前編
職商人の逆転劇が始まり、始まり
俺の名はレイン、職業は職商人「職人と商人を兼ね備えた職種」。実は俺は勇者パーティーの一員で神託によって勇者パーティー「勇者、女剣士、女魔法使い、武闘家、そして私」のメンバーに選ばれました。国王陛下の命で俺たちは魔王討伐することになりました。俺の役割は主に裏方で、冒険で得た物品で商売をして金を得たり、勇者たちの武器や盾や鎧の修理やアイテムの開発等を行いました。俺は一度も戦闘に参加することなく、ひたすら裏方業務に邁進しましたが、仲間である勇者パーティーからは「日陰者」「腰抜け」「守銭奴」「金の亡者」等の悪口を言われました
【カイル(勇者)】
「レイン、俺たちが必死で戦ったおかげで稼いでるんだぞ!戦闘に参加しない分、きっちり金を稼げよな!」
【ローラ(女剣士)】
「貴様のような金にがめつい奴が栄光ある勇者パーティーにいるだけでも虫酸が走るが精々、私たちの武器の改良とアイテムの開発だけは頑張るんだな!」
【ミーヤ(女魔法使い)】
「あれ、いたの?気付かなかった。てっきり死んだのかと思った。」
【オルグ(武闘家)】
「腰抜けは腰抜けらしく、地べたに這ってろ!」
俺は仲間たちから蔑まれながらも必死に自分の役割に従事しましたが、やっぱりいい気分ではありません
【レイン(職商人)】
「悪かったよ。でも俺だって必死で頑張ってるんだ。そこまで言わなくたっていいじゃないのさ!」
俺は1人、酒を飲んでは愚痴を溢しまくっていた。そんな日々も終盤、ついに私たちは魔王の城に到着しました
【魔王】
「来たな!勇者よ!」
【カイル】
「魔王、お前の野望はここまでだ!」
【ローラ】
「我等の刃にかかって死ね!」
【ミーヤ】
「カイル、気をつけて!」
【オルグ】
「俺たちの力を魔王に見せてやる!!」
勇者たちは激戦の末、ついに魔王を討ち取った!
【カイル】
「やったぞ!魔王を討ち取ったぞ!ローラ、ミーヤ、オルグのおかげだ!」
【ローラ】
「やったな!カイル!」
【ミーヤ】
「やりましたね!カイル!」
【オルグ】
「流石だな!カイル!」
勇者たちは互いを健闘しあった!しかし俺は仲間のその輪に入れなかった。あの4人は幾多の戦場を駆け抜けた分、絆が深い!俺は裏方として1人従事したため、4人との間に深い溝がある
【レイン】
「なんで俺だけ・・・・。」
俺は1人悶々としていると・・・・
【魔王(霊体)】
「レインよ。」
【レイン】
「お前は魔王!」
俺の目の前に魔王の霊体が現れた
【魔王】
「慌てるな!私が結界を張ってお前と勇者たちを隔離している。それにお前に良いことを教えてやろうと思ってな!」
【レイン】
「お前の戯れ言など聞きたくない!」
【魔王】
「まぁ、聞け!国王の言う神託は嘘だぞ。」
【レイン】
「何!」
【魔王】
「国王は自分の失政に対する国民の不満と不信を反らすために魔王討伐を命じたのよ!勇者、女剣士、女魔法使い、武闘家はそれぞれの派閥が魔王討伐の箔付けのために選抜したに過ぎない!お前はいわば、おまけのようなものだ。」
【レイン】
「俺はただのおまけ・・・・」
【魔王】
「現にあいつらはお前に何かしたか?感謝の言葉すらなく、仲間とすら思っていない。お前だって薄々は分かっていただろう。」
魔王の言葉を俺は黙って聞いているしかなかった
【魔王】
「レイン、お前は国と勇者たちと手を切れ!そして自分だけの道を進むんだ!」
【レイン】
「進むって、どうやって。」
【魔王】
「西へ行け!」
【レイン】
「西へ?」
【魔王】
「そうだ、西には塩湖があってな、その土地でお前は一攫千金の大儲けができるぞ!」
【レイン】
「塩湖が?」
【魔王】
「そうだ、塩湖から塩が取れるんだ!まだ誰も手をつけていない土地だ!お前がいち早くその土地を所有し、巨万の富を得ることができるぞ!」
【レイン】
「でも俺には塩に関する知識と技術が・・・・」
【魔王】
「安心しろ、塩に関する知識と技術を教えてやる。」
魔王がそう言うと、俺の頭に何かのビジョンが植え付けられた
【レイン】
「俺の頭に何をした!」
【魔王】
「塩に関する知識と技術を植えつけただけだよ。」
【レイン】
「何だって!」
【魔王】
「これでお前はれっきとした塩専門の職商人になった!あの4人は戦闘だけしか役に立たない奴らばかりだ!平和な世になれば、あいつらは無用の長物となる。」
平和な世になれば、勇者たちは無用の長物・・・・
【レイン】
「魔王、なぜ俺にこのような事をするんだ。」
【魔王】
「しいていうなら、王国と勇者たちに仕返しがしたいから。お前だって勇者たちに虐げられてきたから分かるだろう。」
魔王に図星をつかれた。そう、あいつらに仕返しがしたい、でも勇者たちの力が強すぎて、忍従の日々を送っていた
【魔王】
「それに強すぎる力は、かえって警戒され、いずれあの4人は破滅への道へと進むだろう。レインよ、お前はあいつらとは別の道を行け!」
【レイン】
「分かったよ!俺は俺の道を行く!」
【魔王】
「そうだ、ついでに私の隠し財産を与える!場所はここだ!」
再びレインの頭の中に隠し財産の場所を植えつけた
【レイン】
「ありがとう!魔王!」
【魔王】
「なら、早く行け!いつまでも隔離はできないからな。」
魔王がそう言うと、俺は互いに喜び合う勇者たちを無視して魔王城を抜け、西の方角へと向かった
【魔王】
「さて、私もあの世へ行くか。」
魔王があの世へ行った瞬間、結界が解けた
【カイル】
「あれ、そういえばレインの奴はどこへ行った?」
【ローラ】
「あのような腰抜けは放っておけ!どうせ逃げ出したんだ!」
【ミーヤ】
「別にいてもいなくても、同じ。」
【オルグ】
「所詮はおまけだ!」
【カイル】
「そうだな、あいつは金づるとしか見てなかったしな!ついでだ」
勇者たちはレインの悪口を言い合いながら、国へと帰国した。そのころレインは魔王の言う隠し財産「ルビー&サファイア&ダイヤモンド等の宝石」を見つけ、早速、換金し大金を手に入れ、その途中、町に寄り、食料と馬車を購入した
【レイン】
「ふう、自分のために使うお金は良いものだな!金食い虫どもがいるのといないとでは大違いだ!」
勇者たちは優れた戦闘能力を持つ一方で金遣いの荒い一面がある。レインは勇者たちの金遣いの荒さを忌避しており、特に勇者たちはギャンブルが好きで、よく賭け事をしてはレインが借金の帳消しをしてきた。今は金食い虫がいなくなったおかげで、職商人としての特性を生かし、金を貯めることができた
【レイン】
「よし塩作りの道具一式を揃えることができたし、このまま西へと出発!」
レインは塩作りの道具一式をマジックボックス【無限の収納スペースのある魔法の箱】に入れ、西へ向けて馬車を走らせた。そのころ勇者たちは王国に帰還した
【国王】
「よくぞ!魔王を倒した、勇者たちよ!」
【カイル&ローラ&ミーヤ&オルグ】
「ははっ!ありがたき幸せ!」
【国王】
「ん?職商人はどうした?」
【カイル】
「レインは戦死しました!」
【国王】
「何!」
【ローラ】
「魔王と相討ちとなり、私たちの目の前で・・・・」
【ミーヤ】
「うううう。」
【オルグ】
「まさに男の中の男です!」
勇者たちはレインの逃亡を報告せず、戦死したことを報告した。もしレインが逃亡したことを報告すれば、根掘り葉掘り調べられ、自分達がレインにしてきた所業が王国中に知れ渡る。自分達の保身のためにレインを死んだものとして扱った
【国王】
「うむ、魔王と相討ちとなったのか。見事である!」
【カイル】
「はい、レインは我等の誇りでした!」
【国王】
「うむ、あの世にいる職商人も喜んでおろう。」
【カイル&ローラ&ミーヤ&オルグ】
「ははっ!」
【国王】
「よし、そなたたちに魔王討伐の褒美として褒賞金を与える!」
【カイル&ローラ&ミーヤ&オルグ】
「ははっ!ありがたき幸せ!】
家臣が袋一杯詰まった褒賞金を勇者たちに手渡した
【国王】
「勇者たちよ!此度は大儀である!」
【カイル&ローラ&ミーヤ&オルグ】
「ははっ!」
勇者たちは褒美を受け取り、城へ出た後、町の外れへ移動した
【カイル】
「ふう、危なかったな!」
【ローラ】
「それにしても褒美がたったのこれだけなんて!」
【ミーヤ】
「王国の財政が危ういですから、これくらいしか出せなかったのでしょう。」
【オルグ】
「ないよりはましだろ。それでこれからどうする?」
【カイル】
「決まってるだろ!王国随一のカジノでギャンブルだ!」
【ローラ&ミーヤ&オルグ】
「異議なし!」
勇者たちは早速、王国随一のカジノへ移動し、褒美でもらった褒賞金を使い、ギャンブルを始めたが・・・・
【カイル】
「くそ!また負けた!」
【ローラ】
「もう一勝負だ!」
【ミーヤ】
「次こそは当てる!」
【オルグ】
「負けてたまるか!」
勇者たちはそれぞれ賭け事に興じていたが、あっという間に褒賞金が亡くなり、借金がドンドンと貯まっていく一方である
【カイル】
「くそ!おい金だ!金を寄越せ!」
【店員】
「畏まりました。ではこの書類にサインを。」
【カイル】
「よし、書いたぞ!早く金をくれ!」
【ローラ&ミーヤ&オルグ】
「私(俺)たちも金をくれ!」
【店員】
「畏まりました(鴨が釣れたわ!)」
店員はニヤリと微笑み、勇者たちに賭け金を与えた。一方、そのころレインはというと・・・・
【レイン】
「もう大丈夫だぞ、えっとあんたは?」
「ユリア(魔族)」
「ありがとうございます!貴方は命の恩人です!申し遅れました!私はユリアと申します!」
【レイン】
「ユリアね、いいよ、別に。」
レインは西へ向かう途中で、行き倒れになっていた人型の魔族のユリアを介抱した。その後、快方に向かったユリアは自然の成り行きでレインと一緒に西の方角へと旅をしていた
【ユリア】
「そういえばレインさんはなぜ西へと行くのですか?」
【レイン】
「この先に塩湖があるって聞いてな。そこへ向かうんだ。」
【ユリア】
「それってカスタム塩湖のことですか?」
【レイン】
「知ってるのか?」
【ユリア】
「はい!私は行ったことはありませんが、塩のようにしょっぱい湖があるって聞いたことがあります。」
【レイン】
「そうなのか、実は俺、そこで塩を作ろうと思っていたんだ。」
【ユリア】
「塩ですか?」
【レイン】
「あぁ、俺は塩を専門をした職商人でな、その湖で新しい塩を作ろうと思っていたんだ。」
【ユリア】
「湖から塩を取る、にわかには信じられませんね。」
【レイン】
「まぁ、そこは行ってみてからのお楽しみだな。」
そう言うと俺とユリアは目的地のカスタム塩湖へと向かった