凡人、真相にまた一歩近づく
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ふぅ……
生徒たちの様子を見て、俺は安堵の息をつく。
どうやら無事に道を切り開いたようだな。
特にリュア・レインフォートに関しては、剣技のみならず、精神面でも大きな成長が見て取れる。正直ここまで狙ったつもりはなかったが、まあ結果オーライだろう。
――それだけじゃない。
「しかしな。ミア。距離を感じるという意味じゃ、私だって同じものを感じてるぞ」
「はい? 私にですか?」
「当たり前だろう。おまえがなにかしら隠し事をしているのは、みんな察してることだ」
「ふふふ。時期がきたらお話しますよ。それまでお待ちいただけますか?」
「ほ、本当だろうな……?」
リュアもミアも、さっきまでよりだいぶ仲良くなったように見える。
極限の戦闘に身を置くことで、心が通じ合ったのかもしれないな。かつての俺とアガルフのように。
うん。
こういうのを見ると、どうしても《青春》という言葉を思い出してしまう。俺は寂しいまんま春を終えてしまったが。
と。そんなことはいい。
「二人とも……静かに」
「え……?」
俺が表情を引き締めると、リュアとミアも空気を察したのか、素直に押し黙る。
瞬間。
周囲の空間が――変わった。
あれだけ面妖な雰囲気を漂わせていたのが、綺麗さっぱり消えてなくなったのである。天を突き刺す大樹も、そこかしこに生えている雑草も、なにもかもがない。
ただ真っ白な空間が、地平線の彼方まで広がっているのみ。
「こ、これは……!?」
目を見開くリュアに向けて、俺は静かに言う。
「おそらくだが、ダークマリー――邪神が倒れたことで、空間が元に戻ったんだろう。そして……」
俺が視線を送る先には――数えるも夥しい人の群れ。
みな意識を失っているようで、倒れたまま身じろぎもしない。こちらが声をかけても、まるで無反応だ。
「……なるほど」
人の群れを見下ろしつつ、ミアは真剣きわまる表情で頷いた。
「これこそが、かの邪神が言っていた《実験》ですか……」
「だろうな。その真意まではわからないが」
詳しいことは不明だが、ダークマリーは《悲しみ》がどうだとか言ってたな。魔神シュバルツを呼び出したときのように、どうせまたロクでもないことを考えているんだろう。
「しかし、困りましたねぇ」
ミアが思案顔で頬に手を添える。
「これだけの大所帯……いったいどこで匿えばいいのやら」
「え……王国軍に預ければいいのでは?」
リュアが当然のことを口にするが、俺は苦笑を浮かべることしかできなかった。
「それは山々だが……。うーん、難しいだろうな」
元々、邪神族は国とも手を組んでいる。ダークマリーもさきほど、《ユージーン大臣の許可を得ている》と言っていたはずだ。
それがわかっていて、王国軍に引き渡すことはできない。冒険者ギルドならワンチャンいけるだろうか……? うーん、微妙だ。
(というか、なんでミアはこんなことまで知ってるんだ……?)
俺が内心でツッコミをいれた、その瞬間。
「――仕方ないのう。妾が彼らを引き受けてやるぞい」
聞き覚えのある声が、一帯に響きわたった。
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