凡人は最強へと近づく
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「お、おまえは……!」
知らず知らずのうちに視線が鋭くなってしまう。
邪神族。
ルハネスやサヴィターを筆頭として、世界に《殺戮と闘争》をもたらそうとする組織。
まさかとは思っていたが、本当に潜んでいやがったとは……!
「せ、先生。あいつ、いったい何者ですか……? あの闘気、普通じゃない……」
リュアはさすが凄腕の剣士というだけあって、邪神の強さをすぐに見抜いたようだ。青白い表情で剣を構えている。
「ふふふ……彼が邪神ですか」
一方のミアは変わらずの余裕っぷりだが、相手は邪神。油断はできない。
「リュア、ミア。君たちは下がってろ。あいつはやばい」
俺はそんな彼女たちを庇いつつ、一歩前に出る。
相手は神だ。
ゴブリンとは訳が違う。
そんな俺たちの様子を見て、邪神は含み笑いを浮かべる。
「くくく……アシュリーよ。転生の儀式以来か。本当に強くなったものだ」
「……ふん。あの場にいたってことかよ」
「もちろんだ。あのときのおまえとはまるで違う。かつての傀儡――アガルフ・ディペールなど、とうに追い越しているようだね」
「アガルフ……」
「国が呼び寄せたという転生者ですか……。そういえば、すっかり名前も聞かなくなりましたね……」
俺の後ろで生徒たちが呟く。
アガルフ・ディペール……
魔神を討伐してから会ってないが、いまはなにをしているのだろうか。
気になるところではある。だが、いまはそれどころじゃない。
俺は集中を切らさないまま、邪神を見据えて言った。
「答えろ。おまえ……こんなところでなにをしている」
「ふふ。教える義理はないな」
「…………」
当然ながら、邪神に答える気はないようだ。
こちらから尻尾を掴まなければならない。
――と。
ふいに、俺はあるものに気づいた。
それからおもむろに剣を鞘から抜き取ると、
「おおおっ!」
短い叫声とともに、近くにあった大木を切り裂いてみせる。
その、瞬間。
「ガアアアアア……ッ!」
なんと、近くに潜んでいたらしい人間たちが、野太い悲鳴をあげて倒れるではないか。全員、俺たちに奇襲をかけるつもりで待ち構えていたようだ。
しかも、この人間たちは……!
「おい邪神ども……」
俺はあらん限りの怒りを込めて、邪神を睨みつけた。
「まだ転生の実験をやっているつもりか! これ以上の犠牲は許さんぞ!」
「ふふ。さすがだな。気づかれるとは」
反して、邪神は薄ら笑いを浮かべるのみ。
そう。
俺がいま無力化させた人間たちは、かつてサヴィターが使役した実験体に酷似している。転生に失敗し、使い道のなくなった人間たちを、思うがままに操っているのだ。
「…………っ!」
背後のリュアが、ぎゅっと俺にしがみつく。
邪神はそんな俺たちの様子を楽しんでいるのだろうか、変わらずヘラヘラ笑いながら続ける。
「だが……ひとつだけ間違っているな。これは《転生の実験》ではない」
「なに……」
「言うなれば、そう……新たなる実験。我々の目的を達するためのな」
瞬間。
「あああぁぁぁっぁぁあああ……!」
どこか遠くから、誰か見知らぬ人間の悲鳴が聞こえてきた。いわく例えがたい、恐ろしいほどの《悲しみ》に包まれているかのような。そんな叫び声だ。
「なるほど。今度はそれで《殺戮と闘争》を引き起こすつもりですか」
さっきまで俺の背後に隠れていたミアが、突如、俺の隣に歩み出る。
「かつて転生者は、魔神を呼び寄せるために召喚されました。今度は……なにをするつもりですか」
「ほう……?」
邪神が目を丸くする。
「これは驚いた。ずいぶんと事情に詳しいようだな、小娘よ」
「ふふ。褒めてもなにも出ませんよ♪」
「まあいい。――とにかくサヴィター様のお達しでな。実験を邪魔されるわけにはいかんのだよ。もし刃向かうのであれば……」
言いながら、邪神はパチンと指を鳴らす。
その瞬間だった。
「グオオオオオオオッ!!」
突然、俺たちの周囲を十体もの化け物が囲い込んだ。
漆黒に塗られた全身、禍々しいほどに尖った両翼、殺意の込められた紅い眼……
忘れもしない。
かつてファトル村を襲い、甚大な被害を出した災害級の魔物――漆黒竜だ。
「な、ななななんだこれは!?」
リュアが仰天したように目を見開く。
「漆黒竜……! これは予想外でしたね……!」
ミアもさすがに肝が抜けたか、数歩後ずさっている。色々と事情に詳しいとはいえ、彼女は武力に関しては本当に学生レベルなのだろう。演技ではなく、本気で表情が青ざめている。
「なるほど……そうか。そういうことか……」
そんな生徒たちを守りつつ、俺はぽつりと呟いた。
「ファトル村で都合よく現れた漆黒竜……。やはり、おまえたちの仕業だったか……!」
「ふふふ……はーっはっはっは! わかったところでどうする! しょせん人間ごときでは、十体もの漆黒竜には適うまい!」
「そうだな。だったら……人間を超越すればいいだけだ!」
――EXステータス解放。
かつて魔神シュバルツを倒したことにより、俺のステータスはさらに上がっていた。
――――
アシュリー・エフォート
EXレベル 10
攻撃力 620904
防御力 603267
魔力 679871
魔法防御力 649851
俊敏 619456
EXスキル
神へと至る道
――――
「えっ……」
「なんだと……!?」
リュアやミア、そして邪神までもが、大きく目を見開いた。