悪魔の認識
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私は今にもつむってしまいそうな目を擦りながら言う。
「なんかみつかった?」
「何にもぉ~。寝むたい~!」
舞うホコリを扇ぎながらカルアは言った。
「魔道具屋が開くまでの我慢だから!」
「もう私は動かないもんねぇ~」
カルアはそう言うとホコリだらけの床に寝転がった。
「いまから行ったら丁度かな。だからカルアはお宝探しでも続けておいたら?」
「私も行きたい!」
「駄目だよ。ぱって行ってくるから我慢して」
「でも、私寂しいもん」
上目遣いでカルアは訴える。
「うぐっ!」
カルアの上目遣いに心が揺れ動く。
(別に隠して連れていけばいいんじゃないか…。いや、不安要素は少しでも減らすべきだな)
「ごめん、やっぱりやめときたい。連れていってバレたらまた移動しなきゃいけないし」
「何がバレるの?」
「髪の色だよ。唯一私たちは髪の色違ったでしょ」
「そういえばそうね」
「そう言えばカルア。"悪魔"について何か知ってる?」
「"悪魔"?お話で読んだことはあるけどホントにいるわけ?」
「そうなんだよね。リリアスに「私達は悪魔だ」って言われてさ」
「銀髪は悪魔の象徴?」
「かもしれないね」
「とりあえず行ってくるから待って…そうだ、本でも読んどいたら?これとか」
拾ったフラチカ短編集をカルアのお腹の上に投げ渡す。
「ぐぇ!なにこれ?」
「じゃあ行ってくるからね~」
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フードを目深に被り怪しまれながらも何とか購入に成功した私は手に入れた魔道具は錠剤型だった。
しかも黒色をしており、毛ほども服用しようとは思えない。
そこで私はカルアに先に飲ませようとしていた。
「これホントに大丈夫なの?!」
錠剤型の魔道具にカルアはビビり倒す。
「絶対飲んだら死ぬやつじゃん!」
「死なないって店員さんが言ってたから飲めるって」
「そう…な…の?」
「ほら、水もどうぞ」
買ってきたコップに魔法で水を入れて渡す。
「い……行くよ…」
カルアは覚悟を決め、錠剤を口に入れた。
私はその瞬間にカップの水をカルアの口に流し込み、口を抑える。
「んっー!ん~っ!」
カルアは驚き、暴れる。
「早く飲み込んで!」
カルアは私を睨み付けてから一気に飲み込んだ。
「げほっげほっ!」
カルアは気管に水が入ったのかむせる。
「きぃ~!頭に来た。食らえ脛キックver2!」
カルアは私の脛を真っ正面から蹴った。
案の定あまりいたくなかった。
「くそぉ!またかよ!」
カルアは地団駄を踏んで暴れる。
「あれ?髪の毛の色そんな色だったっけ?」
輝くような銀色だったのが良く見るとうっすら黒くなっている。
「ちょっと様子見てみよっか」
無言でカルアは頷いた。
~30分後~
「ふふふ~ん、新しいわ、た、し」
カルアは真っ黒に染まった髪の毛先をかき混ぜながら言った。
白銀の髪もなかなか綺麗だったが黒の髪はまた違ったなまめかしさがある。
「見事に染まったね」
私もそれを眺めなかながら錠剤を水で飲み込む。
「あと30分ぐらいで染まりきるから待ってね」
私は部屋にかけてある時計を見ながら言う。
「ナツって結構酷いよね。私を森に放逐したり、さっきみたいに薬を無理やり飲み込ませたりさぁ!」
カルアはキッと睨みつけてくる。
「ハハハ、ナンノハナシカナー。ヨクワカラナイナー」
「ナツって割りとカスだね」
「そ、そう言えばその本読んだの?」
私は話を逸らす。
「ん?あぁ、読んだわよ。それこそ話に上がった悪魔の話もあったよ」
カルアは本を開いて差し出してくる。
「え、読むの?」
「読まなくてもいいけどさこれに書かれてる悪魔ってなんか変なのよね」
「と言うと?」
カルアはページをめくる。
「ほら、ここ。王様が処刑されるところよ。途中から王様が悪魔に置き換わってるの」
「悪い奴の象徴として使われているかはじゃない?」
「その通り、でもね挿し絵が気になるのよ」
「どれどれ?」
カルアから本を受け取り、挿し絵と見比べる。
初めの王は黒髪だが、処刑される時には白髪担っている。
「年取ったからじゃない?」
「まぁ、その線が一番強いと思うんだけど内容的に即刻処刑されてるから年老うタイミングが無いはずだわ」
「ふ~ん。それで」
「なんかおかしいよねって。悪魔の認識を調べれれば良いんだけどなぁ……」
「下の書庫でも探しに行けば?」
「それが無かったのよね。悪魔と関わることが危険なのか、はたまた悪魔の認識は常識過ぎて描かれていないのか」
カルアはため息を吐く。
「万事休すね」
「私の髪が染まりきったら図書館にでも行ってみよっか。それで私達がどうして勘違いされているのか知れるはず」
「じゃあ私は寝るナツよろしくね」
カルアはそう言うと私に倒れこみ、眠ってしまった。
(子供に徹夜は無理かな)
カルアの寝顔を見ると思わず私の広角が上がってしまう。
髪が染まりきるまでの間、カルアに渡していた本を読んで時間を潰すことにした。