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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

Message from Nightmare

作者: 担当職員R

 気づくと俺はどこかに閉じ込められていた。さっきまで自分の家にいたはずなのに。


状況が全くつかめない。ここは一体どこなのだろうか。目の前には鉄格子。周りは冷たい壁で囲まれている。まるで牢獄だ。おまけに何だか目の見え方もいつもよりぼやけている。というより「色が見分けられない」?

 


 しかし、こんなに狭い部屋じゃ立つことができなくて身動きが取れない。少し体に違和感はあるが、こんな状況じゃ体の心配をしてる暇もない。とにかくここから出なければ。そう思い立ち何とか目の前の鉄格子へと移動しようとした。だが、やはり体が動かない。どうしたものかと思ったが、一刻も早くここから出たかった俺は、そこから大声で叫ぶことにした。もしかしたら誰かいるかもしれない。俺は一生懸命叫んだ。


「おぉい!誰かいないのか!?閉じ込められているんだ!助けてくれ!」


何度も呼び掛けてみたが何も起こらなかった。それでも俺は何度も何度も叫び続けた。


助けてくれ、ここから出してくれ、と。

 

何も返事がないまま時間だけが過ぎていったように感じた。


疲れてきた。あきらめかけたその時、影が見えた。人だ。ようやく来てくれた。


俺は最後の力を振り絞り、今までで一番大きな声で叫んだ。


すると、その影は俺の目の前で止まった。俺はその時、助かったと確信した。


そして、遂に鉄格子が開かれた。


ようやく、助かるんだ…。そう思った俺は鉄格子のなかから抜け出そうとした。


しかし、こんな時に限ってまた体が動かなかった。なんでこんな時にと思い、俺は自分の体に違和感を覚えた。


足が、一本ない。


それを発見した時に、急に目の前の人はこちらに近寄り、首元を強く掴まれた。そして、その人間に引きずり出されるように鉄格子から出された。


必死に抵抗しようにも体の自由がないため、抵抗するだけ無駄だった。


すると、その人は俺の首元に何かを乱暴につけられ、突然引っ張られた。


やめろ!やめてくれ!


そう何度も叫んだがその人には聞こえていなかった、というより伝わっていなかった…。


必死に抵抗していたが俺はあるものをみて、愕然とした。


引きずられているときにみた壁に掛けられていた鏡に映っていた姿は、俺なんかじゃなかった。


犬だ。

そこには、人間とはまったくもって異なっている片足を失った弱々しそうな犬の姿が映っていた。


そこで俺はすべてに気づいた。この人間のとる行動の意味、そしてこれから俺の身に起こることに。


気づいてしまった


俺はまた部屋に閉じ込められた。


さっきよりも大きく、そしてどこか陰鬱とした雰囲気の部屋。俺はこの部屋を知っていた。


俺は絶望した。

泣き出しそうになった。

助けを呼ぼうとした。

そんな体力はもうない。

助けてほしかった。

救われたかった。

生きたかった。

死にたくない。

誰か

誰か

お願い

お願いします

誰でもいいから

殺さないで

いやだ

いやだ

なんでこんなことに

ごめんなさい

ごめんなさい

もういやだ

くるしい

たすけて

なんで?

なんで¿

どうして

くるしい

助けて

助けて

助けて



薄れゆく意識の中、扉の向こう側から不敵な笑みで見つめていたのは紛れもなく


「俺」自身、だった。



目の前には、見覚えのある自分の部屋の天井が広がっていた。


起き上がり、自分自身を確認した。人間の姿だった。気づくと、涙を流していた。


全て夢だったという安心感より、何とも言えぬ感情ばかりが自分の思考を埋めていった。



俺は、その日のうちに今の仕事を辞めた。これでまたフリーターに逆戻りだ。


俺はもう「保健所」に二度と足を踏み入れられない、いや踏み入れることができないだろう。

さっき見たことは夢なんかじゃない。実際に俺がやったことだった。動物を乱暴に扱っていたこと。苦しむ姿を見て笑っていたこと。


ただ、今回の体験を通してそれを理解した。さしづめ、犬からのメッセージってところだろうか。


俺はもう動物たちと関わる資格なんてない。謝っても謝り切れないほどの罪を犯してしまったのだから。


そんなことを思いつつ足早にこの場から立ち去ろうとしたとき、あるものが視界に入った。


「慰霊碑」死んでいった動物たちの物だった。


俺に動物たちを慰める権利などあるのだろうか。そう思いつつも、俺は慰霊碑の前に立った。そして、拭いきれない程の罪をすべて謝罪した。




俺は慰霊碑から立ち去った。今のうちにでも地獄で反省する心構えでもしておこうか。


ただ、何があってもこのメッセージだけは忘れないようにしよう






今回は、保健所についてポンっと頭に思い浮かんだので書きました。

実際にこの話に出ていた「俺」のような職員はいないと思いますが、未だに多くの犬、猫の殺処分があることは紛れもない事実です。殺処分0にむけて今現在多くの活動が行われていますが、それでもなかなか減らないものです。

自分勝手な人間たちのせいで、死んでいく命たちを私たちはどう受け止めて考えていくべきでしょうか。



scp関連の小説でもなければ、下手したら多方面からなにか言われそうな小説ですが、これを読んで何か心の変化を感じて頂ければ幸いです。よろしくお願いします。

Rでした

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