ひとりの剣士として
終焉魔法。
すなわち――上級魔法や特級魔法さえも超越した、人の身では扱うことすら叶わない魔法。
かつての俺はせいぜい《中級魔法》が限界だった。
でもいまは違う。
不可能と思われた魔法だって、いまの俺なら使いこなすことができる……!
「グオオオオアアアア!!」
上空に浮かび上がった魔法陣から巨大な火炎が発せられ、魔神ミアは悲痛な呻き声をあげるのだった。
★
「すぅ……」
リュア・レインフォートは大きく息を吸い込み、気息を整える。
すぐ近くでは、アシュリーとミアが決死の戦いを繰り広げている。
そのスケール――まさに人外。
繰り出す剣技も、魔法も、とうに人の域を超えている。魔神は当然としても、アシュリーがあそこまで強いなんて。さすがに思いもよらなかった。
――私は私で、腹を括らねばな……!
「我が娘よ。良い顔をするようになったな」
そんなリュアと対峙するは、最強の剣士にして彼女の父親――オルガント・レインフォート。
冒険者ランクに換算すればSSSランク。
国の誰よりも強いとされている、文字通り最強の剣士だ。
「……もちろん。あなたを相手に、刹那とて油断するわけにはいきません」
「ふふ……成長したな。やはり」
オルガントは満足そうに頷くと、銀色の大剣を右手に握り、低姿勢で構える。
「――ならばこそ、私はおまえを、ひとりの剣客として迎え撃つ。家族としての情にはいっさい期待しないことだ」
この風格。圧力。
魔法を使っているわけでもなかろうに、すさまじい熱気を感じる。オルガントを起点として、不可視の業火でも放たれているような……
実際にも、彼の周囲は紅蓮に燃えさかっていた。
「闘気……」
純粋な物理攻撃力のみで、魔力が立ち上っているかのようにオーラが発生する現象。人の域を超えた剣士にしか持ち得ない力とされている。
さすがは最強の剣士……
「すぅ……」
リュアは再び深呼吸し、オルガントの動きを観察する。
相手はリングランド王国きっての剣士。それでも――負けるわけにはいかない!
「「ぬおおおおおおっ!」」
レインフォート流の二人が激突する。
――と。
「終焉魔法の六、セラフィック・ルクス・ゲート……!」
リュアの背後で、キーア・シュバルツが魔法を発動する。かつてガルムを襲ったものとまったく同じ、幾千もの光の筋がオルガントに降り注ぐ。
さすがは最強の転生者。
ものすごい勢いである。
――が。
「かあああああっ!」
オルガントは気合いの怒声を響かせるや――勢いよく地を蹴った。
信じがたい出来事が起きたのはその先。
なんとオルガント自身を紅の闘気が包み込み。
その姿を、気高き鳥の姿――鳳凰に変えたのだ。
「おおおおおおおっ!!」
縦横無尽に駆け回り、オルガントは光の筋をことごとく避けていく。キーアの終焉魔法も相当に速いはずなのに、彼はそのすべてを避けている。
まるで……空を舞う気高き鳥のように。
「レインフォート流。鳳凰絶火!!」
「…………っ!」
鳳凰と化した名将が、人智を超えたスピードで突進してくる。大剣を突き出し、明確なる敵意を以て。
――逃げたら、死ぬ――
そう直感したリュアは覚悟を決め、大剣を正中線にしっかり構える。そして大きく息を吸い込み――
「レインフォート流、鳳凰十字!」
父の大技にぶつかりにいった。
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