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悪魔になった私の冒険録  作者: 炭酸水
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束の間の休息

「何この部屋?!これだったら森で寝たほうがマシよ!」



カルナの叫び声は闇夜に響く。



割れた窓からは月の光が射し込み、部屋を照らす。



足の踏み場も無いほどの散らかり用にカルアは顔をしかめる。



部屋の角という角には蜘蛛の巣があり、棚の上には2センチほどのホコリが積もっている。



どこを歩いてもに床は軋み、音を立てる。



私もカルアを横目に改めてこの部屋の汚さを感じていた。



#

 ちょうど小一時間前この町、シーゲルに着いた。



この町についてから初めに魔道具屋を探していた。



髪の色を変える魔道具を買うためだ。



私の予想では銀の髪が悪魔の判断基準とされるはずだ。



そこで私達の髪の色を普遍的な色に変えてしまえば平穏に暮らせるのではないかと。



しかし町に着いた時には既に夜の帳が降りており、魔道具屋は閉まっていた。



このまま出歩いては前の町での二の舞でしかない。



また命の危険に晒されるのは懲り懲りだ。



そこで空き家に忍び込み、夜を過ごそうと言うところだ。



#

「あくまでもここには忍び込んでるわけだから静かにね。通報でもされたらまた面倒なことになるの」



優しくカルアに諭す。



カルアは眉を潜めたまま比較的綺麗なところを探し、表面をさっと払うと腰を落ち着けた。



「そういえば昼間何だっけ……えっと……そう、「顕現!ほにゃほにゃ!」って言ってたじゃない。あれ何なの?私もやりたい」



「"顕現召喚"ね。突然思い出したの。死ぬって強く意識したら鎌から記憶が流れ込んできてね」



「そういえば記憶喪失だったね」



「そういえばってヒドくない?結構重要内容じゃない?」



「あまりにも不便そうじゃないもん」



「まぁ、確かにね〜」



「お腹減った。なんか食べたい」



突然カルアはねだる。



しかし私は既に予測していた。



「そう言うと思ってた」



鎌を召喚するようにリンゴを取り出す。



「え……これしかないの?」



「なんとか手に入れたんだよ」



腕を組んで胸を張って自慢する。



リリアスとの戦闘後、城門近くの市場にはひと一人居らず、暴風で乱雑に品物が転がっていた。



それを盗んできたのだ。



「うわぁ、熊のソース付き……」



カルアは顔色を青くして言った。



「そんなものかかってないけど」



「だってその鎌で熊の首切ったじゃない。あれから洗った?」



「そういえば……」



「つまり、このりんごは熊の血とともに保管されてたのよ!」



カルナはおもむろに立ち上がり指差し言った。



「ご、ごめん……」



「まぁ、食べるけどね。ナイフ無い?りんごの皮むきたいんだけど」



「じゃあ貸してみ」



私は鎌を呼び出し、右手に構える。



「摩訶不思議なりんごの皮むき、ご覧あれ」



りんごを軽く投げると、表面を舐めます用に鎌の刃を通す。



するとりんごの中身だけが綺麗に切り抜かれ、投げた手に帰ってきた。



「おお〜〜!」



カルアは手を叩いて称賛する。



「どうぞ」



男が女に指輪を渡すが如く、カルアに渡す。



「ありがと〜〜!」



(あれ?この鎌洗ってないけどいいのかな?さっきリリアス切った罰狩りじゃ……)



しかし、カルアは嬉しそうにかぶりついている。



熊のソースはもういいのだろうか?



「ん?私の顔に何かついてる?」



「いやぁ、別に…。美味しそうに食べるなって」



「……?カルアは食べないの?ほら」



手でりんごを半分に割って渡してきた。



「いや、私はいいかなぁ……」



カルアの言葉を借りるならリリアスソースだ。



意識すると気持ち悪く感じてきた。



「それにしてもこの部屋、本ばっかりよね」



適当に一冊本を手に取る。



表紙の汚れを叩いて落とすと文字が書いてある。



風雨に晒されてか一部欠けてはいるもののなんとか読めそうだ。



月明かりの元まで持っていき、目を凝らす。



「フ……ラ…チ…カ短編集?」



月の光に黒色の墨が淡く光る。



本を開き、読もうと思ったが月光の元ではよく字が見えない。



「読めた?」



カルアはりんごを頬張りながら言った。



「暗くて読めない」



「なんだつまんねーの」



カルアはおもむろに立ち上がり、部屋を物色し始めた。



「え?何してんの?」



「お宝探しよ。こんだけ床が散らかってるって事は誰も片付けに来てない。つまり、この人のお宝が残ってるかも」



「お宝持ってるって確証は無いのに?」



「やれやれだね。人生ロマンだよ」



カルアはため息を付きながら首をふる。



そして私を憐れむような目で見た。



少し、いやかなり腹がったがカルアの言っていることも一理あるとは思う。



この部屋の様子を見ると必ず何かある気がしてくる。



「それじゃあ勝負しよ。先にお宝を見つけれた方の勝ち。物音は極力立てないこと。オッケー?」



カルアはドヤ顔でグッジョブマークを作り、突き出した。



「もちろんよ!」



二人は夜が開けるまで黙々とお宝を探した。

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