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帽子男の短編集

空クジラ

作者: 帽子男

 私が昔住んでいた街にはソラクジラという動物がいた。そのクジラはいつもソラに浮かんでいて曇を食べる、曇を食べて雨降るんだ。

 私が昔住んでいた街にはソラクジラという動物がいた。そのクジラはいつもソラに浮かんでいて曇を食べる、曇を食べて雨降るんだ。私の地域には雨雲があまり来ないのでクジラをうまく利用して雨を降らして畑や田を潤していた。ソラクジラの呼び方は簡単だ。大きな釜で水をたくさん焚いてを呼び出せばいい。ただ大きすぎるクジラや小さすぎるそれらを呼んでしまうと、雨がたくさん降りすぎて作物を枯らしてしまったり、逆に雨が少なすぎてもいけないのでちょうどいいクジラを呼ぶか小さい個体をは複数呼べば良かった。しかし、大きなクジラが来てしまった時には違うところで雨は降らせるかといった対策が必要であった。


 小さな時であった、年齢としては7歳か8歳の時。祖母の持っていた納屋の隅の方でクジラを呼ぶ為に30cm程の大きな釜で水を炊いていた。水を炊いていると小さなクジラがやってきた。小さいと言ってもいつも見ているサイズは3メートル近くなのだがこの時私の近くに寄ってきたのは1メートルに満たない小さなクジラだった。

 そして私の近くに寄ってきた。祖母から聞いた話ではソラクジラは基本的に人間になつかないらしいが、いつもソラ高く泳いでいるクジラがこんなに近くや浅くに寄ってきたことは初めてだった。私は少し喜んだ。いつも気になっていたクジラが私は近を泳いでいるのだ。触れる距離まで空クジラがやってくると、水を炊いている私に擦り寄って水蒸気を食べ始める。私はクジラに触った。小さくそして人とは違うような皮膚は何と言うんだとか濡れた革のような感覚であった。クジラも私が気に入ったようで目を細めて窯から出た水を全て平らげても雨は降らするのではなく私のほうにすり寄ってきた。私はそのクジラを飼うことにした。


 ソラのクジラは神様なのだ 、と祖母はそう教えられていたらしい。しかし今はマスコットのようなキャラクターでもあったので、今の僕は罰当たりなことをしているのかもしれないという負い目が少しあった。

 納屋で飼い始めてから三日。ソラクジラに餌の水蒸気を与えているといつの間にやら1メートルもなかったクジラは体が少しずつ大きくなり、今日は3メートル近くはなっていた。私は少し困った納屋に3メートルの物が入るはずんなく、尻尾が飛び出していた。クジラのほうはそんな気にしてはいないようで不思議そうな顔キュウキュウと鳴き声を出して喜んでいるようであった。私はこれ以上祖母に隠し事をするのが苦しくなり相談しに行った。祖母は私の話を聞くと深くうなずいて悲しそうな顔をした、クジラは少し祖母を恐れているようだった。


「おまえはこのクジラをどうしたいんだい?」


「どうしたいって?」


「クジラに好かれるってことは神様に好かれているってことさ、このクジラをお前が好きというならそれでもいいさ。お前の母親もクジラに好かれて連れて行かれてしまったのだからね。もしお前が母親と父親に会いたいと言うならこのクジラを飼い続けるといい」


 そう言って祖母は家の中に入って行ってしまった。私は驚いていた、祖母が許したこともそうだがあれだけ母の話を避けていたのに。私はクジラに


「お前はここにいたいの?」


 と尋ねると嬉しそうにまたキュウキュウお泣いていた。

 納屋で飼えなくなって1週間ほど経った。クジラは倍近くの大きさになっていた。あれから祖母も私のクジラの世話を手伝ってくれた。祖母はクジラを見るたびになんとも言えない表情になっていたが私は見ないふりをしていた。祖母は私に話しかけた。


「まだ、母親に会いたいかね?」


 私はかなり迷ったが好奇心のほうがその時は勝ってしまった。


「会いたい」


 そう答えると祖母は私を両手で抱っこした。そして、クジラの頭のほうに近づいて小さな鈴を鳴らした。するとクジラは大きな口を開け祖母は私を口の中に放り込んだ。私は驚いたがその時は祖母にそんな事をされて悲しいというよりもなぜかワクワクとした気持ちが強かった。最後に見た祖母の顔は今にも泣きそうだった。 


 そして目を覚ました、私は見たとこ見たこともない所にいた。そこには見たこともない大きな液体とそして見たこともない小さな小さな粒がたくさん集まった場所だった。私と同じ人間が声をかけてきた。どこにいるか分からなかったのでその辺りを歩いていると奇妙な人に会った。白い糸が付いた棒を担ぎ、腰には何かを入れるツボの様なものを持っていた。


「お前ここでは見ない顔だな、よそ者か?」


 その珍妙な男は聞いてきた。


「ええ、ソラクジラがいる町とものですそういった。ここはどこでしょうか?」


「ソラクジラってなんだい?」


「空に泳いでいるクジラですよ、ここには居ないみたいですけど」


「空を鯨が泳ぐものかよ。お前夢でも見ていたんじゃないか?」


「そんなことはありません。私の村ではクジラもタコもヒラメも全部飛んでいました」


 遠くのほうでキュイと大きくクジラの声が聞こえました。


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