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聖なる乙女の××  作者: 笠原久
第1章 聖なる乙女の学園
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第16話 神竜の王都観光

 ラオカは一週間ほど王都に滞在した。


 彼女の逗留先は我が家になった。というより、ラオカが私たちと一緒にいることを望んだため、必然的にフリティラリア家の屋敷で過ごすことになったのだ。


 屋敷の人間は緊張した面持ちだった。やはりドラゴン、それも伝説の神竜が相手となると、普段どおりに振る舞うのは難しいらしい。


 もっとも、ラオカは私たちにべったりだったから、屋敷の人間との接触は少なかったが。


 彼女は王都を観光し、物珍しげにカフェやレストランや劇場、公園、図書館、美術館、闘技場などを見物した。


 ラオカが帰るまでの一週間、私たちは修行を休み、ひたすら王都を案内した。


 一日目はフリティラリア家の屋敷に泊まったが、二日目からはホテルを利用した。同じ宿ではなく、毎日宿泊先を変えた。


 当人いわく、興味がある、とのことだった。


 安宿から高級ホテルまで、彼女は帰るまでに六つの宿を制覇した。


 二日目と三日目は王都有数の高級ホテルに泊まった。見晴らしのいいスイートルームだ。ラオカは窓から王都の町並みを一望し、興味深そうに広い部屋を見回した。


 やわらかいソファやベッドにさわったり、座ったり、寝転がったりした。


 ひとしきり部屋を堪能すると、ラオカはホテル内にあるプールでひと泳ぎした。それから一階にあるカフェに行ってお茶と軽食を楽しみ、最上階のバーに行って酒を飲んだ。


 食事はすべてホテル内のレストラン、あるいはルームサービスで食べた。それ以外の時間は劇場に行って、流行りの舞台や音楽を楽しんでいた。


 四日目と五日目は安宿に泊まった。さすがに大部屋で雑魚寝をするような宿ではないが、昨日までの高級ホテルとは似ても似つかない宿だ。


 部屋はせまく、粗末なベッドが置かれてあるだけだった。テーブルやイスすらなく、まさに寝るためだけの部屋だ。棚もない。荷物は床に置けと言わんばかりだった。


 ラオカは気にしていないらしく、むしろ窮屈な部屋を面白がっている様子だった。洗ってはあるが、だいぶくたびれたシーツや毛布を愉快そうにさわって、ほほをくっつけていた。


 実はラオカが安宿に泊まりたがっていると知って、王宮からわざわざ宰相が出向いてきていた。だが、ラオカの様子を見てため息をつき、彼は私に向かってこう言った。


「余計な心配だったようです。お騒がせして申しわけありませんでした」


 周囲の注目を集めた件について、だった。


 一国の宰相が来るというので、安宿には野次馬が集まっていた。


 もっとも、私やデイジーの姿を見ると、彼らはそそくさと立ち去ったので、今はどこにも喧騒はない。静かなものだった。


「ラオカミツハさまに関しては、あなた方に一任いたします。費用は王宮が負担しますゆえ、できるだけ望みどおりに」


 それだけ言うと、彼は護衛の騎士(私たちを取り調べた、例の女ふたり)を引き連れて帰っていった。ラオカは宰相のことはいっさい気にかけず、図書館に行きたいと言った。


 連れて行くと、彼女は本棚でできた壁に興奮していた。壁一面に本が並べられ、さらに部屋を仕切るかのように本棚が立ち並んでいる。


 ラオカは何冊か手に取ると、すぐさまテーブルに本を置いた。イスに座って一日中、本を読みふけった。食事は近場のカフェやレストランを利用した。


 夜は安宿で寝たが、それ以外はずっと図書館にこもりきりだった。


 アルファ王国や世界の通史を書いた本から、魔法の概説書、有名な古典文学から最近の人気作まで、ラオカは実に楽しそうに読んでいた。


 六日目と七日目はそれなりの宿を選んだ。一泊二食付きで、大浴場がある宿だ。温泉ではないが、魔法で擬似的に温泉と同じ効果のある湯を作ったホテルだ。


 ラオカは目当ての大浴場に入った。楽しそうに体を洗い、湯船に浸かって気持ちよさそうな声を上げていた。


 ひとしきり風呂を堪能したら、今度は公園をのんびりと散歩し、美術館に立ち寄って絵画や彫刻を見た。昼食を取ってから闘技場に行き、剣闘士たちの戦いぶりを見物した。


 たまに観客席からの乱入者がいて、盛り上がる。


「お主らは行かんのか?」


 ラオカが茶化すように言った。

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