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58 VSイビルウッド

 森林地帯には、まるで隠したかのように洞窟が存在した。

 木や葉で、入り口が上手く隠されてたし、イビルウッドがやったんだろうね。

 この洞窟の奥に……居た。



「マアアァァァ!!」



 うるせー、雄叫び上げるなよ。

 今、私に気づいて雄叫びを上げたのが、化け物大樹イビルウッドだ。

 こいつは、自分が木であることを利用して、森林地帯の全ての木に、自分の根を這わせているのだ。

 そこから魔力を送り込み、森林地帯の全てを把握していたようだ。

 さらに、根から魔力を送り込んでるから、森林地帯の木からも攻撃できると。

 まったく、面倒なことをしやがってからに。


 さて、どうしようか?

 下手に倒すと森林地帯に影響が出そうだ。

 弱点は火だろうけど、それこそ森林地帯が火事になりかねない。

 あのマスター、これを知ってて私にやらせたんじゃないだろうな?

 私がどういう行動に出るのかを見定めようって魂胆なんだろう。

 モンスターが生息していても、森は森だ。

 他の動植物だって暮らしてる。

 平然と環境破壊できるような人間じゃないんだよ私は。

 人間じゃなくて魔族だけどな。


 私はイビルウッドの攻撃を避けながら、打開策を考えている。

 要は森林地帯への魔力を断てば、こいつを倒しても問題ないってわけだが、どう断つかが問題だね。

 ……根っこを全部切り落とすか?

 でも、時間がかかるしな。


 イビルウッドは、私が軽々と攻撃を避けていることに怒ったのか、根による攻撃だけでなく魔法も使い始めた。

 避けられないことはないけど、さすがに面倒になってきたな。

 魔眼の魔力可視化を発動。


 ……なるほど、足根の間に一本だけ、魔力を送ってる細い根があるね。

 あそこから、森林全体に魔力を送ってるわけか。

 つまり、あの根を切ってしまえば片が付くってことだよね。

 それじゃあ、図書館で覚えた新しい魔法を披露してやろうじゃないか。



「暗闇魔法、影潜み」



 私は自分の影に潜り込んだ。

 影潜みはその名の通り、影に潜り込む魔法だ。


 光以外の攻撃を無効化できるけど、効果時間が数秒なこと、そして移動できないことネックだ。

 そこで、もう一つの魔法を発動させる。



「暗闇魔法、影走り」



 影に潜みながら移動ができる魔法だ。

 多分だけどこれは、影潜みと影走り、二つで一つの魔法なんだと思うんだよね。

 効果時間が数秒なのも変わらないから、さっさとイビルウッドの背後へ移動。

 背後をとったところで、影潜みの効果が切れた。

 イビルウッドは、私のことを探してるようだ。

 突然相手が消えたわけだし、当然の反応だよね。

 さて、さっさと終わらせてしまおう。



「緑風魔法、鎌風」



 私は魔法で作り出した鎌を、魔力を送り出してる根に向けて放った。

 鎌は回転しながら、足根もろとも魔力を送り出してる根を切断した。



「マアアァァァ!?」



 イビルウッドは悲鳴を上げながら倒れた。

 もはや倒木と化したイビルウッドの上に乗る。



「マアアァァァ! マアアァァァ!」



 いちいち叫びやがって五月蠅いな。

 私はイビルウッドの枝を一本折り、それを袋に入れた。

 イビルウッドの枝が、討伐の証だからだ。

 そして、暴れるイビルウッドを起こし、元の場所に戻してやった。



「マ……?」



 そして治療魔法をかけて、根を治してやる。

 私は、こいつを討伐するつもりはない。

 この木が、イビルウッドになってしまった原因を見つけたからだ。


 イビルウッドは、濃い魔素が原因で凶暴化してしまったわけだ。

 そしてその魔素は……こいつの腹の中にある、セラメリアの宝石から溢れ出しているものだ。

 どういった経緯で、こいつの腹の中に宝石が入ったかは分からない。

 もしかしたら、セラメリアの宝石のすぐ近くで芽吹いちゃったのかもしれないね。

 で、宝石を取り込んですくすくと成長した結果が、イビルウッドなんだと思う。


 セラメリアの宝石が入ってることに間違いはないが、暴れてる原因は別かもしれない。

 もしかしたら、モンスターの習性として暴れてるのかもしれないけど、セラメリアのせいだという可能性も捨てきれない。

 そしてセラメリアが原因なら、私はこいつを助けたい。

 だから、イビルウッドよ。

 私はこれから、あんたの体内に入るよ。

 私は、あんたを助けたいから。


 私の思いが通じたのか、イビルウッドは大きく口を開けた。

 ここから入れってことだね?

 少し苦しいかもしれないけど、我慢してくれ。


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