凡人、久々の再会を果たす。
俺の《転移術》によって、周囲はのどかな村風景へと様変わりした。
一面に広がる緑に、ところどころに立ち並ぶ木々、あちこちに点在する家屋……
エストル村。
俺とマリアスの生まれ故郷だ。
「え……」
「な、なにが起きたんだ……」
ミアとリュアは目をぱちくりしたまま立ち尽くしている。
――ま、最初は誰だって驚くよな。
俺は苦笑を浮かべつつ、二人に振り返りながら言った。
「転移術。行ったことのある場所なら一瞬でワープできる魔法さ」
「な……!」
真っ先に反応を示したのはリュアだ。
「そ、それは一流の魔術師のみが使えるという……?」
「そうだな。魔力の使い方さえ覚えれば、それほど難しいことでもない」
「……信じられない。アシュリー先生は、剣だけでなく魔法もお使いになられるというのですか……」
「はは。まあ、これくらいできないとSSSランクは務まらないさ」
いまだ呆然としている二人。
衝撃が依然抜けきれないようだが、こんなところで時間を潰している場合ではない。
臨時教師を任された以上、有意義なことに時間を使わないとな。
俺は両手を大きく広げると、務めて笑顔をつくりながら言った。
「エストル村へようこそ! 二人には近くの洞窟を攻略してもらおうと思ってる。――けど、その前に村長に挨拶しとかないとな」
「「は、はいっ……」」
二人の生徒を引き連れて、俺は村長の宅へと向かうのだった。
★
村長は農作業に励んでいるところだった。鍬を懸命に降っていた手を止め、
「ん……?」
と目を細めてくる。
「アシュリー……? アシュリーではないか!?」
「はは。お久しぶりです、村長」
ぺこりと頭を下げる俺。
「ま、ままま待っておれ。すぐに向かう」
村長はそう言うと、近くで農作業をしていた者に合図を送り、俺のもとへ歩いてきた。
「すみません。お忙しかったですか?」
「いいんじゃよ。もうすぐ一区切りするところじゃ」
そして俺の生徒二人に目を送る。
「はて。アシュリーよ、この子たちは……?」
「俺の生徒たちです。ははは」
「な、なんじゃと……!?」
村長はそれはもうぎょっと目を剥いた。
俺は苦笑を浮かべつつ、これまでの経緯を軽く説明した。
転生者アガルフ・ディペールとの決着。
魔神シュバルツとの戦い。
そしてSSSランクとなり、リングランド魔術学園の臨時教師を務めていること。
「ほ。ほぉ……」
その間中、村長はずっと魂消た表情をしていた。
「信じられん……。おぬし、とんでもない経験をしてきおったな……」
「はは。おかげさまで」
「ところでマリアスはどこにいったのじゃ? ずっと一緒だったんじゃろう?」
「マリアスとは一時的に離れています。いずれ合流することになりますが」
さすがに女神のもとで修行をしているなんて言えなかった。
「マリアス……」
「ニュース記事によると、アシュリー先生の仲間のようだな」
「どうなのかしら? その、お付き合いしていたり……」
後ろで生徒たちがコソコソ話をし始めたので、俺は「こほん」と思いっきり咳払いをしておく。
「ところで村長。村外れの洞窟の鍵をいただけませんか? そこで実戦を積みたくて」
「ほ。なるほど。そういうことじゃったか」
そこでふいに、村長が目を泳がせる。
「それ自体は構わぬが……どうも、あの洞窟に見知らぬ人間が出入りしている……という噂が立っておってな」
「え……そうなんですか?」
「うむ。鍵が開けられた痕跡もないし、おそらく見間違いであろうとは思うのじゃが。充分気をつけるのじゃぞ」
「は、はい。わかりました」
あの洞窟に出入り?
鉱物などの資源が沢山あるわけでもないし、いったいなにが目的なのだろうか。
よくわからないが、現時点ではなにもわからない。
俺が頷くのを確認すると、村長は急ぎ足で鍵を取りにいってくれるのだった。
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