見える世界
20XX年 オレは死んだ。
享年91歳とかなり長生きしてしまった。
葬儀場で自分を眺めていると美代子がやってきた。
オレの家内だ。
「おじいちゃん、おじいちゃん、美代子だよ」
泣きながらオレに話しかけていた。
久しぶりに見た美代子の姿はシワシワで小さくなっていたけれど、昔と変わらない上品さは変わらなかった。
おっともう時間みたいだな。
まるで雲が乗せてってくれるみたいにふわふわとオレは空に向かって上がっていった。
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光が見えてきた。もうすぐ天国ってところに行くのだろう。
「パンパカパーン!!」
!!
「武井 光康さんおめでとうございます。あなたはこの町で1億人目の死者となりました。つきましては、あなたの心残りを無くすお手伝いをして差し上げます!」
なにやら黒白ハチワレの猫が白い小さな雲に乗って話しかけてきた。
いつか見たことあるような猫・・・。いやそこらへんにいた野良猫のことだろう。
「な、なんだ?心残り・・・?」
「はい!そうです。わたしはこの町の死神。麗央といいます。普段は心残りを無くすお手伝いなどしませんが、仕来りですので。」
「はぁ・・・。」
「あなたは3回、一年ずつ未練のあったトキを過ごすことができます。わたしが合図を出したら未練のあるトキを強く念じてください。トキへ行ったらそこから1年過ごすことができます。」
「急になんだ!オレはもう一度同じことの繰り返しなんてお断りだ。還ったところで何も変わりはしない!もう誰にもメイワクかけたくないんだ。」
「それじゃあ、1回目行ってみますかぁ。わたしが"またたびたび〜”と言ったら念じるのですよ。
さぁ
"またたびたび〜"」
不覚にもオレは思い出してしまった。
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ん、、、
茶色の壁だ。
ん、、、??
「な、なんだこれはー!?」
手がけむくじゃらで肉球がある。
手だけじゃない。身体中がけむくじゃらだー!!
足音が聞こえてくる。
「いたいた!ここだよお母さん。」
「ほんとだねぇ。仕方ないねぇ。」
美代子だ。
「美代子!オレだ!光康だ!!美代子、美代子・・・」
「この子いっぱいおしゃべりしてるー!」
「そうだねぇ、お腹空いているのかもねぇ。さぁ帰ろうか。」