表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/100

凡人、好意を寄せられる。

 その言葉を待ってたって……


 やっぱり、そういうことかよ。


「リアヌ、おまえ……」


「ふっふっふ。そういうことじゃ」

 ジト目で睨む俺に、リアヌは誇らしげにウインクする。

「マリアス。おぬしのその《おとめちっくな心》はきっと今後に役立つ。なればこそ、妾とともに来てくれまいか」


「わ、私が……女神様の修行を……?」


「うむ。ただし特訓の内容は超ハードじゃぞ。ダーリンなんか思いっきり妾の胸にダイブしてきたからな」 


「え、そうなの?」


「ちげーよ!」


 どさくさに紛れてとんでもないことを言うもんだ。そんなことするわけないだろ。


 ……でも、リアヌの胸か。

 この女神、スタイルはめっちゃいいからな。まったく考えないこともない……って、いかんいかん。三百年近くの修行を経ても、ムッツリスケベは変わらないな。


「む、むー……」 

 俺のそんな様子を見て、マリアスがなぜか頬を膨らませる。

「そういえばずっと気になってたんですけど……アシュリーとリアヌさんは、本当に師弟関係ってだけ・・ですか? どうもそれだけじゃないような……」


「フッフッフ。よくぞ気づいたな。妾とダーリンは一生を誓う仲で……」


「おい! おまえはそれ以上喋るな!」


「むむむ……! 一生を誓う仲……」


 歯ぎしりをするマリアスに、俺もちょっと疲れながら突っ込みを入れる。


「だから、おまえも信じるなって……!」 


「だってリアヌさん、アシュリーのことをずっと《ダーリン》って……」

「ふっふ。ダーリンはダーリンじゃからな♪」


「も、もういい……」


 放っておいたらとんでもないことを言い出すんだから手に負えない。これが一対一だったらまだしも、いまはマリアスまでいるもんな。厄介レベルがさらに増したというか…… 


「アシュリーを取られたくなくば、這ってでも修行するんじゃな。弱い者は足手まといになる――そのことがよくわかったじゃろうて」


「そうですね……。私、頑張る……!」


 もうどうにでもなれ……

 俺はひとりため息をつくのだった。


 ――一方その頃、邪神族たちが新たな動きを見せていることも知らずに……


  ★


「グオオオオオオオッ!」


 漆黒竜の咆哮ほうこうが甲高く響きわたる。たったそれだけで周囲に衝撃波が発生し、近隣の建物は崩壊、住民たちも次々と倒れていく。かなりの殺傷力を誇る衝撃波で、それをまともに受けた住民たちもただでは済まないはずだが、漆黒竜と対峙する二人は彼らを歯牙にもかけなかった。


 すなわち。

 第一の転生者、アガルフ・ディペール。

 そして第二の転生者、レイリー・カーン。


 二人の興味は弱者にはない。住民の生死など、彼らにとっては些事でしかなかった。


「ひぇえ……た、助けてくれ……うわぁぁぁぁあっ!」

「パ、パパぁ!」

「怖い! 怖いよッ!」


 衝撃波によって動けなくなった住民らの頭上から、倒壊した建造物が勢いよく落下した。ドシンという轟音が鳴り響いた後は、もうなんの悲鳴も聞こえない。


 その様子を鼻をほじって眺めながら、アガルフは再び漆黒竜を見据える。 


「ってか、あいつ思ったより手応えあるな。俺とおまえ二人がかりで、ここまで持ちこたえるたぁよ」


「ふふ。そうですねぇ」

 転生者レイリーは黒縁眼鏡の中央部をくいっと持ち上げると、にやりと笑った。

「それでも、僕たち二人が結成すれば取るに足らない相手です。最強剣士に最強魔術師……その二人がパーティを組んでいるんですからね」


「ハッ、違いねーな」

 アガルフは自身より低いところにあるレイリーの顔を見下ろすと、嫌らしい笑みを浮かべる。

「とっとと倒して《漆黒の宝眼ほうがん》ってのをいただこうぜ。そうすりゃ俺たちはまたしても英雄だ」


 漆黒の宝眼。

 それは万病に効くとされる奇跡の薬。 


 現在とある街で原因不明の奇病が流行っているらしく、それを治すには漆黒竜の眼がいいらしいのだ。だが漆黒竜は《現地人》には相当厄介な存在で、誰も手を出すことができない。そのためアガルフたちが出向いたわけだ。 


 なんでも、その街出身の重鎮がいるのだとか。だから国王直々に、アガルフたちに漆黒竜討伐を頼んできたのだ。


「頑張りましょうアガルフさん。漆黒竜を倒すことができれば、僕たちはまた英雄になれる。ミレーユちゃんもきっと惚れてきますよ」


「ふふふ……そうだな。頑張るか! この国のために!」


「う、うわあああああああっ!」


「ゆ、勇者様! どうか、どうか我らにもご慈悲を……うわあああああああっ!」


 またしても近くで住民たちが落下物に巻き込まれるのを遠目で見やりながら、アガルフたちは漆黒竜に攻撃を仕向けていった。

お読みくださいましてありがとうございます。


すこしでも面白いと感じていただけましたら、


ブックマーク、

評価(下のボタンからできます)


をお願い致します!


また先日レビューくださった方もありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
さて、早いところではすでに書籍発売しているようです! 書籍版は編集部の方と激論を交わして、さらに面白くなっています! また限定SSやカバーイラストのDLもつきますので、ぜひ買ってくださいますと嬉しいです! 私の作品を読んで、人生が変わるほど楽しんでいただけたら……これ以上のことはありません。 下記の表紙画像をクリックしていただけると作品紹介ページに飛べます。 よろしくお願い致します(ノシ 'ω')ノシ バンバン i000000 ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ