点で」
「なんでてめーの好みに合わせなきゃいけねぇんだよ!? つかな、初めて会ったときから思ってたけど、お前それ、胸ふくらませ過ぎじゃねーの!? なんだそのボールがくっついてるみてーなデカパイは! 大きすぎて二の腕見えてねーぞ、正面から見ると! 十四対七ってなんだよ、その比率は! でかい奴でも普通は十三対七だろうが!」
シスルは私を指さして叫んだ。私は胸を張って言った。
「大きい胸は最高でしょ? それに統一しておいたほうがいいと思うのよね。まぁアクセントとして、小さめの人がひとりいるのもありかもしれないけど」
シスルがいぶかしげな顔で固まった。
「いや、ちょっと待て……なんの話だ?」
「これから組んで、一緒に素敵な殿方を探すわけだから、方針の統一は必要かなって」
「なんでお前らみたいなクレイジーバトルジャンキーと組まなきゃならねぇんだよ!?」
「クレイジーバトルジャンキーって、バトル漫画の能力っぽいですね」
デイジーの言葉に私は笑った。
「ああ、わかるわ。なんか『イカれた戦闘狂』って書いて『クレイジーバトルジャンキー』ってルビが振ってありそう」
「うっせーな! おめーらと組んでたら一生結婚とかできねーよ! つーか妙に胸でけーなと思ってたらお前の趣味かよ!?」
「私も巨乳というか、爆乳派ですけどね」
デイジーが誇らしげに言った。
「大きい胸はいいですよ。つらい修行の癒しになってくれます」
「勝手にやってろや! とにかく、あたしは組まねぇ! リリーもそう思うだろ!?」
「いや……わたしはありだと思う」
シスルは驚愕の表情でリリーを見た。
「同じ前世の知識持ちだし、余計な気遣いとかしなくてよさそうだから、わたしはいいと思うよ」
シスルは歯ぎしりした。しっぽだけでなく、猫の耳まで逆立っていた。
「勝手にしろよ! あたしは別の奴らと組むからな!」
そう言って、シスルは出て行った。そして翌日に戻ってきて、テーブルで突っ伏した。