真希のいない世界 01
*優雅視点です。
この世界は真希がいない、優雅が生きる平行世界。
俺や真希のことをシンヤ達に話して2年がたとうとしている。俺は母親達や、学校ではシンヤとレイナの助けもあり留年の危機を乗り越えて高3になった。日常生活は何とかこなせるが、今でも真希を思い出すと何も手につかなくなる。
真希がいないと俺は駄目で、真希をそんな風にしてしまったのは他の誰でもない自分だ。
「おい優雅、いい加減そのプリントを前に回せ」
また真希のことを思い出して現実逃避していた、そんな俺を現実に引き戻したのは目の前で呆れた顔をしたシンヤの声だった。1年の頃から同じクラスで席も近くなるという腐れ縁の親友。今は俺の前の席がシンヤの席だ。
こいつがいたから、俺は...。
「優雅?真希ちゃんのこと考えるのは家に帰ってからにしような」
怒ることの少ない、いや、いつも冷静なはずのシンヤの顔に怒りマークがたくさん見える気がする。それでいて、笑顔であることが恐すぎる。さすがに、かなり怒らせているらしい...俺はそんなに長く担任が回収しているプリントを出さずにいただろうか。
「俺が悪かった、シンヤ...頼むからその般若みたいな顔をしないでくれ」
シンヤのそういう顔はマジで恐い。俺は手元のプリントを素早くシンヤに渡した。真希のことばかり考えて、学校生活ができないとシンヤに怒られるのが2年前とは違う日常になった。
「桜木、姫野が亡くなってもう2年だ。そろそろ現実を見てこれからの未来を考えることを姫野だって望んでるんじゃないのか?」
教卓にいる担任が心配そうな顔をしてそんなことを言う。今の担任は1年の時に真希の担任をしてたからか、俺のことも知っていて気にかけてくれる。真希は、この学校では高1で事故死したことになっているからだ。
当事者達以外に、本当のことはシンヤとレイナ以外は知らない。
「そう、ですね...」
俺がそう答えれば担任は少し安心したように笑い、今日のHLは終わりだと言う。日直が終礼の挨拶をすれば今日はもう帰るだけだ。
俺は真希がいなくなった後、部活は辞めた。シンヤも今は部活を引退したから、隣のクラスのレイナも含めていつも3人で帰っている。
「お前が前を向くのは真希ちゃんの存在無しじゃ無理だと思うけど?」
担任が教室を出て行った後、シンヤはタイミングを見計らったように言ってきた。その顔はいつものからかっている時のニヤリとした顔だ。
シンヤの言うことも、すごく俺は理解できて納得できる。確かこの前は2年の時のクラスメイトに“新しい女作れ”なんてアドバイスされたその場にもシンヤはいたが、“真希ちゃん以外になんて優雅の眼中にないだろう”って笑い飛ばしてた。
「お前は俺に新しい女作れなんて言わないのは分かってる。それに真希以外になんて、興味ねぇ」
「だから真希ちゃんの苦労が今の俺にきてんだろ」
あの後、シンヤ達には真希の持っていた強い霊力や、マンガとかSF映画の作り物みたいな、パラレルワールドの存在があるなんてことも話した。
あいつらが理解したかなんて分からない。それでも_____
「ねえ、今日も真希の家に行くんでしょ?」
俺達が遅いから来たらしいレイナの声が聞こえた。これも今の俺達の日常だ。




