チェックイン 3
道がだんだん狭くなり周りの木が多くなる。
「そろそろモンスターでも出てくるころじゃ...」
『あれ何ー!!』
ヘキナの声を遮ってハヅキは前方に駆けていった。ハヅキの先にはピンク色の物体が見える。
「“解析”」
【ピンクスライムLv.2】
ピンクスライムは特に襲ってくる気配もなくただ好奇心旺盛なハヅキにつつかれてプニョンプニョンしている。
「王道中の王道だが、初戦闘!ハヅキちょっとこっちに」
『ん?』
パァァンッッ!!!
その時スライムが弾きとんだ。せっかく構えた剣もそのまま下げる。ハヅキのレベルアップのアナウンスが入った。
『ごめんなさいご主人。倒しちゃったみたい』
「おい!!」
横殴りを入れていないのでヘキナに経験値が入っていない。まさかハヅキのツンツンだけでモンスターを撃破するとか予想もしていなかった。ドロップした“72G”残っていた。
仕方がないのでモンスターを探す。すると【ブルースライムLv.4】が出現した。
“解析”は自動発動にも出来るみたいなので、自動設定にしておいてある。ハヅキには手を出さないようにとあらかじめ言っておいた。
「次こそは」
特に技も覚えていないので普通に狙いを定めて剣を振り下ろす。しかし、ブルースライムは一瞬でよけヘキナの顔に体当たりしてくる。振り下ろして体勢が乱れて居るヘキナには目の前に迫ってくるスライムが映る。
「うぁぁぁぁぁ!!!」
『ご主人危ない!!』
間一髪でハヅキの攻撃魔法“光球”がブルースライムに命中する。またスライムが弾きとび、ハヅキのレベルアップのアナウンスが入る。“68G”がヘキナの目の前に落ちてた。
しばらくするとまた【ピンクスライムLv.4】が出現した。
「三度目の正直だっ!!」
ピンクスライムに剣を思いっきり振り下ろす。手ごたえはあった。しかし...
「あれ?体力ゲージが落ちていない」
必死になってピンクスライムに剣で突き続ける。しかし、敵の体力ゲージは一向に下がらない。今までのんびりしていたピングスライムは急に攻撃をヘキナに向ける。剣で振り払おうにも剣はスライムを突き抜ける。
「うわぁぁぁ!!!」
『ご主人っっ!!!?』
またハヅキの“光球”が発動する。スライムは倒され、ハヅキはまたレベルが上がった。なんなんだこの仕打ちは。
『ダメでしょご主人、なんの付与もしていない武器で攻撃は』
「だってお前が最初に指でスライム倒しただろう」
『ハヅキには溢れるばかりの魔力があるんだから』
レベルアップしてさらに言動が流ちょうになっている。獲物の横取りで悔しさを覚えつつ自分のスキルと技能を確認する。“人間”よりかは魔力が高いといえ、もともと“獣人”は物理タイプ。種族特有のスキル、技能を見ても現段階では魔法攻撃はなかった。
『仕方ないから、ちょっとそれ貸して』
剣を指さすハヅキを見てヘキナは剣を渡す。元の姿なら持つのに苦労するぐらい大きいが、大き目のサイズになった今のハヅキは問題なく剣を持つ。
剣を貰ったハヅキはなんやら詠唱し始めた。
『はい完了。魔力付与したよ』
「ハヅキ、どこでそんな方法覚えた!!?」
常に一緒に行動していて情報量は同じはず。しかし、明らかにこの世界の知識がある程度備わっている。前世の記憶は失っていると聞いていたが。
『ハヅキの転生は記憶喪失のようなものだから。記憶喪失でもしっかり日常生活できるでしょ。そんな感じ』
神の転生は人間の転生と違い、転生後の種族変更はないらしい。人間の場合は六道のどれかに転生するので種族は変わることが多いのだが、神は六道に組み込まれていない。よって前世の記憶とかが残りやすいそう。
話をしていると【イエロースライムLv.3】が出現した。
「よし、今回はいける」
『ご主人、頑張って!』
イエロースライムはなぜかピョンピョン跳ねてる。攻撃してくるのだろうか?軽く剣を振ってみる。
ひゅっっ!!パァァン!!
魔力の効果で斬撃がイエロースライムにあたる。スライムは弾き飛びヘキナのレベルアップを知らせるアナウンスが鳴った。
「やった!!」
『やったね!ご主人!!』
ハヅキは自分のことのように喜ぶ。ヘキナもスライムを倒すだけでここまで嬉しくなるとは思わなかった。しかし喜びもつかの間、背後から大量な何かが移動しているような不吉な物音が聞こえる。それがだんだん近づいてくるようで視線を向けた。
「あれは群れ!!なんで急に??!」
モンスターを連なって襲ってくるトレイン状態がゲーム序盤にできるのは珍しい。モンスターが軽く30体ぐらいが押し寄せてくる。個体自体は【ノーマルゴブリン】と表示されていて、レベルは1~5ぐらい。数匹レベルの高いのがいて10ほど。全くゲーム中のレベルとしては高くないが、無理強いはよくない。
「ハヅキ逃げるぞ。あの量はヤバい」
ヘキナが呼びかけるが、ハヅキに反応はない。何やらブツブツ呟いている。
「おいハヅキ」
『“ロット・キラー”』
ハヅキがスキル名のようなものを言うと地面から大量に棘のようなものが伸びてきて、ゴブリンたちに突き刺さる。断末魔を上げながら串刺しになっていくゴブリンたちを見ると言うならば阿鼻叫喚だった。動けるゴブリンたちがいなくなると攻撃はやんだ。またもハヅキのレベルアップのアナウンスが入る。
『広範囲の魔術も使える!ご主人まだ色々あるから期待しといてね』
ハヅキ0歳。今は高校生の女の子ぐらいの見た目にこそなっているが、先ほどゴブリンを大量虐殺した顔に見えない。でもこれがヤンデレなのかもしれない。
とりあえずヘキナは思った。
「保護いらないだろもう...」
9アルさんメモ13【獣人】
六道に含まれる転生先の一つ、“畜生道”の住人。モデルとなる動物によって見た目が大きく違います。
9アルさんメモ14【畜生道】
六道の“地獄”よりは辛くない場所。本能のままに生きてたり、無知だったりするとここに転生させられます。動物のように本能のままに生きていくという刑罰を受けます。
9アルさんメモ15【9アルさんメモ】
ここでは実際の用語の説明を話したり、作中の設定を書き込んでいます。役に立つかはわかりません。100%、私の趣味です。とある鬼神の漫画が大好きです。
あと、今までの投稿及びその後は、書き方に慣れるまでかなり改稿してしまうと思うので、ご迷惑おかけします。何とかして読みやすくまとめるので...