2人が存在する、また別の世界で。
“優雅がいない世界の私”と“私がいない世界の優雅”が願った。
その願いが叶えられたのは、また別の平行世界だった。
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世界は違えど、廻り逢う2人の魂。
季節は夏。晴れわたった空の下、セミの鳴き声がうるさいくらいに響いている。高校の屋上。転落防止用の柵に寄り掛かって昼寝をしている男子生徒が1人いた。何やら寝言を言っている。
「んん...真希...」
そこへ、屋上の出入り口のドアが開き顔を覗かせる少女がいた。
少女は青年を見付けると嬉しそうに微笑んで眠る青年に駆け寄って行く。
「優雅先輩!また授業サボったんですか?」
青年の前に立ち、少女は彼を呼んで聞いた。
その少女に“優雅先輩”と呼ばれた青年は起きる気配はない。
「しかたないな、優雅...」
今度は“先輩”を付けずに青年を呼んだ少女は、青年をいとおしそうに見詰めている。彼が目の前にいることが、傍にいられることがとてもすごく嬉しい。
「ありがとう、優雅。私と同じことを願ってくれて...」
少女はそう言うと、そっと膝を折ると青年に近付いて彼の頬にキスを落とした。青年が起きないのをいいことに、少女は今度は青年の髪を撫で、次は先程キスを落とした反対側の頬を撫でた。
「...きゃっ」
突然に青年に、彼の頬を撫でていた手を掴まれたかと思うとそのまま引っ張られて少女は青年の腕の中におさめられてしまった。寝ていると見せ掛けて、優雅は起きているのだろうか?驚いて小さな悲鳴をあげてしまった。
少女は少し抵抗して離れようとするが、青年の腕は放そうとはせずに力を増して少女を抱き締める。
「ねえ、起きてるの?優雅先輩?」
困ったように少女は青年を見上げて名前を呼ぶ...いつの間にか青年は目を開けていたために彼の青色の瞳と視線が合った。子供の頃から見ている彼の青色の瞳は見慣れているはずなのに、吸い込まれるように綺麗で、何だかすごく恥ずかしい。
少女は思う、自分の顔は赤くなっているのではないかと。
「何やってんのかな?真希ちゃん」
ニヤリと青年が楽しそうに笑ってからかうように少女の唇を指でなぞった。“さっきこの唇で何してた?”と青年は言う。それだけで、今よりも自分の頬が熱くなるのが分かった。
青年に“真希”と呼ばれた少女は、悔しそうに青年を睨み付けている。
「睨んでも、可愛いだけだ。真希」
また青年は意地悪な笑みを浮かべながら、今度は少女を耳元で囁いた。これはズルすぎると思う...私の知る優雅は、こんなこと絶対にしなかった!!
少女はどうしていいか分からずに、固まることしかできない。そんな少女を先程よりもまたさらに青年は少女の頭を撫でながら抱きしめる。
「え?ちょっと、ゆう...」
また抱き締める力が強くなって苦しいと思いながら慌てて少女は青年の名前を呼んだが最後までは音にならなかった。何故なら青年の唇で少女の言葉は遮られてしまったからだ。
さらに青年は何度も角度を変えてキスをしてくる。恥ずかしいからやめてと彼の制服を掴んでも、今度は私の唇を軽く吸う、彼の強引な舌が私の口内を犯していくから...力が抜ける、優雅のことしか考えられなくなる。
「はっ...ゆう、が...」
息が苦しくて、本当にもう放してほしいと思った頃、唇は解放されたが私を抱き締める彼の腕は、私を放しはしなかった。
「もう、はなさないから...」
優雅がそんな言葉を言う。でもそれは、私のセリフだと思う。
ーーー優雅のこと絶対に、はなしたくない。
おばけの恋。~はなれたくない~の物語はこれで完結となります。この結末はハッピーエンドなのか悲恋なのかは私もどっちなんだろうと考えてしまいます。
お読みいただきありがとうございました。




