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第2話 ムーン イズ ハッシュ ミストレス

基本コメディですがたまに、残酷な表現があります。

 俺は、気がつくと

 帰宅するために、家に向かって歩いている途中だった。

 な、なんだ?

 おかしいぞ。おかしいだろう。

 気がつくと、『家に向かって歩いている途中』っておかしいだろう。

 でも、自分の事なのでまちがいようが無い。気がついたら、確かに俺は、歩いている途中だったのだ。

 それにしてもだな。

 あんな気の失い方して、目が覚めたら歩いている途中っておかしすぎるだろう。

 あんな気の失い方して……あれ?変だ?どんな、気の失い方をしたんだ?

 なんで、俺は気を失ったんだ?

 頭に霧が被ったようにうまく思い出す事ができない。

 道ばたで頭を抱えて、ついさっきの出来事を思い出そうとする。

 少しだけ、少しだけ、思い出したぞ・・

 いくつかのキーワードが頭に思い浮かぶ。

 …デカチチ…ノータリン……貧乳…

 うーむ、なんだか単に俺は欲求不満の変な奴みたいなキーワードだな。

 なんだか思い出すのが嫌な気分になってきた。

 そんな事を思っていたら、不意に思い出した。

 あの光景を…


 血の海の真ん中で。

 バラバラに刻まれ累々とつまれる死体の山の真ん中で。

 天使の様に微笑む先輩を


 『貧乳』と呼ばれて逆上する楠さんを


 そして死体を投げ合う二人のシュールな光景を





「楠さん」

 俺が声をかけると彼女は本から顔を上げた。

「はい?」

 まるで何事も無かったかのような平穏そのものな表情だ。


 次の日の朝

 俺は登校するとすぐさま、クラスの一番後ろの席にいる楠さんに声をかけた。

 楠さんはいつもどうりに誰よりも早く登校してきていた。

 朝の光が差し込む明るい教室で、いつもどうりに静かに分厚いハードブックの小説を読んでいる。

 こっそりと本の題名を盗み見ると『月は無慈悲な夜の女王 』と言う題名だ。

 どんな内容の話なのか想像もつかない。

 とにかく難しそうな本ではあるが、とりあえずは今は、本の内容は関係無い。

「昨日の事なんだけども」

「昨日のことって?」

 そう言って楠さんは少しだけ首を傾げて、眼鏡の奥から俺をのぞき込む。

 楠さんの口元にはやさしい微笑が、自然に浮かんでいる。

 楠さんはまったく動じた様子はない。普通に世間話をしている感じだ。

 昨日の出来事は、俺の夢か、はたまた妄想だったのだろうか?

 普通に考えれば、あんな事が起こるはずが無い。

 なんだか不安になってくる。

 でも、

 確かに、あの光景だけは俺の脳裏に焼き付いているのだ。

 俺は気をとりなして聞いてみる。

「昨日のあの死体の事なんだけど…」

 気のせいかも知れないが

 楠さんの眼鏡が、ギラリと鈍く光った気がする。

「死体?」

「昨日、先輩が殺したグゲッキィ!!」

 俺は思わず奇声をあげていた。

 楠さんの肘打ちが、みぞおちにクリティカルヒットしたのだ。

 周りからは、俺の体が影になって見えない絶妙な角度だった。

 俺が急に奇声をあげたようにしか、周りの人間には見えなかっただろう。 

「どうしたの?急に発情期のオオアリクイみたいな奇声をあげて?」

 しれっと、楠さんが聞いてきた。

 俺は反論しようと試みるけど、ゼハゼハと変な呼吸を繰り返すだけだ。

 あまりにも見事な肘打ちをみぞおちに喰らったせいで、まともに呼吸もできない。

「大丈夫?え?お腹が痛いの?それは大変!すぐに保健室に行かないといけないわね。ちょうどいいわ、私保険委員なのよ。連れて行ってあげるわね。」

 ものすごく説明的なセリフを、誰に言うとも無く言ってから立ち上がる。

 そして楠さんは俺の手をつかんで無理矢理に廊下にひっぱり出しそうとする。

 俺は訳が解からず、思わず足を踏ん張って抵抗してしまった。

 その瞬間

 楠さんはさり気無く、俺の手首を捻り上げる。

 !!!

 激痛が手首から頭のテッペンまで駆け抜ける。

 楠さんは、手首の関節を極めたまま無理矢理にグイグイと俺を引っぱっていく。

 アダダダダダダダダ

 俺は

 声にならない悲鳴をあげながら楠さんに必死についていくのがやっとだった。


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