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時ヲ直スト言フ事

「夢」とは睡眠中あたかも現実のように感じる事柄のことである。

これから語ってゆく物語はあくまで私の妄想。夢でありあなた方の感じる夢とは齟齬があるかもしれない。その齟齬を気持ち悪いと感じる方や受け付けない方はここで読むのをやめて他の方のとても素敵な作品の方を見てほしい。さらにいえばこの物語の登場人物は私の自己解釈が多分に含まれることが予想される。そういうのが苦手な方も他の方のとても素敵な作品をじっくり読むことをお勧めする。

準備はできただろうか。それでは行こう


1941年。我々の国、日本は英米を主軸とする連合軍と戦争状態に入った。我が国は最初のうちは快進撃を続けたがその後敗戦への一途を辿ることとなる。そんな歴史を我々は学んだ。。

我が国の敗戦は日本の腐敗を招き日本の政治はもう立て直せないほどに腐ってしまった。政治は司法と結びつきもはや日本の崩壊は時間の問題だろう。日本国の敗戦はその後を考えると不幸でしかなかった。こんな結末は認められない。その一心で動いた少女たちがいた。


―――2141年―――

この時代では日本は腐りきり崩壊寸前であり、優秀な世代は軒並み海外へ旅立ってしまったため少子化が進みに進み、人口の九割が80以上と言う絶望的な状況であった。幸い医療技術と科学技術の進歩により生活は保てているがもはや政治、司法は形骸化し世界からも日本という国の立て直しは不可能であろうとわすれさられていた。中国やロシアももはや肥沃な土壌もなく資源もないこの貧乏国家には見向きもせず相変わらずアメリカと睨めっこだ。

「一体どうしてこんなことになったんだい?」

そう口を開いたのは響だ。

「しらな〜い。ま、戦争に負けてアメリカの実質傀儡になったからじゃない?」

とは神子の弁だ。

「結局根っこはそこになりますね。」

すずが応える。

彼女たちは日本に残った数少ない優秀な若い人材である。割と色んなものに精通しているが一人一人性格が違うためなかなかに食い違うものもあるようだ。しかしだからこそなのだろうか。惹かれるものがあったのかいつも三人一緒にいる。

クールで冷静沈着、紆余曲折あって仲間を失った経験がありあまり親密になることを恐れている。数学などの答えのあるものが得意な『響』。口癖は「めんどくさ〜い。ま、やるけど」ゲームがうまくて電子的なものに特に精通している『神子』。いつも敬語でどこか一人執事みたいな雰囲気がある。得意なものは測量などの地学系や心理学、後なぜかは知らないが三人の中で1番フィールドワークがとくいな『すず』。正直なぜ彼女たちが惹かれたのかは分かりかねるが、何かがあったのだろう。そんな三人が日本の腐敗にうんざりしてこんな話をしている。

「も〜さ〜なんなら過去変えてこんなボロボロの世界からおさらばした〜い」

「いや、流石に無理があるんじゃないかな?」

「出来なくもないでしょう?ねぇ響さん?」

「まぁ出来なくもないことは…ないかな」

「できるならやろ〜よ〜」

と明らかに女子高生らしからぬ会話をしている彼女たちにはそれをできる術と頭脳があるのだ。流石に財政的に無理があるように見えるが、そもそも日本に残っている優秀な人材が少ないこともあってそう言う人間が海外に出て行かぬよう日本は助成金を出しているのだ。こう言う時だけ優秀な日本政府などと失礼なことを思いつつ彼女たちは動きだした。

2020年の技術では不可能であると結論づけられている過去へのタイムトラベル。流石に人体のタイムトラベルは2141年でも不可能であるが、響には一つの案があった。精神のタイムトラベルだ。精神を当時の軍の中枢のものの中に送り込み、日本の敗戦を回避しようと言うのだ。敗戦の回避でなく戦争自体を回避すれば良いではないかという考えは彼女も最初は持っていた。しかし彼女が真面目に計算したところ精神のタイムトラベルは200年が限界なのだ。残念ながら戦争自体を止めることができないと分かった彼女は絶望したがそれでも仕方ないと思考を切り替え、どのような装置にするかという設計に取り掛かった。

「ふぅ…なんとかできたよ」

「お、やっとできたかな〜?んじゃ私の番だ。めんどくさいけど、やりますか。」

設計には一ヶ月を要したが響はそれを完成させた。設計を形にしていくのは神子の仕事だ。さて彼女らが他の人が動いている間何をしているかという話だが、歴史の勉強である。歴史をこれから変えるのに何が勉強だという話だが、そもそも何が起こって負けたのかを把握していないと勝てるものも勝てないからである。そして、精神を乗っ取るもとい、なりきる相手の人相や性格などの勉強もだ。これに関してはすずが大いに活躍した。

それはそうと機械自体の完成には設計よりもかなり時間がかかった。理由としてはやはり一定の人物の精神を追い出して精神を入れるという部分の完成にかなりの精度と技術が必要だったためである。いくら天才とはいえやはり無理をしているのには変わりない。しかし祖国を救いたい一心で七ヶ月でやり遂げた。その完成した装置をどこに置くのか、いつ動かすのかを決めるのはすずの仕事だ。

「私の仕事までずいぶんかかりましたがやっと私の仕事ですね」

すずが現地まで赴かなければいけないのは流石に場所を超えて特定の人物に精神を送るのは無理があるということだ。幸運なことに少子高齢化と都心も含めた過疎化も相まって、海軍大臣、陸軍大臣、軍令部総長(わかりにくいので雑に説明すると海軍の作戦担当)の寝床があった場所は更地になっていた。その場所に少しばかりの足場を建て(足場を簡単に建てられるような装置を神子が作ってくれたんだ〜)装置を設置した後三人が揃って作戦会議をおこなった。誰が誰に乗り移るかというものとどのような作戦で進めるかというものである。三日三晩話し合いそれぞれの頭に叩き込んだ。歴史を動かすとその先の未来も変わるから用兵の仕方もこれまた三日三晩勉強をし頭に叩き込み、一ヶ月。ついに作戦を決行する決心が全員についた。開始時刻は深夜、移る先は神子が東條英機陸軍大臣(ちなみにこの人めちゃくちゃ色々な役職を兼任していますが今回は陸軍大臣としての姿だけ写します)響は嶋田繁太郎海軍大臣。そしてすずは永野修身軍令部総長だ。2142年5月1日午前2時。彼女らは非常に長い眠りに落ちた。


―――1941年5月1日―――

『響』

響が目を覚ましたのは自分のものではない、しかし知っている布団の上だった。これまた知り合いではないが知っている女性が寝ている。かかっている時計に目をやると時間は午前2時。布団と隣の女性は事前に学習した通りの家の布団と、嫁である嶋田ヨシだ。しかしここで完全に目を覚ましてしまってはこの男のルーチンを崩したこととなる。自然に目を覚ますまでゆったりと目を閉じた。

そして目を覚ますと、時刻は午前5時。やはり人格は変わっても体は覚えているものなのだろうか。この男の日々の生活どおりの行動をしていく。着替え、朝食を食べ、そして神社に参拝をしにいく。自分ではあるものの自分ではないそんな不思議な体験をしつつルーチンをこなしていく。口を開いて声を出すと自分の声ではない別の声が出た。あまりの衝撃に変な声が出て妻に睨まれた。そんなこともあり途中で話し方があまり似ていなかったのか妻にあなた何か変わったみたいねと疑念をかけられたがなんとかやり過ごした。

「さぁ。時の改変を始めよう」

そう意気込み出勤する。出勤先は海軍省である。席に着くと早速報告に来るものがいる。人事や作戦などについてだ。作戦に関してはすず。もとい永野に一任していると言って流した。戦況の経過については事細かに聞き、嘘をついていないか、その他を調べた。またその日の会議では海軍省の上層部に対して陸軍との協力体制を敷く準備をしているということを話した。もちろん反感も出たが「今、戦況がいいうちはいいがもしこの先旗色が悪くなって負けるようなことになった時陸軍との仲が悪いせいで負けたなどと思われてみろ。後世の日本人はどう思うだろうか」というような話をすると反対派はトーンダウンしていった。敗北主義者じゃないかというような意見も出たが「アメリカはどこまで行っても大国。だ。そんなこともわからず戦争をしているのか君は?」といって此方も黙らせた。流石にやりすぎたかと思ったが全員が心から納得しているようだったので胸を撫で下ろした。またこのことについては緘口令を引いたのでまず漏れることはないだろう。

『神子』

布団で重い目を開けると周りにはたくさんの子供達がいる。全員数百回と見てきた顔だ。妻のかつ子に揺すられ目を覚ます。事前学習通り東條のモーニングルーチンをこなす。疑われることもなく出勤の時間となった。

「私達で平和な日本を取り戻す。」

この一心で陸軍省に向かう。陸軍省に着いてからは執務に従事した。此方でもこの日の会議において海軍と協力体制を引く準備をしていることについて話した。このことについては明らかに不自然なタイミングであろうと思われたがこの状況に疑問を持っていた将校を味方にし、なんとか全員を納得させた。またこちらでは作戦概要の変更や海軍との共同作戦等元の作戦計画を大きく動かすようなことをしたが、完全な縦社会であった大日本帝國軍においてこのことが深く咎められることはなかった。またこの会議において陸軍内での下級将校の戦訓欲しさの独断専行が多すぎることも議題に挙げ、将校の再教育及び軍記の徹底を再確認した。また陸軍学校にての暴力行為の禁止等現代教育に通づるようなことも権限を行使し徹底させた。

『すず』

いつもと違う不自然な感覚に襲われ目を開けると何やら腕が重い。隣を見れば妻である京子が寝ている。やはりこの不自然な感覚はみんなも一緒なのだろうか。と思うと同時にみんなが無事についたかという不安に急に襲われた。しかし元の体のルーチンが染み付いているのか目が重い。そのまま目を閉じもう一度眠りにつく。次に目を開いたのはのは三男である孝昭(1945年に仙台空襲で亡くなってしまった)に揺すられてからである。「パパ起きて!朝だよ!」この子みたいな子達を死なせてはならないと心に決め朝食を取り出勤する。向かう先は海軍省だ。いく途中で響に会えるかと期待したが会えなかった。偉い人は出勤も早いのだろうか。そんな疑問を持ちつつ出勤すると早速執務だ。相談はあなたに、と言われたといい沢山の高級将校が次々と作戦計画を持ってくる。事前の計画通りになっていてまず間違いなく響はついているだろうと言うことがわかりひとまず胸を撫で下ろす。早速作戦計画書に目を通しているとMI作戦(俗に言うミッドウェー海戦が起こる作戦)の図上作戦(事前に図上で作戦を実行しどのくらいの戦果被害が出るのかを確認するシミュレーションのようなもの)の経過報告がありそれを元にしMI作戦を見直すためにファイルに閉じた。そして、未来から見て成功した作戦の資料は無視し他の書類に目を通してゆく。未来から見て失敗した作戦は変更を加えるなり中止命令を出すなりした。また、海軍の暗号はアメリカ軍によってすでに解読されていると言う偽の資料を作成した(実際史実でも海軍の暗号は解読されていた)。すでに作戦開始が下名されている珊瑚海海戦は沈没した軽空母祥鳳の沈没を止めるため常に対空警戒を厳とするようにと命令を出した。そんなこんなをしているうちに会議の時間だ。その会議ですずはMI作戦の計画の中止を具申した。証拠として図上演習ですら大規模な損害が出ている資料がある(攻略中に敵艦隊が出現し大損害が出て作戦続行が不可能になったり空母が大量に撃沈されたり)にもかかわらず揉み消されている事実を伝え作戦の中止もしくは変更を要求した。この論には作戦反対派や響が擁護してくれたおかげでなんとかMI作戦を見直しにまで追い込んだ。その後は響が陸海軍の統合について話したりそれについて緘口令が敷かれたりと色々あった。

会議終了後、響(さっきから響と呼称しているが外見と声は嶋田海相である)によばれ部屋に行くと偉そうな雰囲気のするおじさんがいた。誰だこいつと内心思いつつ部屋に入るとすず以外の人間は一度外に出された。見た目はだいぶ違うが中身はちゃんとと響のようだ。

「すずもちゃんと来れてたんだね。」

「ええ。なんとか無事に。これから本当に私たちが戦争をするの?」

「私も乗り気じゃないけど日本を救うにはこれしかないって話したでしょう?」

「やっぱりいざやると怖くなって…」

「大丈夫。より多くの人たちを救うための戦争よ」

「綺麗事だろうけど少し安心した。ありがとう。」

「じゃあまた。この戦争、一緒に勝ちましょう?」

「わかったわ。響ちゃんがそう言うならね。じゃあ。永野修身失礼します!」

そう言って部屋を出る。響のくすくす笑う声が聞こえたような気がしたが気にせず部屋を出る。


―――1942年5月2日―――

皆が昨日と同じようなルーチンを行い出勤すると、執務机に何やら物々しい雰囲気の文書がおかれている。中身に目を通してみると軍の上層部のみを集めた未公開の御前会議のようだ。

そんなもんがあるのかと、疑いつつ会議室へ向かう。天皇陛下の御前に向かうのだ。身なりをしっかりしてから部屋を出る。会議の内容は陸軍省と海軍省の協力関係を作ろうとしているのは本当か。ということであった。つい最近まで対立していたのだ。急な方針転換でどこからでも疑惑が出てくるのは仕方ない。しかしここで天皇陛下へ誠意をお見せできればこの大掛かりな計画もうまく行く。その為に響達は必死で説明を始めた。

〜小一時間後〜

陛下、及び他の軍の重鎮達も納得してくれ、さらに陛下の協力も取り付けることができた。正確には軍の重鎮達は納得はしていないが、陛下が承諾なされたことを声を大にして反対するという愚か者は流石にいなかった。


こうして陛下の承認を得た軍の中枢三人は軍事の大転換を始めた。これまでの受身一辺倒の兵教育を改め、自主性、積極性、創造性を重視し、個々の生徒が持つ才能や資質、専門性を開花させ、自由に伸ばす方向へと転換させ、前線で柔軟な対応をできるように、そんな兵卒を教育するためにだ。

前線将校達からは強権を剥奪。部下の意見具申を全面的に許可した。

そして1番重要な面として海軍、及び陸軍省の統合である。この二つの省を統合し、統合作戦本部を設立。陛下からの勅命もいただき、協力体制も万全かと思えた。しかし陸、海軍の軋轢は想像以上に激しかった。そこで、穏和で部下達からも信頼のある物を陸海軍より一人ずつ立て協力体制の確立を喧伝してもらうことにした。

陸軍からは山下奉文、海軍からは山本五十六。らこの両名が選抜された。兵士からの信頼も厚く、戦果も豊富なこの二人なら上手くやってくれるだろうと確信しつつ、今度は戦争の準備に取り掛かった。


一番最初に変えるのは日本軍が大敗を期したそして日本軍が劣勢へと切り替わった作戦。MI作戦(俗に言うミッドウェー海戦があった作戦)である。

この作戦で大敗を期した理由は以下の通りであった。一に作戦計画の乱雑さ、二に敵戦力の見誤り、三に暗号が解読されていたこと、四に慢心である。この海戦で日本海軍は空母四隻とその搭載機290機を全て。そしてそれに乗っていた優秀な搭乗員及び船員をほぼ喪失することとなった。

さて。作戦を組み直すのはいいがまずは簡単な所から直していく。まずは慢心だ。これは教練の徹底と、アメリカ軍自体の戦力の再確認。また、これからどのような船が就航しそうかなどのスパイ情報も将校には確認させ、アメリカが強大な敵であることを再確認させた。

次に暗号。これはとりあえず陸軍との暗号の共有(海軍に比べ陸軍の暗号は技術力が高く米軍も終戦まで完全な解読はできなかった)でひとまず手を打つが、今後はドイツとの協力をしつつ暗号機の研究を進めていくこととなるだろう。

敵戦力の見誤りに関しては初日に作った偽のスパイ情報(情報は本物だがスパイが持ってきたと言うのはまるっきり嘘)で敵の正確な戦力を全員に徹底させた。

最後に大物だ。今回の作戦の大元を変える。

が、その前に根本的な問題の解決だ。今回の作戦のために多くの人員を異動させたため兵たちには疲労が溜まっており艦艇と航空部隊。双方の技量はかなり落ちていた。そこで響たちは横須賀に今回の作戦に参加する艦艇たちを集め、大規模演習を昼夜兼行で行った。今回の作戦が日本の勝敗を決める一手になると。そう言って訓練を継続させた。また米軍戦力はあまりにも強大なため(海兵隊 三千名、航空機 百五十機)陸軍、及び海軍陸戦隊の上陸演習も同時にやった。これだけ大きく動けば米国諜報部にも察知されたが、偽の攻撃目標を軍内部に流し続け真実を知るのは軍のごく一部という状況にしたためことなきを得た。最後に作戦の開始時期だが一ヶ月の訓練ののち一週間と少しの休養を与え作戦を決行することとした。よって作戦開始日は1942年6月7日である。

そんなこんなで作戦のための準備は整った。あとは作戦本体である。


今回の作戦概要及び、作戦に参加する艦艇を紹介する、

南雲機動部隊は第一航空戦隊「赤城・加賀」、第二航空戦隊「飛龍・蒼龍」、第四航空戦隊「龍驤、祥鳳」、第五航空戦隊「翔鶴・瑞鶴」、第十戦隊「長良」、第七駆逐隊「曙・潮・漣」、第十駆逐隊「秋雲・夕雲・巻雲・風雲」、第十七駆逐隊「浦風・磯風・谷風・浜風」、第六駆逐隊「暁・雷・電・響」、連合艦隊は第一戦隊「大和・長門・陸奥」、第十一駆逐隊「吹雪・白雪・初雪・叢雲」、第十九駆逐隊「磯波・浦波・敷波・綾波」空母隊「空母鳳翔、駆逐艦夕風」第一艦隊は第二戦隊「伊勢・日向・扶桑・山城」第九戦隊「大井・北上」、第二四駆逐隊「海風・江風」、第二七駆逐隊「夕暮・白露・時雨」、第二○駆逐隊「天霧・朝霧・夕霧・白雲」その他第二艦隊と占領部隊、先遣偵察隊として大量の潜水艦と潜水母艦数隻。そして、多数の補給艦である。航続距離の足りない駆逐艦たちに燃料や食料を補給するためである。航空燃料や重油、食料を満載した補給艦隊をついて行かせる。が、作戦海域に接近した後は補給艦隊は後方待機となる。大きな理由としては艦隊の航行速度が恐ろしく落ちるためである。

作戦概要に入る。ミッドウェー海域接近後、南雲機動部隊と連合艦隊からなる第一機動部隊と第一艦隊と第二艦隊その他占領部隊からなる攻略艦隊に分ける。第一機動部隊は敵艦隊と決戦を試みその隙に攻略部隊がミッドウェー及びアリューシャン諸島に攻撃を仕掛ける。作戦海域に入ったのち速やかに十三試艦上爆撃機(めっちゃ早いので偵察機として活用。知ってる人に伝えておくとのちの彗星)を蒼龍より発艦させ敵艦隊の捕捉を行う。明らかに大艦隊なので途中で潜水艦や航空機に発見されるだろうから敵艦隊が出てきているであろう。と言う理由である。敵艦隊を捕捉したのち敵艦隊の後方より艦攻隊による攻撃を開始する。敵が想定しているであろう方向より逆から攻撃し敵艦隊の動揺を誘う。そして架空の艦隊がいる方向から逃げてくるはずの敵艦隊に対して第六、第七、第十、第十七駆逐隊の魚雷攻撃を持って損害を出させさらに敵の動揺を誘う。敵艦攻隊がこちらに攻撃を仕掛けてきた場合は残っている全護衛機及び全艦による濃密な対空砲火でこれを防ぐ。また、海域に近づくにつれ敵爆撃機による空襲も考えられるので上空には必ず護衛機を飛ばしておくと言うことも徹底された。このようにして敵艦隊の動揺を誘った後、第一戦隊、第十一、第二四駆逐隊を肉薄させ砲撃及び雷撃を敢行。一挙に敵艦隊の撃滅を試みる。この戦闘に勝利した場合は速やかにミッドウェー及びアリューシャン諸島方面に転進。地上部隊の援護を行う。空母部隊はこの時点で駆逐隊を引き連れ補給艦の位置まで後退し、作戦終了まで待機。この際必ず数機の戦闘機を直掩機として即応状態にしておくという命令も出した。さらに、駆逐艦数隻を海戦終了後、海戦が起こった海域に向かわせ負傷者や、沈没した味方艦の生存者、撃墜された艦載機搭乗員の救出に向かわせることも作戦に盛り込んだ。この際必ず敵であっても助けろと言う命令を出した。次に第二艦隊及び占領部隊からなる攻略艦隊は機動部隊が戦闘を開始したのを確認後速やかにミッドウェー島に上陸。占領を開始する。この際敵航空戦力が攻撃を仕掛けてくると予想されるため戦艦を中心とした輪形陣を取りつつ対空防御に専念する。また戦艦の主砲は地上陣地の制圧のため上陸部隊が上陸する前三十分程砲撃をした後上陸をさせる。この時点で海兵隊の大半を撃破できていると思われるができていない場合は、敵火砲の砲撃煙を観測後その地点に駆逐艦による榴弾砲撃を敢行。少なからず被害は出るだろうが練度の差がモノを言うだろう。この作戦に成功後は機動部隊の残存艦と合流。アリューシャン諸島に攻撃を仕掛ける。アリューシャン諸島に関しては、大和、長門をはじめとする多数の戦艦の砲撃によるアウトレンジ攻撃が敵戦力の大半を撃破するため上陸戦力はミッドウェーの被害を鑑みても足りると考える。この作戦に投入する陸上戦力は海軍陸戦隊三千人、陸軍三千人の合計六千人である。この作戦が失敗したら統合参謀本部の三人は腹を切ることとなるだろう。作戦概要は決まった。あとは成功することを祈るのみだ。


――1942年6月7日――

この作戦決行に際し海軍大臣から統合参謀本部長になった響の演説が求められた。響はこれを快く承諾し、作戦開始当日。作戦に従事する全ての人員を集め、話し始めた。

「諸君はアメリカ領に攻撃を行う名誉ある兵士だ。この作戦において一番重要なのは陸軍と海軍の協力である。しかしながらこれまで陸海軍には大きな亀裂があった。しかし諸君はそれを乗り越えて協力してくれると信じている。我々はこの戦争に勝利しなければならない。それは亜細亜の解放の為であり、負ければ我々の国は滅びる為である。海軍人員に告ぐ!死ぬな!諸君は祖国のために生き残れ!生き残ればまた戻って来られる!天皇陛下のために生き残るのだ!陸軍の諸君!君たちは地獄のような陸戦をすることになるだろう。しかし、今回は君達だけではない!海上にも味方が沢山いるのだ!此処での戦闘に勝利できれば米軍は太平洋での活動がしにくくなる!太平洋は我らの海となる!そうなれば我々がこの戦争に勝つ確率が跳ね上がるだろう!中国では未だ関東軍が戦っている。その関東軍は中国軍と必死に戦闘しているのだ。そこに我々が大手を振って救援に行けるよう必ず勝って帰るぞ!総員!興国の興廃この一戦にあり!各員奮励努力せよ!以上!それでは作戦開始!」

『了解!』

と兵士たちの威勢のいい返答が聞こえ、響は満足して壇上から降りた。


ここから地獄の戦争は再び動き出す。


To Be Continued


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