チェックイン 4
ハヅキに付与してもらった剣でモンスターを倒していく。ハヅキはさっきの群れでレベルが大きく上がり、援助などに回っていた。ヘキナもレベルは上がってきたが、HPに不安を覚えてきていた。
『ご主人?“憑依”で体力吸えたんだったら、逆にご主人が体力貰うことができるんじゃない?』
「ナイスアイディア、ハヅキ」
早速“憑依”を発動させる。ハヅキは光になってヘキナの中に取り込まれた。
広い白い空間の真ん中に一つ赤い物体が置いてある。さっきは触れると体力を吸収したようなので今度は魔力を流し込むような要領でやってみようとハヅキは思った。
『えっとこれをこう?』
「はガっ」
尋常じゃない脱力感でまた“憑依”を解除した。やはりまだ危ないだろう。ステータスを見て驚愕する。
「あっぶな...はぁはぁ、HP残り3だぞ」
『ご主人、もっかいやったらイケる』
「やめろ!失敗したら死ぬ」
息切れしながら抵抗する。HP3だと攻撃を一回受けると死ぬレベルだ。カラカサまでの道のりはまだありそうなので、先に進むのは危険だと判断する。残念ながら回復アイテムとかモンスターたちのドロップアイテムは使い果たしている。
「とりあえず、ムハンさんの弁当食ったら回復するだろ」
『たぶんねぇ』
ということで昼食タイムとなった。こっちの世界にに来てから最初の食事。弁当の中身は肉とご飯、野菜が少しなスタミナ弁当だった。二人分貰ったので、それぞれで食べる。
『うまうま...』
「肉食ったら攻撃力に補正がついた。やっぱそれぽいなぁ」
全快とはいかないがある程度まで回復した。弁当一個だけではこのぐらいなのだろう。やはり回復薬が欲しい。
「どこかに宝箱とかないか」
『ご主人、呼び名マスターとかどう?』
「今、それどころじゃないだろ...」
『ほらほら、マスター』
現在ハヅキはレベル17、ヘキナはレベル9で明らかに余裕感が違う。今のところモンスターの平均はレベル10といったところだ。
「なかなかハードな出来だな。村に何回か戻るのが普通なんだろうな」
実は初心者プレイヤーはもっと慎重に道の入り口ぐらいでいくらかレベルを上げてるか同レベルの何人か協力して都市に向かうことが多い。ただハヅキの強さからさっさと奥地に来てしまったヘキナの体力の消耗は激しいものだった。
実際のゲームならともかく、動いているのは自分。日頃の運動不足でダメージを食らうのは当然だ。
『ハヅキは無理だけど“エルフ”なら治癒できるよ』
引っ付いてくるハヅキはかなり余裕そうだった。治癒魔法はもってないということで、ヘキナ自身が治癒を使う必要がある。ただし、回復はHPのみであるが仕方ない。
「はぁ...“転生”」
SPが残り2になり倒れそうになる。ずっとHPばかり気にしていたが、他の値も0になったら死ぬのかもしれない。気を付けよう。
“転生”でなったのはエルフ。願望の元、やはり女性だ。大王がエルフは霊界では珍しいと言っていたので、しょっちゅう使えるわけでない。少々目立つのであまり変装に向かないのだ。
「あった“治癒”」
MPを消費してHPを回復させる魔法技能。さっそく自分に“治癒”をかけた。体力は回復したが、精神の疲れはピークとなった。
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名前:yana
性別:女
種族:エルフ
タイプ:赤
階級:等活
年齢:23
職業:なし
所属:なし
称号:なし
Lv:9
HP:38/43
MP:38/58
WP:28/38
SP:2/38
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「現実がゲームになるってこんなにも辛いんだな」
SPが残っていないので“人間”に戻すことが出来ない。できるだけこの能力は隠した方が良さそうなので村には戻れない。今はカラカサを目指すのみだった。
『マスター、辛い?』
「徹夜明けみたいだよ」
そんな辛さを知らずにモンスターは幾匹か出現した。エルフは筋力がないらしく剣が重く持てない。しかたなくハヅキに掃討してもらった。ドロップした〖SP回復薬〗でSPを回復する。
『エルフは弓矢が武器だからね』
最初エルフで召喚されたら弓矢を貰えたのだろう。このスキルはやはり上級者向けだ。なかなかうれしい。
魔法攻撃を使って何匹かモンスターを倒す。倒しているうちに モンスターのレベルが落ちていくのに気付いた。
「奥地から抜けたか。もうそろそろで目的地だな」
クエストにはボスがいるものだが、これは村と都市との移動。よくカットされていることが多い。ボスなど出てこないのだろう。
魔法攻撃でMPもなくなってくる頃に前方に大きな壁が見えた。帝国都市。昔学校で習ったような単語が頭をよぎる。
周りにあった木は少なくなり、草原になる。そこからは一望できた。
「本当にファンタジー世界だな」
壁に開いている扉の前には荷馬車の往来が多い。それを引いているのは馬だったり、角が生えていたり、馬じゃなかったりしていた。
クエストクリア。ハヅキの変装をさらに整え、壁の横にある入り口につながる大きな道へと向かっていった。
9アルさんメモ16【六道2】
六道は6つの世界を指すと言いました。具体的には“天人道”“人間道”“修羅道”“畜生道”“餓鬼道”“地獄道”の六つです。作中では“道→界”になってます。
9アルさんメモ17【修羅界】
暴力、復讐してるとここに転生します。ここではずっと争い続けることが運命づけられ、それが刑罰となります。作中では巨人族が住民です。
9アルさんメモ18【餓鬼界】
強欲な人だとここに転生します。ここでは物が食べれない、飲めない刑罰を受けます。私の中では地獄の次に辛いところだと思っています。作中では“小人”が住人です。