チェックイン 2
「ハヅキ。ちょっとこっちに」
村から出てすぐ近くにあった木の陰にヘキナは手招きでハヅキを呼ぶ。若干、?っという顔をしていた。
「変装しよう。ムハンさんはハヅキが最上位種の神様ということがばれていたからな」
このゲームのレベル上限はまだ分からないが、始まりの村で正体がばれているのでかなり念を入れ方がよさそうだ。
「とりあえずレベルが高くなるほどステータスは見にくくなるんだったよな?」
キメラたちに教わった事を振り返りながら準備を整える。一応ヘキナは自分のステータスを確認してみた。
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名前:ヘキナ
性別:男
種族:人間
タイプ:赤
階級:等活
年齢:23
職業:なし
所属:なし
称号:神憑
Lv:1
HP:23/23
MP:2/2
WP:25/25
SP:45/45
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経験値、能力値、あとスキルなどは別表示になっていた。
「HPはヒットポイント、MPはマジックポイントだろうが。なんだこれ?WP?」
ハヅキに聞いてもよく分からないとのこと。チュートリアルは攻撃の仕方などそんなことが多くてこのようなことには触れられていない。プレイすれば分かってくると思うがとりあえず後にしておく。
「お、ハヅキのステータスも見れるのか」
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名前:ハヅキ
性別:不定
種族:神人☆5“月読命”
タイプ:白
階級:八百万
年齢:0
職業:なし
所属:なし
称号:憑神
Lv:1
HP:141/141
MP:171/171
WP:131/131
SP:153/153
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「あれれ???」
キメラにステータス上昇を聞いていたので唖然する。種族のせいであろうがMPに関しては80倍も高い。予想だにしないハヅキとのステータス差に戸惑いを隠せない。ドーピングではないよな。
「ハヅキ、お前いつ生まれ変わったんだよ?」
『ご主人様に会った時?かな?』
自分でもよくわかっていないという口ぶりに話す。気付いた時にはあの公園だったらしい。それより気になる点が一つ。
「今、ご主人様って呼ばなかったか?」
『お姉ちゃんがこれからはご主人様と呼びなさいだって。ご主人様の裁判が終わるまで暇だったから教えてもらった』
「キメラだな」
そういえば今頃ハヅキは流ちょうにしゃべっていることが多いことに気付く。もともとのスペックが高いのか、念話でイメージをそのまま飛ばせるからなのか、たぶん両方だろう。
「敬ってくれるのはいいけど、ご主人様は受け入れる側のレベル高いな」
ハヅキみたいな小さな娘にご主人様と呼ばせることに慣れてしまった時の自分が怖い。できるだけ他の呼びを模索するが単純に呼び捨てぐらいしか思いつかない...
「そういえば奴らには名前がばれているのか...」
襲撃のあの男たち。リーダー格の男は“解析”を使っていただろう。名前はばれている筈。偽名を考えるべきなのか...
『偽名はその時でいいでしょ。ねぇご主人様』
「わかったから。ほかの呼び方を考えてくれ」
とりあえず、“ご主人様”から“ご主人”に妥協させて保留にすることにした。
チュートリアル通りにステータス表示の名前はいつでも変えられるらしい。称号も未選択ができるようだ。ヘキナについては問題ない。問題はハヅキの変装だが。
「キメラが変装できると言っていたけど、ステータスはどうなるんだ?」
『大丈夫。問題ない』
隠密に長ける神は“解析”の妨害スキルをもとから持っているらしく、高熟練でないとステータスの確認ができないそう。それどころか熟練度の低いものにはダミーを見せるようにすることができるんだとか。
『スキルだから、ご主人もいつか付けられるハズだよ。でもねSP消費するからいつもは“憑依”のほうがいいかもね』
「これか」
スキル一覧を眺めてヘキナはそう言った。“神憑”固有スキル“憑依”。契約を交わした神を自身に宿らせることが出来る。使用目的はステータス及びスキルの上昇、または“憑神”休息らしい。
「SPを消費しても休息の効果で自然に回復するのか。“憑依”便利だな」
『ねぇやろうよご主人』
口に出すかイメージでスキルは発動するらしい。ハヅキの希望通り“憑依”を発動する。ハヅキが光となってそのままヘキナの体に取り込まれた。
『うわー!ご主人の中、すっごーい!!すごい気持ちいい』
「その会話がアウトに聞こえるのは俺だけじゃないよな...」
快適な環境が整っているようだ。流石は神を休息させるスキルである。意外と広いらしくハヅキはキャッキャ騒いでいた。
『あれ、なんだこれ?よいしょ』
「うが...!!?」
突如襲われた脱力と意識の遠のきに頭痛を覚える。急に感じた身体の異常に咄嗟に“憑依”を解除した。ステータスを確認するとHPとWPが10ほど減少している。頭に過ったスキルの特性。これもスキルの一つの使い道なのだろう。
「はぁはぁ、ハヅキお前HPとか吸収したろ」
『ご主人のおいしかったよ』
反応に困るがスルーし、体力を吸収しないように注意する。ハヅキは体力が満タンになっているせいで今のはヘキナの体力がただ消えていっただけだった。
「こんなことしていて、序盤で死亡とかだったら笑えないな」
『その時はその時だよぉ』
“憑依”より“変化”を使うことにした。減ったSPなど後で“憑依”で回復できる。とりあえず安心できるぐらいレベルが上がるまでは“憑依”は遠慮したかった。はっきり言って怖い。
試しに種族を“獣人”にし、名前とかも変えてステータスを見ることにした。
「“転生”」
あの後、能力の性質のもとに名前を付けた。イメージでも“転生”は使えるが、SPの関係で名前の読み上げによる発動にしていた。
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名前:yana
性別:男
種族:獣人ウルフ
タイプ:赤
階級:等活
年齢:23
職業:なし
所属:なし
称号:なし
Lv:1
HP:22/32
MP:13/13
WP:5/15
SP:19/39
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「うわ、スキル使うと結構精神が疲れるな」
ステータスは体の消耗具合が一目で分かるものだ。さっきまであったSPが半分ぐらいになって精神が疲れるのは普通の症状である。逆に筋力は強化されて体は軽い。
「でもこれならばれないよな」
今のところ顔は自動生成。ヘキナ自身の顔にすることができない。でも変装にはちょうど良かった。“獣人”はイメージで人モードと獣モードに切り替えることが出来る。しかし、しっぽと耳はそのままだ。
「本当に装備は自動修正するんだなあ」
ヘキナは装備の便利さに感嘆する。装備は体格に合わせて自動で調節してくれるらしい。例えば“巨人族”が装備を着れば装備はビックサイズに勝手になってくれる。“獣人”の場合は尻尾を出すための穴がすでに開いていた。“人間”にはない感覚で尻尾を振ってみる。ふわふわした尻尾は右左と動いた。ハヅキがツンツン触ってくる。
ハヅキは高校生ぐらいの女性に“変化”した。顔の綺麗さを残したまま大きくなった感じだ。若干面影が残ってなくもない。目元のマークもそのままだった。
「変装完了。よし行くか」
木の陰から顔を出し、教えられた道の方へ足を向ける。いつモンスターが出現してもいいように警戒するのが普通だが、ハヅキのステータスでは負ける気がしなかった。
9アルさんメモ10【転生】
生前の罪に合わせて亡者は転生先を決められます。何回も言うように六道の天人道、人間道、修羅道、畜生道、餓鬼道、地獄道のどれかです。作中ではそれぞれに特徴の種族が繁栄しています。
9アルさんメモ11【転生】
転生は閻魔大王とその部下が執り行うのですが、転生の際に種族が変わることがありますよね(メモ10より)。その種族を変える能力をヘキナは貰ったんです!!!(正確には身体の基本ベースを転生しなおす能力)
9アルさんメモ12【階級:等活】
地獄は罪の軽い順から“等活”“黒縄”“衆合”“叫喚”“大叫喚”“焦熱”“大焦熱”“阿鼻”とランクが決まっています。“阿鼻地獄”はめっちゃ罪が重くて、“等活地獄”は罪は軽めです(どっちみち切り刻まれるけど)。