戦いの結末は
更新が開いてしまったので、最初にネタバレを含んだあらすじを記載しています。ご注意ください。
●前回までのあらすじ
舞台はアシュリーがSSSランク就任の叙任式。その会場。
穏やかに会が進む最中、会場に突如銃声が響きわたる。
犯人はミア。彼女は邪神族に取り込まれ、ガルーア帝国の魔導銃でユージーン大臣を射殺してしまう。
混乱に陥る会場。
さらにはリュアの父――オルガント・レインフォートまでもが敵側だったことが判明する。その正体は転生者。圧倒的な力でもってアシュリーたちに立ちふさがる。
アシュリーは、魔神と化したミアを守るために戦い。
リュアとキーアは、最強の剣客オルガントと戦う。
絶体絶命のピンチに陥ったとき、マリアスやガルムたちが駆けつけ、勝負は佳境に入る――!!
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「あ……」
俺は思わず、掠れた声を発する。
マリアス・オーレルア。
彼女の放った濃紺の可視放射が、ミアを取り込み。
最初は奇声をあげて暴れていたミアが、少しずつ落ち着きを取り戻しているのだ。と同時に、身体からドス黒いオーラが抜けているのが感じる。
あのオーラには見覚えがあった。
かつてキーアが魔神シュバルツに取り込まれていたときも、同様のオーラがあった気がする。あれが抜けているということは……
「ああっ……」
ミアは一際大きな声をあげ。
ばたりと、その場に崩れ落ちた。
「ミアっ……!」
急いで彼女の元に駆け寄り、上半身を抱き起こす。
「ミア! 大丈夫か、ミア!!」
「んんっ……」
よかった。
無事そうだ。
体温が異常に高いし、全身の汗もすさまじく流れているが……命に別状はなさそうだ。
と。
その可憐な瞳が、ゆっくりと見開かれた。
「あら……アシュリー、先生……?」
「ミ、ミア……?」
「先生。これはいったいどういう……?」
「ミア! よかった、無事だったんだな!」
我を忘れ、俺は思い切り生徒を抱きしめてしまう。
シチュエーションが違えば立派な犯罪になってしまうが、構っていられなかった。
こんなにも……こんなにも。
「よかった……君が無事でいてくれて……!」
「あっ。その、アシュリー先生っ」
いつもの調子はどこへやら、ミアは顔を赤くしてされるがままになっている。
「もう、大丈夫です。私のなかの魔神は……いなくなりました」
「そうか。本当なんだな……!?」
「もう。心配性なんですから」
だとしたら、リアヌやマリアスのおかげと言う他ない。
彼女らが助太刀しにきてくれなければ、いつまでも泥仕合を続けていたに違いないから。
「マリアス。ありが――」
俺がお礼を言いかけた、そのとき。
「ぬおっ……!」
また別のところで、男の悲鳴が聞こえてきた。
振り返れば、最強の剣客――オルガント・レインフォートが膝をついているのが見える。
「ぐぬ……ふ、ふふふ。リュア。さすがに予想外であったぞ。この土壇場で……かような剣技を繰り出すとはな」
「父上……」
対するリュアもかなり満身創痍だった。
親子ともども、大剣を床につきたて、それをもって自身を支えている。疲労のためか、遠目でも全身が震えているのが見て取れた。
その姿勢は――二人ともまったく同じで。
俺は否でも応でも、親子という言葉を思い出さずにはいられなかった。
「私はまだまだ未熟です……父上。ひとりでは、あなたの境地にはまだまだ至っていない……」
「ふふ。案ずるでない。《最強の剣士》と呼ばれた私が膝をついてしまったのだ、自信を持ってよかろう」
「父上……」
「私は嬉しいぞ。アシュリー・エフォート……良き師を持ったようだな」
「はい。短い期間なれど、アシュリー先生から学べたものは数多くありました」
「ふふ、そうか……」
そこまでの会話のあと、オルガントはさすがに限界がきたのか、「ぬおっ……!」と姿勢をよろめかせる。
「よいか、リュア。間もなく激動の時代が始まる。たとえ強大な力が襲いかかろうとしても――自分を見失うな。よい、な……!」
そこで意識が途切れたのだろう。
オルガントはその場でうつ伏せになり、動かなくなった。
むろん、彼ほどの傑物が容易く死ぬわけはない。気を失ったのだと思われた。
「もちろんです、父上……」
リュアもそれだけ呟いたあと、父と同じ姿勢でうつ伏せに気を失った。