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凡人、花の学園生活へ

 翌朝。


 依頼の受付を済ませた俺たちは、さっそく現場に向かうことになった。


 リングランド魔術学園。

 すなわち、国内中から有能な若者が集う場所。


 学費もべらぼうに高く、おいそれと入学できる場所ではない。

 だが優秀な若者に対しては、国も援助を惜しまない。


 各地の村長や町長が推薦した者で、かつ家庭の経済状況が芳しくない若者に対しては、国が教育費を全額負担する。


 そのようにして、有望な若者を逃さないようにしているのだ。


 我がリングランド王国が他国を差し置いてダントツの国力を誇っているのは、そういった教育面の投資を惜しんでいないからだ――と、むかし、酔っぱらった上司の話を聞いたことがある。


「ふふ、アシュリー君よ。緊張するかね」


 王都。

 学園へと繋がる歩道を、俺とルラエンドは隣合って歩いていた。


「そりゃ緊張しますよ……。SSSになって初依頼ですし」


「はっはっは。そうか。むしろ私は楽しみすぎて鼻血が止まらないがねぇ」


「へ。鼻血?」


「だってそうだろう!?」

 ルラエンドがくわっと目を見開いて顔面を近づけてきた。

「学園といえば! まだうら若き乙女たちが集う禁断の場所じゃないか! まだ熟しきっていない果実に、迸る汗……想像するだけで鼻血が……っ!」


「は、はぁ……」


 意味がわからん。

 セリフが完全におっさんのそれだ。


「昨日も思いましたが……ルラエンドさんって、そっちの趣味があったんですね」


「ふふふ、なあに褒めてくれるな」


「褒めてはいません」


「しかしまぁ、勘違いしないでくれたまえ。これはあくまで嗜み・・。あくまで恋愛対象は男性さ」


「そ、そうなんですか……」


 深く突っ込むと終わらなくなりそうなので、これ以上は聞かないことにした。初依頼に支障があってはいけないからな。


 そのようにして、何分ほど歩いただろう。

 少しずつ、学園の外観が見えるようになってきた。


 ただっ広い校庭に、いくつもの建物が軒を連ねている。教室が並ぶ《本堂》や、主にスポーツを執り行う《ホール》など、用途に応じた様々な建造物があるわけだ。


「ひ、広いですね……」


「ふふ。そりゃ国が積極的に支援している学園だからねぇ。我々の責任も重大だよ」


「そう言われると改めて緊張しますよ……」


「まぁまぁ。ひとまず学園長に挨拶しよう。話はそれからさ」


「はぁ……」


 ベテランSSSランクに言われるがまま、俺は人生で初めて、国内随一の学園に足を踏み入れたのだった。


 そこで俺たちは初老の学園長に挨拶を済ませると、すぐに教室の案内をしてもらった。


 臨時教師とはいえ、期間中は生徒の《担任》も務めてほしいとのこと。また専門分野の座学はともかく、王国の歴史や地理など、基本的なことは教えてほしいと言う。


 幸いにして、俺は兵士に入隊する前に最低限の知識は詰め込んでいる。ルラエンドにしてもそれは同様だ。道中でそんな会話をしつつ、学園長は教室の前で立ち止まる。


「ここがアシュリー殿に受け持っていただく教室じゃ。だいたいの経路は覚えたかの?」


「ええ……大丈夫です。生徒はもうなかで待ってるんですか?」


「うむ。心待ちにしておると思うぞ」


「はは……そうですか……」


 なんだか改めて緊張してきたな。

 ちなみにルラエンドの教室はこの隣だ。


「詳しいことは依頼書に書いた通りじゃ。なにか不明点があれば遠慮なく尋ねてきてほしい。なにか質問はないかの?」


「いえ……大丈夫です」


「私も特にはないな」


「うむ。うむ。では二人とも、よろしく頼んだぞ」


 学園長はよぼよぼした動作で頷くと、満足げに引き返していった。


 どうやら、この《臨時教師》について、学園長もほとんど聞かされていなかったっぽいな。ユージーン大臣に頼まれて、指定の学生の教育をすることになったらしい。その思惑まではわからないが。


「ルラエンドさん。では……行ってきます」


「うん。互いに頑張ろうじゃないか」


 ルラエンドは別れ際にいつもの笑顔を浮かべると、

「おはようッ!!」

 と隣の教室に意気揚々と入っていった。


 あの人は緊張ってものを知らないのか。


 俺は数秒間だけ苦笑を浮かべ、そして意を決し、教室に足を踏み入れた。

 

 

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