生徒のために、凡人はさらなる高みへ。
――くそ。
内心、俺は後悔でいっぱいだった。
なぜ、ミアの心情にもっと寄り添ってあげられなかったのか。
なぜ、彼女のSOSに気づいてあげられなかったのか。
ミア・フォースト。
いつも謎めいていて、もしかすれば邪神の側についているのではと考えたこともあった。
けれど――そうじゃなかった。
彼女はやっぱり、どこにでもいる学生で。
誰にも言えない悩みを抱えていた、普通の若者で……
「せ、先生……」
「へ……」
俺と対峙する魔神が、一瞬だけミアに戻った。わずかばかり漆黒のオーラが消えている。
「ミ、ミア! ミアなのか!?」
「はい。……ですが、私のことは気にしないでください。ぜひ……殺してください」
呟くミアは泣いていて。
そんな彼女を見るのは初めてで。
言いしれぬ感情が、俺のうちに高まった。
「楽しかったです。それと大好き……で……」
震える手を差し出してくる少女。
――が、叶わなかった。
『グオオオオオオオオオ!!』
忌々しい靄がミアを包み込む。かつてキーア・シュバルツに憑依していたものと同質のものが、ミアを呑み込んでいく。
「ハァァァァァァ……」
そして靄が消え去った頃、そこにもうミアはいなかった。
深紅の瞳をたぎらせ、漆黒と濃紺の霊気をたぎらせた、魔神ミア。かつて俺を苦しめた魔神シュバルツと比肩する悪魔。
「ミア……」
……これはなんだろうか。
怒りか。悲しみか。
いや――どっちでもいい。
「おおおおおおおっ!!」
激動する感情を解放するかのごとく、俺は高らかに叫ぶ。
EXステータス解放。
灼熱のような霊気が、俺の全身を包み込んだ。
「ミア……待ってろよ。君は、必ず俺が助ける!!」
「グオオオオオオオッ!!」
いまだ奇声をあげる魔神へ、俺は全力で疾走する。
景色が高速で後ろに流れ。
空気と一体化した感覚を味わいながら、俺は剣を抜く。
跳躍。
一閃。
魔神が片腕を掲げ、防御の姿勢を取る。
金切り音が鳴った。
「…………!」
俺ははっと目を見開く。
魔力を錬成し、疑似的に剣を再現したようだ。
いま魔神の右手には、濃紺に透き通った剣が浮かび上がっている。
それを用いて俺の攻撃を防いだらしい。
「ガアアアッ!」
お返しとばかりに、今度は魔神が剣を振りかぶる。
すさまじい力だった。
俺はいったん後方に退いて体勢を立て直す。
だがそれを許す魔神ではない。
俺が着地をする暇さえ与えず、次々と剣撃を浴びせてくる。
その威力、スピード、どれをとっても最高峰。
まさに最強をも超えた神の領域。
だが。
「ぬおおおおおおおっ!」
俺だって、こんなところで負けていられない。
守るものがある。
世界を。大事な生徒を。ミアを……!
そう思った瞬間、俺の体内に巡る魔力がさらに高ぶった。全身を漂う熱気が密度を増す。
――――
■レベルが上がりました。
アシュリー・エフォート
EXレベル 20
攻撃力 660801
防御力 649983
魔力 809833
魔法防御力 780943
俊敏 723345
EXスキル
神へと至る道
★神眼(小)
――――
ステータスメッセージが浮かんでくる。
新しいスキルが追加されたようだ。残念ながら、じっくり眺めている余裕はないが。
――と。
「ガアアアアアアッ!」
なんと表現すればいいだろう。
魔神の次の行動が、見えた気がした。
いま俺の視界には、剣を振りかぶっている魔神が赤いシルエットで映っている。
だが実際の魔神はそこにいない。俺との距離を詰めようと、疾駆している最中だ。
「…………!?」
俺は驚愕に目を見開いた。
なんと、数秒前に視えた赤いシルエットと、まったく同様の攻撃を行ってきたからだ。
もちろん、俺はこれを難なく回避。
大きな隙が生じた魔神に向けて、左腕を突き出す。
魔力解放。
「終焉魔法が二……ブラッドネス・エクスプローラ」
秘密裏に身につけた終焉魔法を、俺は発動した。
2/10発売! あと7日!
さらに熱く、面白く……編集部の方々と協議しながら、いっそう磨きがかった書籍版を2/10に発売します!
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よろしくお願い致します(ノシ 'ω')ノシ バンバン